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1年前のグラナダで、バルベルデがマイヨ・オロを失った。厳しい1級峠の登りと、山頂からゴールまで続く長い下りのスピードコースで、ヴィノクロフがライバルを完全に振り切ったのだ。もちろん去年ヴィノクロフと一緒にゴールしたサムエル・サンチェス(エウスカルテル)は、その事件をしっかりと記憶にとどめていた。そして「あんなことが自分にも出来ると分かっていたんだ」と、今日の勝者は振り返る。
アンダルシアの燃えるような太陽の下、巻き起こったのは何も山岳・総合争いだけではない。難関山岳ステージにもかかわらず、スプリンターたちのポイント取得合戦も繰り広げられた。最初の中間ポイントではポイント賞8位のコルド・フェルナンデス(エウスカルテル)に続いて、同3位アレッサンドロ・ペタッキ(ミルラム)、同2位ダニエーレ・ベンナーティ(ランプレ)がスプリント。ペタッキとベンナーティのポイントが90で並んだ。さらにスタートから50km前後で出来上がった20人のエスケープ集団に、なんとベンナーティが滑り込む。もちろん第2中間ポイントを首位通過し、4ポイント差で再びペタッキを突き放した。
そのベンナーティを含む4人のランプレ選手が、先頭集団で存在をアピールする。そして最後の1級モナチル峠の登りで、チームリーダーのダミアーノ・クネゴがアタックを打った。第1ステージの落車でここまで思うような走りが見せられなかった2004年ジロチャンピオンは、王者の誇りをかけて勝利を目指す。ただしエウスカルテルが強烈なリズムで率いる後続プロトンから、マヌエル・ベルトラン(リクイガス)が飛び出してきた。ゴール地からそれほど遠くないハエン生まれの“トリキ”は、軽やかなダンシングスタイルで未だ好調とは程遠いクネゴを山頂直前で捕らえると、そのまま単独でゴールへの下りへと突入した。
どうしても優勝が欲しいクネゴがベルトランを必死に追いかける中、先頭走者にゴール前7kmで追いついてきたのが前述のサンチェスだ。1級峠の登りでは、マイヨ・オロのデニス・メンショフ(ラボバンク)やカルロス・サストレ(チームCSC)のアタックに何度も置いていかれそうになりながらも、イゴール・アントン(エウスカルテル)のアシストに何度も救われた。しかしエスケープの追走に1日中尽くしてくれたチームのために、先頭集団に潜り込んでくれたアイマル・スベルディアのために、そして登りのために力を温存し、約束通り働いてくれたアントンのために、「ボクにはやり遂げる責任があったんだ」とゴール後に語った通り、危険ギリギリの下りをサンチェスは披露する。クネゴを追い越したとき、時速は90kmを超えていたと言う。
マイヨ・オロ集団から逃げ切ろうとパーフェクトに協力してきたベルトランとサンチェスの、協力体制が崩れたのはゴール前200m。爆発的な加速を見せたサンチェスが、登りで全力を使ったベルトランをあっという間に置き去りにすると、ゆりかごジェスチャーでゴールラインに飛び込んだ。またマイヨ・オロ集団から最後に飛び出してきた2選手が、24秒差でフィニッシュ。4位のアントンは、まるで自分が勝利したかのようにガッツポーズを天に突き上げた。
奮闘したクネゴは6位ゴール。前日までの総合首位から5位選手は、41秒遅れで全員同時にステージを終えた。ただしサンチェスが総合5位にアップしたため、前日5位のエセキエル・モスケーラ(カルピン・ガリシア)が6位に順位を落とした。ちなみに首位メンショフは、総合優勝に向けて今後最も大切なステージは、第19ステージだと述べている。
サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)
ステージ優勝、総合5位
今日の勝利は素晴らしい働きをしたチームメイトに捧げたいね。彼等は今日、スタートからモナチル峠の入り口が始まるところまで本当にくたくたになりながらも良くやってくれた。この勝利は他の仲間8人のお陰で達成出来た勝利だ。最後の峠は登りが終わる前にアタックを仕掛けたんだけど、登り切ってからも気を緩めたくなかった。去年のバルベルデとヴィノクロフの対決からも分かるとおり、そこからの下り坂もしっかりとペダルさばきが要求されるし、力も必要になる。十分足にくるスポットだと認識していたからね。
最後マヌエル・ベルトランと並走していた時に、キリスト像のお守りのペンダントが鎖が切れてハンドルに張り付いていたんだ。その時初めて壊れたことに気が付いたよ。でもそれを無くしたくはなかった。4年前に義兄弟が僕にプレゼントしてくれたやつで、キューバのタイガーシャークの牙が付いていてとても気に入っていたし、もらってから色々と幸運をもたらしてくれていたからね。
チームとしては、今ブエルタはビーゴでのスタート地点からとにかく一勝を目標にやって来た。ツール・ド・フランスでもチームは同じくらいのコンディションにあったんだけど、一つも勝てなかったからね。そういう意味ではこの勝利のお陰で最後の一週間を落ち着いて走ることが出来るね。総合優勝!?はっはっは、前の4人は皆元気そうだからね。まぁ、自分達としては今の位置を死守しつつ、チャンスがあればその上を目指して行きたいね。
マヌエル・ベルトラン(リクイガス)
ステージ2位、総合7位
ぶっちゃけ今日のステージは狙っていた。その為に出来るだけの努力はしたんだけどな。残されたステージの中で今日が残り少ない勝つチャンスだっただけに残念だ。サムエル・サンチェスとの一騎打ちになった時には勝てねえなと思ったぜ。だって俺はスプリント力がねえからな。やつは未来の息子に勝利を捧げたかったんだろう。もっとも、俺も嫁さんに勝ちをプレゼントしたかったんだけどな。
デニス・メンショフ(ラボバンク)
マイヨ・オロ
今回のブエルタが過去の大会よりもコースの厳しさが少し緩和されていることは分かっていた。それだけに最初の一週間が一番重要だと思っていた。そしてチームはそこに向けて出来る限りの準備をして戦った。二週目は毎日ライバル達の様子を見ながら走った。そういう意味ではサストレが一番危険な選手だった。だって、エフィムキンもエヴァンスも現状維持に満足しているようだったからね。だけどマドリードに到着するまではブエルタは終わらない。まだ一週間残っている。まだ誰も何も決まっていない。残されたステージの中では第19ステージのアバントス峠が一番の正念場だと思っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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