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山頂フィニッシュの前日とは打って変わって、第5ステージに待ち構えた4つの難関峠は総合争いを引き起こさなかった。また40人近いエスケープを許した翌日だけあって、この日は警戒するプロトンに幾多のアタックが潰された。ようやく逃げ集団ができたのは、実にスタートから100km近く走ってから。しかも逃げられたのはたったの2人。
3つ目の2級峠コラダ・デ・カルモナへの登りで飛び出すチャンスをつかんだのは、2001年ブエルタで山岳ジャージを着たことのあるオランダ人カールステン・クローン(チームCSC)と、ゴール地のあるカンタブリア県生まれの“リトゥ”ことアンヘル・ゴメス(サウニエルドゥバル)。地元ファンの応援をいっぱいに受けて精一杯逃げるゴメスだったが、1級峠プエルト・デ・ラ・パロンベラへの登りが始まるとマイペース走行に切り替えた。さらに後方プロトンからチームリーダーのホセアンヘル・ゴメスマルチャンテが、前日の遅れ——総合を争うサストレ、メンショフから1分17秒——を取り戻そうと飛び出してきたときも、すでにアシストする元気は残っていなかったようだ。
一方、クローンを捕らえようとプロトン内で加速を始めたのは、皮肉にも母国のチーム・ラボバンク。しかも2005年まで所属していたオレンジ集団から逃れようと、クローンはひとり必死にペダルをこぐ。ただし1級峠を無事に乗り越えると、ゴールスプリントが見えてきたか、ランプレやコフィディス、フランセーズデ ジューらが追走に協力し始める。山頂で2分近くあったタイム差は瞬く間に縮まり、ゴールまで残り4キロ、スピードの出る広い自動車専用道路でクローンは波に飲まれていった。
ところで追走するスプリンターチームの中に、ミルラムカラーがほとんど見られい。エリック・ツァベルとマーティン・ミュラー以外の7人は、どうやら1級峠で大きく遅れてしまったようだ。リーダーのアレッサンドロ・ペタッキは12分5秒遅れでゴール。またペタッキと並んで、スプリント勝負が期待されていたトム・ボーネン(クイックステップ)に至っては、17分33秒遅れの最下位集団グルペットで終了している。
そしてゴール前200mの最終ストレートで熾烈なスプリント争いを繰り広げたのは、ブエルタスタートからおなじみの面々。第1・2ステージ最終盤にアタックを仕掛け、第3ステージで5位に入っているフィリップ・ジルベール(フランセーズデ ジュー)が、最初にスプリントを切った。続いたのは第2ステージ2位、第3ステージ優勝の現世界チャンピオン、パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)。さらに今ブエルタ最初のマイヨ・オロ、ダニエーレ・ベンナーティ(ランプレ)が加速を見せ、締めくくったのが前日までマイヨ・オロを着ていたオスカル・フレイレ(ラボバンク)だ。第1ステージ2位、第2ステージ優勝、第3ステージ2位と、ここまで可能な限り全てのスプリントに絡んだ世界選手権3勝の強者が、今大会2勝目をあげた。また調子の上がらないペタッキに代わって、ツァベルが第1ステージ8位、第2ステージ4位に続く区間5位に滑り込んでいる。
やはりカンタブリア出身のフレイレは、おそろいのジャージを着た赤ちゃんと表彰台にあがった。おそらく2006年ツール・ド・フランス中に生まれた(そして出産立会いのためにチームが特別にヘリコプターを用意したという噂の)マルコス君だろう。直後に開催される世界選手権に出場するため、フレイレは「最後まで走らないかもしれない」と示唆しているが、マイヨ・オロ、ポイント賞、そして地元での区間優勝と、すでにフレイレのブエルタは大成功だ。
また総合首位のウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ)は、先頭集団でゴールし、危なげなくマイヨ・オロを守っている。
オスカル・フレイレ(ラボバンク) ステージ優勝、ポイント賞獲得
今日という日は僕にとっては大きな一日となった。この優勝は僕の地元での勝利でもあるし、二重の意味で嬉しいね。シュツットガルトの世界選手権に向けて、とても自信になるよ。今回のコースは良く親しんだルートだし、地形やコース展開を把握していた分、走りやすかったね。それに家族や地元の声援もあったし、凄くモチベーション高かく臨めたよ。パオロに雪辱!?はははっ、まぁ、最後のスプリントは2日前の時よりも大分疲れていたんだけど、勝ててよかったね。それとチームの皆も良くやっていたと思う。彼らのお陰で逃げを潰すことが出来たからね。今日はとにかく厳しいレースだったし、足にくるコースだった。風も強かったしね。最後まで辿り着くのに本当に苦しんだけど、出来る限りのベストを尽くして走ることが出来たと思う。
ウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ) マイヨ・オロ
イヨ・オロを着てのレースは本当に感動だった。でも、今日の第5ステージは落ち着いて走ることが出来た。厳しいコースだったし、盛んにアタックが行われたけど、ケースデパーニュの仲間達がアタックを逃がさないように完璧にプロトンをコントロールしてくれたし、最後のスプリントでも、彼らの助けによって上手く切り抜けることが出来た。今日1日マイヨ・オロを守ることが出来た。明日もこの調子でこのジャージを死守出来たらいいね 。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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