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初日から山岳ジャージを守ってきたセラフィン・マルティネス(カルピン・ガリシア)は、前日の落車のせいで体調に不安あり。またポイント賞首位のオスカル・フレイレ(ラボバンク)は、ステージ3勝を手土産に、世界選手権へ向けて大会を去った。2日連続の山頂フィニッシュで総合争いが盛り上がる中、各賞ジャージの行方も少々気になった今ステージ。
この日の朝、ポイント賞の暫定首位に立ったのはパオロ・ベッティーニ(クイックステップ)。“アルカンシェル”ジャージが目印の世界チャンピオン兼五輪金メダリストは、夕方には自分のものとなる濃いピンク色のジャージに相応しい走りを見せたかったのだろうか。スタート直後から攻撃的な走りを見せると、20km過ぎに出来上がったエスケープ集団に滑り込んだ。しかも2番目の中間スプリントを首位通過し、4ポイントを上乗せ。最終的にはグルペットで終わったが、アピールは十分出来た。
エスケープ集団は、このベッティーニを含む18選手で構成された。中でも注目されたのは、ホセアンヘル・ゴメスマルチャンテ(サウニエルドゥバル)の2日連続の挑戦。前日は最終峠でプロトンに吸収されて1日で6分39秒も失ったが、この日は再びマドリードへの表彰台の可能性をつかむために飛び出していた。また初日に落車の犠牲となり、以来、調子がふるわなかったダミアーノ・クネゴ(ランプレ)の姿も。こんな実力者揃いのエスケープは、プロトンに最大で5分のリードを奪う。
ただし後方では、マイヨ・オロのデニス・メンショフ率いるラボバンクが、徹底的にタイム差をコントロールし続ける。さらに最終ゴール地となるアンドラ公国へ入ると、山頂フィニッシュに向けて、いつも通りイニーゴ・クエスタ(チームCSC)がプロトン前方で恐ろしいテンポを強い始めた。結局、アルカリススキー場へと続く最終峠が始まると、あっけなくゴメスマルチャンテとクネゴの試みは終了。士気を挫かれた両者が10分以上遅れてしまった一方で、先頭集団のリュドヴィク・テュルパン(アージェードゥゼール)とユルゲン・ヴァンホーレン(ディスカバリーチャンネル)だけはゴール前6kmまで粘り続けた。ただしこの2人も、プロトンからひとり飛び出したマヌエル・ベルトラン(リクイガス)に追い越されると、そのまま総合争いの強豪たちにステージ優勝争いを譲ったのだった。
大会前から優勝候補として名前が挙がり、前日の段階で総合12位の“トリキ”ことベルトランのアタックで、前ステージ勝者のレオナルド・ピエポリ(サウニエルドゥバル)が真っ先に動き始めた。プロトン屈指のヒルクライマーは数度に渡って急加速をかけ、集団をふるいにかけつつ、ベルトランに追いつくという芸当をあっさりとやってのける。そして先頭に残ったのは7人。全員が前ステージ終了時点で総合13位以下、しかも総合首位から4位までが揃うという文字通りの強豪集団だ。
と、残り1km近くで、前日総合14位のイゴール・アントン(エウスカルテル)が不意にこの7人を追い抜くシーンも見られたが、結局、ステージ優勝は上記7人によるゴール勝負に持ち込まれた。ここでスプリントを仕掛けたのが、顔色一つ変えずに難峠を登ってきたメンショフ。前日はマイヨ・オロを獲得しながら区間2位に終わったが、この日は最終数メートルに全力を込めてステージをつかみ取った。総合上位選手たちが同時ゴールしたため、総合順位には大きな変化は見られなかった。
ステージ優勝の他に、前日に続いてマイヨ・オロと複合賞の表彰式に臨んだメンショフは、さらにシルバーの山岳賞ジャージ授与式にも登場した。ちなみにポイント賞さえもわずか5ポイント差の2位で、全賞制覇まであと一歩のところだった!……ということは、前ステージをピエポリに譲らず(?)に制してさえいれば、ベッティーニと同ポイントで並ぶはずだったわけだ。そしてこの件に関して、地元スペイン陣営から色々と批判の声が上がっている。今ステージでも何度もアタックしたカルロス・サストレ(CSC)は、今日もピエポリがメンショフに協力した、「恥ずべき行為だ」と糾弾した。またベルトランも「ボクも協力体制の被害者のひとり。ボクが勝てたかもしれないのに」と疑問の声を上げている。
デニス・メンショフ(ラボバンク) ステージ優勝、マイヨ・オロ、コンビネーション賞、山岳賞
向かい風がとても強くて厳しいレースだった。アタックしたかったけど、一杯一杯だった。別に抑えていたわけじゃない。それに、最後の登りでの他の選手のアタックがとても強烈だったし、喰らい付いていくので精一杯だった。とにかくこの風の中で他の選手を引き離そうと思ってもとても難しい話だった。サストレの発言!?それは正しくない。僕はレオ(レオナルド・ピエポリ)と何の話もしていないからね。レースの展開上の結果、そうなったに過ぎない。レオは最後の強烈なスパートを仕掛けたけど、この風だから最後まで行き切れなかったのだと思う。僕としても今日は昨日と同様、レオに喰らい付いて行って、その間に他の選手を離せて行ければ良いと思っていた。自分自身の調子は良いし、素晴らしい仲間に囲まれて、ここまで良い感じで来ている。でも、ブエルタはブエルタ。長く厳しいレースだけに、まだまだこの先何があるか分からない。他の選手達も最後まで戦ってくるだろう。僕に幸運があることを祈っているよ。
カルロス・サストレ(チーム CSC) ステージ5位、総合4位
ピエポリはメンショフの手助けをしているようだった。実に有り得ない行動だ。総合首位のリーダーを他のチームの選手が助けるなんてことはあってはならない。メンショフはずっと僕をマークしていた。こっちとしてはこのステージを勝ちたかったし、何度もアタックにトライしたんだけど、引き離すことが出来なかった。最後のスプリントの場面では、もうそれまでのアタックで疲労していたから、行けなかった。チームの皆は本当に良くやってくれたと思う。明日の休養日までに良いポジションに就くという目標は達成出来たと思う。マドリードまではまだ沢山ステージがある。
ウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ) ステージ6位、総合2位
まだ何も決まっていない。サラゴサのタイムトライアルでマイヨ・オロを失ってからも、僕はずっとまだまだチャンスは残されていると信じて戦っている。まだゴールまでは長い。僕は最後の1kmまで走り抜くつもりだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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