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翌日は今大会最初の個人タイムトライアル。カルロス・サストレ(チーム CSC)は「2007年ブエルタで何か成し遂げたいなら、絶対に失敗してはならないステージだ」と語り、サムエル・サンチェス(エウスカルテル)は「これで優勝争いが出揃う。調子が悪ければ、一気に争いから脱落だ」と気を引き締める。また現在総合首位のウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ)は「簡単ではないことはわかってる。でもマイヨ・オロを背負って、高いモチベーションでスタートを切るよ!」と宣言する。非常に大切な勝負を前に、この日、本命たちは静かに1日を過ごした。
だからこそプロトンはスタート直後にラウール・ガルシーア(レラックス・ガム)のアタックをあっさり見送り、その後ヘスス・ロセンド(アンダルシア・カハスール)の飛び出しを許したのだろう。この日唯一の峠を登り切るまで、この2人は自由に逃げ続けた。ただし96km地点の山頂を越えると、クイックステップ、ランプレ、ミルラムというお馴染みスプリンターチームが追走の仕事を開始。ゴールまでわずか8kmを残して、無念にも先頭2人は吸収されてしまった。
ガルシーアが第2ステージに続いて大逃げを打ったように、第2ステージと同様にゴール前2km地点で集団落車が発生。先頭でミルラムやT-モバイルが形成しつつあったトレインから抜け出そうと、数人の選手による特攻アタックが相次いだ、ちょうどそんなときだった。結局、集団はいくつにも千切れ千切れになり、先頭でスプリントに参加できたのは約10選手だけ。ゴール地サラゴサでは過去3度区間優勝しているアレッサンドロ・ペタッキ(ミルラム)も、後ろへ取り残されてしまった。今大会3勝と絶好調ながら、この日151位で終えたオスカル・フレイレ(ラボバンク)に関しては、順位を落とした理由がはっきりしている。「ゴール地が危険で、落車の可能性が多いことを知っていた。だからあらかじめプロトンの後方にいると決めていた」と、あえてリスクを犯しに行かなかったそうだ。
10選手による小さなスプリントは、それでも実力者たちがそろっていた。第3ステージ勝者パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)、前日2位コルド・フェルナンデス(エウスカルテル)、前日5位アンドレ・コルフ(T-モバイル)、さらに今ステージでもやはりゴール前で飛び出しを試みたフィリップ・ジルベール(フランセーズデジュー)!真ん中からは、第1・3ステージでもトップ5入りしているアラン・デーヴィス(ディスカバリーチャンネル)が、ゴールラインへ突進してきた。そして今年のミラノ〜サンレモ2位というこのオーストラリア選手は、勝ちを確信して思わず腕を天に突き上げたが……、実際に僅差で勝利をつかんだのは、左側フェンスぎりぎりから上がってきたエリック・ツァベル(ミルラム)だった。
37歳の大ベテランにとって、昨大会最終日に続くブエルタ通算8勝目。過去のドーピング告白のせいで、地元ドイツでは世界選手権への代表選出に対して賛否両論が巻き起こっているが、ツァベルはこの勝利で少なくとも自らの実力は再証明して見せた。もちろん本人は、「世界選手権に向けて調子を上げていくためにこの大会に出ているんだ」と、あくまでも出場へ向けて前向き。ちなみに2位選手が腕を挙げてしまう早とちりは、2004年ミラノ〜サンレモでツァベル自身も犯してしまったミス。そして同年に5勝目がかかっていたツァベルを追い抜いたのはフレイレ、今年デーヴィスがサンレモで屈したのもフレイレだったりする。
オスカル・フレイレ(ラボバンク)
ポイント賞
昨日のログローニョでの勝利を経て、今日のサラゴサのゴールはこれまで以上にスプリンター達が勝負を賭けて来ると思っていた。それだけに厳しいラストになると思っていたし、落車の危険が大いにあると予想していた。だから今日はプロトンの後方に控えて、ある程度のトラブルがあっても避けられるようにスペースを保っていたんだ。そして今日は危険を冒さないと決め、最後のスプリント勝負に加わらないことにしたんだ。でも、今回のブエルタでまだまだ勝利のチャンスはあると思うし、その時は狙って行くよ。
ウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ)
マイヨ・オロ
マイヨ・オロを守り抜くことは難しい。でも一方でそれがとても強いモチベーションにもなっている。毎日毎日を意欲十分で臨むことが出来ている。僕は個人タイム・トライアルのスペシャリストじゃないけど、出来る限りベストを尽くすよ。今回のタイム・トライアルは52.2kmととても長い。こんなのはジロ・デ・イタリア以来だね。僕の直ぐ後ろに就けている選手達は皆タイム・トライアルが強い選手ばかり。特にデニス・メンショフとカデル・エヴァンスは手強いね 。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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