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大雨の翌日の、非常に蒸し暑い1日。207kmという今ブエルタ最長ステージは、かつてマカロニ・ウエスタンの撮影地となった岩肌がむき出しの荒野から、見渡す限りオリーブの木々が広がる丘陵地帯への大移動。しかもステージ中盤からはアンダルシア地方へと突入するため、この日、最初にアタックをかけたのは予想通り地元コンチネンタルチーム、アンダルシア・カハスールの選手だ。
0km地点のアタックはすぐにプロトンの加速で潰されたが、おかげで熾烈なアタック合戦が巻き起こった。顔ぶれの微妙に違う十数人の集団が逃げを試みること数回、そのたびに後方集団が加速する。厳しいスピードアップは、最初の3級峠でプロトンを散り散りに分断したことも。そしてこんなレースに疲弊したのか、今ステージだけで6選手が途中リタイア(さらに2選手が不出走)。大会序盤に9日間に渡って山岳ジャージを着ていたセラフィン・マルティネス(カリピン・ガリシア)も、数日前の落車の影響か、山岳賞2位でレースを降りた。大会開始からちょうど2週間で、31選手がブエルタを去っていった。
ステージも3分の1を過ぎた頃、11人が決定的なエスケープに乗った。逃げた選手の中で、総合で最も上位につけるのは29分58秒差40位のクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(チーム CSC)。つまり11人の中には表彰台争いを脅かす選手は存在しない。さらに今日の出来次第で、山岳賞・ポイント賞争いで上位に食い込んでくる選手もいないため、ようやくプロトンは快く大逃げを許した。
ゴール前20km地点で、後方プロトンとのタイム差は8分以上。逃げ切りが確実となった先頭集団は、ステージ最終峠の登りでついに区間優勝へ向けての戦いを開始した。ホセビセンテ・ガルシアアコスタ(ケースデパーニュ)、ステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)、フアンマヌエル・ガラーテ(クイックステップ)といった強豪のアタックに混じって、ジェイソン・マッカート二ー(ディスカバリーチャンネル)も登りで何度も仕掛ける。そしてツアー・オブ・ジョージアでキング・オブ・マウンテンに過去2回輝いているマッカートニーが、渾身の単独逃走を打ったのがゴール前10km。
今季末に解体するディスカバリーチャンネルに所属し、未だ来期のチームが決まっていないマッカートニーは、区間優勝だけでなく、自身の将来をもかけて最後の10kmを走り続けた。途中でダビド・ガルシア(カリピン・ガリシア)がひとり追走を始めたが、最終盤の軽い登りもダンシングスタイルで踏み続けたマッカートニーを、もはや止めることなど出来ない。そしてゴールライン直前、一旦後ろを振り返って勝利を確信すると、ホノルル仕込みの陽気な笑顔で両腕ガッツポーズ。この日までほぼ無名だった34歳大ベテランは、一躍、プロチーム監督たちの注目選手リストに名前を連ねることが出来たに違いない。
マッカートニーが歓喜のステージ優勝を果たし、取り残された10選手がゴールラインを越えるころ、後方プロトンはようやく残り7kmの横断幕の下を通過中。最終的に、総合首位デニス・メンショフ(ラボバンク)を含む大集団は10分5秒遅れでゴール地に到着した。12位争いをアラン・デーヴィスが制し、スプリントポイントをわずか4p勝ち取る一方で、前日激しい区間4位争いを繰り広げたポイント賞2位と3位のダニエーレ・ベンナーティ(ランプレ)とアレッサンドロ・ペタッキ(ミルラム)は、10分26秒遅れでゆっくりゴールしている。
ジェイソン・マッカート二ー(ディスカバリー・チャンネル)
ステージ優勝
この勝利は僕にとってとても重要だ。まだまだこれからも走り続ける為のモチベーションになる。今日の戦略としては、ビジャカリージョまで如何に攻めていくかということだった。ここだという最適なタイミングで飛び出して行こうと決めていた。逃げの集団と一緒に最後のスプリント勝負になることだけは避けたかった。僕の持ち味はタイム・トライアル、スプリントじゃないからね。この勝利は僕自身のヨーロッパでの初勝利となる。来シーズンはディスカバリーが無くなってしまうわけだけど、まだどのチームからもオファーが来ていない状態なんだ。この勝利が新しいチームを見つける為のきっかけになることを願っているよ。僕はまだロードレースを続けたいし、僕の情熱だからね。
マヌエル・ベルトラン(リクイガス)
総合8位
今日走っている途中、上位に就けているある選手の顔をちらりと見たんだけど、決して順調って表情じゃなかったな。誰かって!?実名を出すのは止めて置くよ。ちらっと見ただけだし、たまたまかもしれないからな。だけどメンショフには参ったな。あいつは表情一つ変えないで、口を真一文字にして走っていた。周りがぜいぜい言っている時にだ。あいつは強い、本当に強いな。やつの顔は見ない方が良いかもしれねぇ。だってあんな全くへこたれていない表情を見たら、こっちがへこたれてしまうからな。今日のコースは特別厳しいってわけじゃなかったけど、高低差が計3,000メートル以上もあったわけだから、ちょっとした超級山岳コース並みだ。明日になって響いてくるかもな。グラナダまでの道のりではまた多くのアタックが見られるだろう。だけどまだまだステージは残っている。優勝候補達による真のアタックはもうちょっと先だろうな。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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