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第10ステージにはポイント賞ジャージのオスカル・フレイレ(ラボバンク)が大会から離れたが、今ステージスタート前には山岳賞首位のレオナルド・ピエポリ(サウニエルドゥバル)がイタリアへ去った。前夜に長男のヤニス君を出産したばかりの夫人の体調が悪いため、急遽地元へ帰ることに決めたというのだ。ちなみに今ブエルタ中には、マルコ・ヴェーロ(ミルラム)もパパになっている。子供の名前はアレッサンドロ。そう、チームリーダーと同じ名前!
そのリーダー、アレッサンドロ・ペタッキ(ミルラム)は、前ステージ優勝で本来の調子を取り戻したばかり。山岳がひとつも登場しないフラットコースで、再びスプリント勝利を狙っていた。だからこそ、今ステージもエスケープを逃すまいと、一日中ミルラムはプロトンコントロールにいそしんだのだ。
逃げを打った選手は5人。連日ジャージアピールに余念がないアンダルシア・カハスールからホセルイス・サンチェス、第6ステージに続く逃げとなるユリー・クリフトソフ(アージェードゥゼール)、セバスティアン・ミナール(コフィディス)。さらには今ブエルタでは終盤にアタックしてみたり、ゴール前で飛び出してみたり、はたまたゴールスプリントに参加してみたりと、積極的に攻撃を続けるフィリップ・ジルベール(フランセーズデ ジュー)と、数々のクラシックを勝ち取ってきたダヴィデ・レベッリン(ゲロルシュタイナー)。ジルベールとレベッリンという2人の実力者の存在が、最後まで逃げれるかもしれない……という淡い期待を先頭集団に与えたかどうかは不明だが、後続ミルラムは間違いなく危機感を持って追走を行ったはずだ。結局プロトンが許したタイム差は、わずか3分45秒。ついにゴール前5km地点で、この日のエスケープに終止符が打たれた。
その後はゴール前200mまで、ミルラムとT-モバイルのトレイン形成合戦とポジション争いの繰り返し。そして200mを残してエリック・ツァベル(ミルラム)が先を退くと、あとはペタッキがゴールラインまで先頭で走り抜けた。次代のイタリア最速スプリンターを目論むダニエーレ・ベンナーティ(ランプレ)の追い上げを決して許すことなく、完全復調を告げるパーフェクトな勝利。ブエルタで19回目の、そして1996年にプロ入りしてから138回目の輝かしい勝利を手につかんだ。
ところでゴール都市エジンが位置するのは、ドン・キホーテと風車で有名なラ・マンチャ地方。大会前から今ステージは「風に注意」と言われていたが、警告通り、ゴール前で風の影響が大きく現れた。先頭集団を吸収してもなおミルラムが加速を続け、さらにT-モバイルが猛攻をかけると、たまらず後方の数選手がプロトンから千切れる。さらに厳しい横風に吹き付けられ、集団に戻ることが出来なくなってしまった選手さえいた。ペタッキから2分20秒遅れてゴールにたどり着いた小集団には、本来ゴールスプリントに参加するはずの、パオロ・ベッティーニ(クイックステップ)とトム・ボーネン(クイックステップ)の姿も見られた。
アレッサンドロ・ペタッキ(チーム ミルラム) ステージ優勝
2連勝を果たすことが出来た。この勝利はチームの皆に捧げたいね。逃げの集団には重要な選手もいたし、コントロールしていく必要があったにもかかわらず、今日のレースで逃げを許すまいと働いていたのは殆ど僕らのチームだけだったからね。非常に長い時間に渡った逃げだったし、それだけに厳しい戦いだった。チームは本当に良くやってくれた。それにもう一つ付け加えるとするならば、僕はエリック・ツァベルというパートナーを持つことが出来て本当に幸せだと思う。彼が常に最後のスプリントで重要な仕事をしてくれるお陰で、僕は勝つことが出来ている。彼の母国、シュツットガルトでの世界選手権での彼の活躍を願っている。例えライバルがイタリア人になろうともね。
レオナルド・ピエポリ(サウニエルドゥバル・プロディール)
出産したばかりの妻の状態が良くないんだ。命には別状無いらしいがね。とにかくリタイアを決めた。夫や父親がすべきことをやるってことさ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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