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サイクル ロードレース コラム 2007年9月22日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2007】第19ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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前夜に短い雷雨がスタート地を襲ったせいか、朝から少し肌寒い。しかもブエルタ最後の直接対決の地、1級アバントス峠の午後の天気予報は雨。ただでさえ難しい山の戦いが、斜度と寒さと、そしてライバルに苛まされる恐ろしい戦いになることは明らか。総合3位のカルロス・サストレ擁するチーム CSCは選手全員がスタート直前までチームバスに閉じこもり、ようやく姿を現した選手たちは少しピリピリしたオーラを発していた。またマイヨ・オロのデニス・メンショフ(ラボバンク)もメディアやファンの喧騒を避け、締め切り直前に出走サインを済ませると、脇目も振らずにスタートラインへと直行する。

ただしアビラの美しい市壁の前から滑り出したステージ前半は、いつも通り、脇役たちのアタック合戦で彩られた。そしてこの日乗り越えるべき6峠の、最初のひとつを通過した後に、17人の大きなエスケープグループが出来上がる。中でもチーム CSCが2人、総合4位サムエル・サンチェスが所属するエウスカルテルが2人、前日総合5位に順位を落としたウラディミール・エフィムキンが所属するケースデパーニュが2人。後々の展開を考えてのことか、リーダーの総合順位をひとつでも上げたいと目論むチームが先頭集団に選手を送り込んだのだろうか。

いきなり斜度15%強の“壁”が待ち受けるアバントス峠。峠上部は斜度はそれほど高くないものの、道幅は非常に細く、舗装状態はとにかく悪い。縁石などは存在せず、一歩間違えば崖下転落の危険もはらんでいる。こんな難関峠を、この日のプロトンは2度通過しなければならない。しかも折からの悪天候で、先頭集団、さらに遅れてプロトンが第1回目の登りを開始したとき、峠は厚い濃霧に覆われていた。

急勾配でばらけた先頭集団から、アレッサンドロ・ヴァノッティ(リクイガス)がひとり飛び出しをかけた。慌ててダビ・ロペスガルシア(ケースデパーニュ)とイニャキ・イサーシ(エウスカルテル)が追いかけたその背後では、プロトン内でいよいよ総合争いが始まっていた。いつも通りにイニーゴ・クエスタ(チーム CSC)が強烈なリズムを畳み掛けると、いつも通り有力者グループが出来上がる。ここには前日ステージ優勝したルイス・ペレス・ロドリゲス(アンダルシア)を除く、総合首位メンショフから総合14位ステファン・グベール(アージェードゥゼール)までの13人が漏れなく滑り込んだ(総合15位は前で逃げているロペスガルシア)。そしてヴァノッティが単独で第1回目の山頂を征服した約2分半後に、この集団は峠を越える。

下りの途中で、いよいよ雨粒が落ちてきた。アバントス山頂付近の気温が急激に下がる中、第2回目の登りで総合争い集団は大きく分断した。メンショフ、サンチェス、サストレが順に急激な加速を行い、ついにレース先頭に立つと、総合15位以内でついてこれたのは9位イゴール・アントン(エウスカルテル)、13位ダニエル・モレーノ(リラックス・ガム)、そしてロペスガルシアのみ。一方、総合2位エヴァンスは、集団から引き離されていく。

最後はメンショフ、サンチェス、サストレにモレーノを加えた4選手だけが、霧の晴れ始めた山頂にトップで姿を現した。そこでサンチェスがゴール前で一気に加速を見せ、グラナダゴールに続く今大会ステージ2勝目。総合優勝を目指してブエルタに乗り込んだ29歳は、総合は前日と変わらず4位のままだが、表彰台までのタイムは59秒差から9秒差へと大きく縮めることに成功した。

また3秒遅れでゴールしたサストレは、1分25秒遅れたエヴァンスからついに2位の座を奪取。サンチェスとスプリントを競ったモレーノも、総合12位へ順位をひとつ上げた。もちろんメンショフは全く危なげなく総合、山岳賞、複合賞の3つのジャージを守り切った。またポイントでもダニエーレ・ベンナーティ(ランプレ)までわずか3ポイント差の2位にアップ。そして明日、20kmの個人タイムトライアルで大きなアクシデントがなければ、メンショフはおそらくマドリードまで3賞を持ち帰ることができるだろう。気になる天気予報は、曇り、時々……、雷雨だ。


サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)
ステージ優勝、総合4位

今日の勝利にはとても満足しているよ。もっとも、最初に考えていた目標とは違ったけどね。本当はイゴール・アントンと共に勝ちたかったんだ。だけどそれは出来なかった。イゴールが僅かに遅れてしまったからね。最後の数キロにはダニエル・モレーノという早いランナーもいたからね。理想を追い駆けている場合ではなかった。8年前、20歳そこそこのアマチュア時代に勝ったことのあるこのアバントスで今度はエウスカルテルのプロの一員として勝つことが出来たのは感慨深いね。表彰台!?ここまで来たからには狙うしかないでしょ。3位のカデル・エヴァンスとは9秒差だし、明日のタイム・トライアルでの勝負だね。僕らはまだ表彰台を経験したことが無い。ここまで来たからには僕らの目標はベスト3に入ることだ。今回はその絶好のチャンスだ。


カルロス・サストレ(チーム CSC)
ステージ4位、総合2位

今回のブエルタは僕らにとっても、スペインのロードレース界においても、素晴らしいブエルタになったんじゃないかな。僕らは最後まで死力を尽くして走った。明日は今のポジションを死守する為に全力で走るだけだね。今回は僕も、そしてチームの仲間も、自分達に重要な意味をもたらしてくれるこの自転車というスポーツの為に“何か”が出来たんじゃないかと思っている。そういう意味では僕らはとても満足しているし、幸せに感じている。今日に関して言えば、第一の目標はカデル・エヴァンスだった。アバントス峠はそれほどキツイものではなかったけど、雨だから良く滑ったね。とにかくエヴァンスを逆転することを第一に考えた。だから最後の峠に入ったらどんどん行こうと思っていた。もちろん、メンショフも突き放せれば良かったんだけど、彼は今大会ナンバーワンのランナーだからね。やはりきっちり付いて来たよね。僕達はこの自転車ロードレースというスポーツを愛し、戦ってきた。この偉大なスポーツの為に、良い道しるべとなれればと思っている。ドーピング云々という最近の暗い話題を払拭したかった。とにかく皆でこのスポーツを守って行くことが重要だ。


デニス・メンショフ(ラボバンク)
ステージ3位、マイヨ・オロ

これで95%の確立でブエルタは僕のものになりつつあるね。今日のレースも決して悪くなかった。カルロス・サストレとサムエル・サンチェスがどんどん仕掛けていたので、ひたすらそれに付いて行くことを考えた。そうすることによって彼らの志気を損ねたかどうかは分からないけど、とにかく現在の好調な状態を利用して、仕事をまっとうすることを心掛けた。ここまでの結果は、ライバルよりも他のステージで僕が一番強かった賜物だと思う。今ブエルタの勝負は前半戦だったし、そこをチームの仲間と共に上手く攻めることが出来た。ここまで本当に大きな問題も無く来ることが出来た。この3週間の走りには自分としてとても満足している。今大会の最大のライバルはカルロス・サストレだった。山岳での彼の走りは本当に素晴らしかった。その彼とは3分以上の差があるし、明日のタイム・トライアルは短いので、全力で走り切れば行けるはずだ。もっとも、決して気を緩めるつもりは無いけどね。日曜日をどんな状態で迎えることが出来るか楽しみだ。2005年に優勝した時とは全然違うものになるだろうね。表彰台ではチームの皆と喜びを分かち合いたい。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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