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朝に雨粒が落ちたせいか、湿度が高く、少し気だるい空気が漂ったシチリア島パレルモ。カルチョファンならおなじみ“ローザ・ネーロ(ピンクと黒=サッカーチームパレルモのチームカラー)”の町から、2008年“コルサ・ローザ(ピンク色のコース)”ジロ・デ・イタリアはスタートを切った。
大会5日前に急遽アスタナの参加が認められ、2007年の3大ツール勝者(ディルーカ、コンタドール、メンチョフ)が勢ぞろいした今年のジロ。世界中の自転車ファンが熾烈で豪華な総合優勝争いを期待するが、初日チームタイムトライアルで最も注目を集めたのはパレルモに巨大ファンクラブ網を持つヴィスコンティ(クイックステップ)と……、スリップストリーム。なにしろこのプロコンチネンタルチームは、アメリカTT王者ザブリスキー、イギリスTT王者ミラー、カナダTT王者ヘシュダル、元スウェーデンTT王者バクステッド、さらに4月開催シルキュイ・ド・ラ・サルト個人TTで優勝を果たしたヴァンデヴェルデを揃える恐るべきタイムトライアルスペシャリスト集団なのだ。また今ジロメンバーのザブリスキーとヴァンデヴェルデが参加した4月末のツアー・オブ・ジョージアでは、チームタイムトライアルを制している。
チームバス周囲に詰め掛けた観客に背中を向けてスリップストリームがウォーミングアップを続けたのは、“優勝候補”のプレッシャーをはねのけて集中するためだったのだろうか(一般的にタイムトライアル前後は、選手たちはチームバスに背中を向けてバイクを漕ぐ)。しかも今ジロ参加22チーム中で唯一、氷水に漬けられたベストを着用してのウォーミングアップ。こんなところにチームタイムトライアル勝利への意欲が見て取れる。
そして周囲の予想通り、チームの目標通り、7番目にスタートを切ったスリップストリームがトップタイムでゴールラインを通過した。その後15チームがタイム更新を狙ったが、結局、勝つ気満々のスペシャリスト集団を打ち負かすチームは現れなかった。チームにとっては創設後初のグランツール区間優勝。2位は6秒差でチームCSC、3位は7秒差でハイロード。昨ジロで初日にマリア・ローザを獲得したガスパロット率いるバルロワールドは、第1中間計測地点でスリップストリームを1秒上回ったが、最終的に14秒遅れの5位で終わった。
マリア・ローザを着用して走った昨大会王者ディルーカ(LPR)は、「思い通りのタイムが出せた。スリップストリームが強いことは理解していたし、我々の目標は27分以内でゴールすることだった。目標達成だ」と、6位ゴールに満足そうな表情を見せる。またクレーデンとライプハイマーというTT巧者を抱えるアスタナも注目されたが、LPRとは1秒差の7位終了。ディルーカと並ぶ総合優勝本命に上げられるシモーニ(ディクイジョヴァンニ)は、ディルーカに対して23秒失った。
表彰式では台の上でスリップストリームの選手・監督が喜びを爆発させ、台の下では大勢のチームスタッフが声を上げての大騒ぎ。髭のザブリスキーがおどけたパフォーマンスを見せ、ヴァンデヴェルデがマリア・ローザを身にまとってスプマンテシャワーを撒き散らした。
●クリスティアン・ヴァンデヴェルデ
マリア・ローザ
この勝利は素晴らしい偉業だし、ボクのキャリアのハイライトだ。孫の世代にまで語り継ぎたい出来事だね。ボクらチームは今ステージを勝つというただひとつの目的のために今大会に乗り込んだ。こうして優勝できたことは夢のようだよ。だってスリップストリームは小さなチームなんだから。勝利を手に入れることが出来て、ボクらは天にでも昇った気分さ。
この勝利は、新しい自転車界にとって素晴らしい兆候だと思う。CSCとハイロードが2位と3位に付け、さらにアスタナが続いた。これらのチームは今スポーツで最も進んだ内部アンチドーピングプログラムを誇っている。つまりクリーンなチームたちが今や勝利を収めているということさ。一点の疑いもなく、今日はクリーンなチームが勝ちを得たんだ。
●デーヴィッド・ミラー
ボク個人の目標は、チームを1位に導くことだった。チーム全体の勝利だよ。使命は達成した。この日のために丸一週間ハードな練習を積んできたから、手につかむことが出来て本当に素敵だね。この勝利は我々チームにとってとてつもなく大きいよ。今日のヴァンデヴェルデは強かった。最後の5kmは、彼についていくことが出来なかった。彼はアメリカ人だし、これはアメリカチームだ。ヴァンデヴェルデはマリア・ローザにふさわしい人物だよ。
●ジョヴァンニ・ヴィスコンティ
自分の普段の能力よりも20%プラスの力を出した。そして明日のアグリジェントは、ボクのサポーターで埋め尽くされたスタジアムに突入するようなもの。勝利のために全てを尽くす。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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