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太陽と風にさらされて、見渡す限り土色の荒野をたったひとりで突き進む選手たち。52.2kmの孤独な戦いは、わずか大会開幕1週間で、予想以上に大きな選択を行った。特に地元スペインにとっては、失望の1日。翌日からの山頂ゴール2連戦で、果たして地元勢の挽回が見られるのだろうか。
ステージ優勝は、かなり早い段階で決した。全181人中81番目にスタートを切ったドイツTT王者ベアト・グラブシュ(T-モバイル)が、ハンガリーTT王者ラスロ・ボドロギ(クレディ・アグリコル)の出したタイムを上回って暫定首位に立つ。その後2時間に渡って2人のスペシャリストの記録が破られることはなく、結局、グラブシュが区間優勝、ボドロギが区間2位を勝ち取った。去年まで6年間フォナックで走り、今季から地元チームに合流したグラブシュにとっては、32歳にして初めてつかんだグランツール区間勝利である。
一方でマイヨ・オロを巡る戦いは、最後まで目の離せない均衡状態が続いた。戦いの主人公となったのは、前ステージ終了時点で総合首位から1分06秒差の同タイムで並んでいた、ステイン・デヴォルデル(ディスカバリーチャンネル)とデニス・メンショフ(ラボバンク)。まずは2005年ブエルタ勝者が、最初の計測地点12kmでグラブシュに続く2位のタイムを叩き出し、総合争いのライバルたちに圧倒的な優位を誇った。ところがデヴォルデルは、ここからの加速が凄まじかった。
続く第2計測地点27.7km。ちょうど先を行くカルロス・サストレ(チームCSC)を追い越したばかりのメンショフに、デヴォルデルはまったくの同タイムで並んだ。その後しばらく、2分割されたTV画面には増えたり減ったりする両者のタイム差が映し出され、激しいシーソーゲームが繰り広げられた。ただしベルギーチャンピオンが第3計測地点でメンショフを13秒差に突き放すと、そのままスピードに乗り続けてゴールラインでは30秒もの大差をつけることに成功。デヴォルデルは区間でも3位に入り、総合首位の証マイヨ・オロも勝ち取った。
今季限りで消滅するディスカバリーチャンネルから、来季クイックステップ入りすることが決まっているデヴォルデルの、大会前の目標は「総合3位以内」だったそうだ。つまり昨季総合11位でブエルタを終え、今季はツール・ド・スイス総合3位に入っている実力者は、すでに自らの夢に一歩近づいたことになる。
ところで総合優勝候補に挙げられていた地元スペイン勢たちは、軒並みタイムを大幅に失った。前日までデヴォルデルと同じく総合1分06秒差だったサストレは、3分15秒差の総合7位に後退。オフ中に風洞実験でTTトレーニングを積んできたというサムエル・サンチェス(エウスカルテル)は、前日の落車の影響なのか思うような走りができなかった。ただしタイム差は開いたが、総合順位は17位から11位へとアップ。数日前からウイルス性疾患に苦しんでいるオスカル・ペレイロ(ケースデパーニュ)やホセアンヘル・ゴメスマルチャンテ(サウニエルドゥバル)は、首位から5分以上離されてしまった。
また本来TT得意なはずのカデル・エヴァンス(プレディクトール)も、ツールの疲労がたたったのか、ステージ11位(総合4位)と思い通りの成績は出せなかった。第4ステージの山岳大逃げのおかげで総合上位につけていたコフィディスの2人組、マキシム・モンフォールとシルヴァン・シャヴァネルはTTでも健闘を見せ、それぞれ総合5位と6位につけている。マイヨ・オロを着用して走ったウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ)は、ステージ18位で総合3位に順位を下げた。
ステイン・デヴォルデル(ディスカバリー・チャンネル)
マイヨ・オロ獲得
今日は本当にこのマイヨ・オロを着ることが出来て満足しているよ。しかもジャージを渡してくれたのが僕が子供の頃からのアイドルだったミゲル・インドゥラインだっただけに、さらに嬉しかったね。このジャージを守れるよう、最大の努力をして行きたいし、今ブエルタのチャンピオンを目指して頑張るつもりだよ。今大会は序盤はあまり調子が良くなかったんだけど、コバドンガの日ぐらいから調子が戻って来たんだ。ライバル!?もちろんメンショフ、サストレ、マルチェンテ等だね。カデル・エヴァンス!?彼はツールでフルの力を出したと思うから、他の選手よりも疲労が響くんじゃないかな。
カルロス・サストレ(チームCSC)
まず始めに言っておきたいのは、タイム・トライアルの前に色々計算して、何秒差なら勝てるだとか、負けるだとかを言うのは僕は好きじゃないんだ。そんなやりとりでエネルギーを消耗したくないからね。とにかく自分の力を全て出すことだけに集中したい。そして今日もそうしたつもりだ。でも正直、メンショフとこれ程まで差が付くとは思っていなかった。彼は25km手前の早い段階で僕を追い抜いて行った。その後にきっちりと付いて行けば良かったのにと言うかもしれないけど、体力的に既にきつかったし、正直あれはショッキングだった。気持ちの部分で付き切れなかった。ステイン・デヴォルデル!?特に何も無いよ。コバドンガでは一緒にゴールした選手だ。とにかく明日以降の山岳が重要だ。
オスカル・ペレイロ(ケースデパーニュ)
朝8時には今日は走れないと思ったんだ。熱もあったし、体がだるかったからね。ドクターから薬をもらって、午前中はずっと寝ていたんだ。12時に起きて、少しずつ状態が良くなっていたから走ることに決めた。結果、5分離されてしまったね。ずっと体が本調子ではなかったけど、今日は峠を越えた感じだし、少しずつ良くなってきているので、最後のマドリーまで走り続けるつもりだよ。あと2、3日もすれば本調子に戻れると思う。明日からの山越えは厳しい戦いになるだろうけど、チームメートの為にも踏ん張って行きたい。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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