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大会が開幕してちょうど1週間。13回目のジロを戦う大ベテランのシモーニ(ディクイジョバンニ)さえ「かつてこれほどハードなジロを戦ったことはないよ」と告白するほど難しい2008年ジロは、大会最初の山頂フィニッシュを迎えた。
この日はディルーカ(LPR ブレイクス)の地元アブルッツォを通過した。「マリア・ローザ獲りにはまだ早いけど、地元でステージを勝ちたい」と昨季王者は大会前に語っていたが、この第7ステージに大きくチェックを入れていたのはリッコ(サウニエルドゥバル)も同じ。しかも前日ステージ後には「ディルーカに挑戦状を叩きつけるつもり!」と、大胆発言も飛び出していたらしい。そして宣言通り、ステージ最終盤にこの2人は激戦を繰り広げることになる。
ただしステージ序盤は、猛アタック合戦と39人による大量エスケープで彩られた。さらにこの大集団からまず3人が飛び出すと、先頭は4人→6人→4人→7人と入れ替わり立ち代り人数が目まぐるしく変化し続ける。130km過ぎに登場した1級峠への登りで、先頭はセッラ、バリアーニ(いずれもCSF グループ ナヴィガーレ)、ボシージョ(LPR ブレイクス)、キリエンカ(ティンコフ)、カルデナス(バルロワールド)のコンチネンタルプロチーム5選手に絞り込まれた。さらにゴール前22kmから2級ピエトランシエリへの登坂が始まると、バリアーニがたまらず後退。この時点で後続プロトンと4分以上の差がついており、3日連続の大逃げ勝利が見えてきた。
先頭4人の中で最初に仕掛けたのはセッラ。この日ここまで3つの峠を全て先頭通過して確実にポイントを重ねてきた山岳ジャージ保持者は、ステージ最後の峠——つまりゴール——も先頭で駆け抜けて、2004年以来となる区間勝利を手に入れるつもりだった。ところが残り7km地点で思わぬパンク発生。しかもボシージョが渾身のアタックをかけたのとほぼ同時だった。第5ステージで大逃げを打ちながら同じようにメカトラブルが発生し、区間優勝の夢を逃したミラー(スリップストリーム)はその場で自転車を投げ捨てたが、セッラはゴールラインを超えてから号泣した。「山岳賞は守ったけど、でもボクは全然幸せじゃないよ……」と。
そして7kmを先頭で走りきったボシージョが、こちらは2004年以来人生2度目のジロ出場で初めてのステージ勝利をつかみとった。LPRチームにとっても初めてのグランツール区間勝利。絶対的チームリーダーよりも先に勝利を手に入れてしまったせいなのか、ゴールラインでのボシージョは控えめな笑顔を見せただけだったが、表彰式では派手にスプマンテを撒き散らしてくれた。また今ジロに参戦している6つのプロコンチネンタルチームのうち、すでに4チームが区間を制したことになる。
区間優勝争いの背後では、メイン集団内で総合本命たちが動き始めた。やはりゴール前22kmの登りで集団スピードが急激に上がり、フォトグラファーを乗せたオートバイがいっせいに集団を追い越したそのとき、タイミングを狙っていたようにするするっとピエポリ(サウニエルドゥバル)が前線に踊り出た。そして昨ジロで山頂ゴール1勝+山頂ゴールアシスト成功2回を成し遂げているヒルクライマーを追いかけて、怒涛の勢いで飛び出していったのはディルーカ。もちろん昨ジロ王者から決して目を離さなかったリッコも、まるで分身のようにディルーカの背後についていく。
ついに“キラー”ディルーカ vs. “コブラ”リッコの対決勃発!というそのときに、周囲を驚かせたのはコンタドール(アスタナ)も飛び出したこと。しかも一時はディルーカさえも苦しめられたピエポリの高速リズムにも、ゴール前4kmでディルーカが加速をかけたときにも、まるで冷静な表情でついていったのだ。「直前まで海岸でバカンスを取っていたと言っていたのに!」とリッコが驚くほどの快調な走り。ディルーカは「コンタドールは大会10日後には準備万端になっているはずさ」と常々口にしていたが、2007年ツール王者は7日目にしてすでに恐るべきレベルまで回復してしまったようだ。残念ながらゴール前スプリントには参加できず、ディルーカとリッコに6秒引き離されてしまったけれど。
結局ディルーカとリッコは同タイムでゴール。ディルーカは総合4位、リッコは総合7位、コンタドールは総合9位とそれぞれに総合順位をランクアップし、後方で何も出来なかった他の優勝候補たちから51秒のリードを奪うことに成功した。またマリア・ローザのヴィスコンティ(クイックステップ)は最終盤の登りで苦しめられたが、世界王者ベッティーニが懸命にアシストを務めたおかげで、決して大崩れすることなく総合首位の座を守りきった。次に総合順位・タイムが大きく動くのは、第10ステージ・個人タイムトライアルとなりそうだ。
●ガブリエーレ・ボシージョ(LPR ブレイクス)
ステージ優勝
ピエポロトッリとボクがエスケープに乗り、その後ディルーカがアタックを仕掛けることはスタート前から決まっていた。でも逃げが予想よりも上手くいったから、ボクがステージ優勝を取りにいくようチームから指示を受けたんだ。ボク自身はディルーカが今日のステージを勝つと思っていたんだけど。でもチームにとって最大の目標は、ディルーカとともにジロの総合優勝を果たすこと。セッラのパンクは、ゴール後まで知らなかった。
●ダニーロ・ディルーカ(LPR ブレイクス)
チームにとっては素晴らしいステージになった。ボシージョがステージ優勝を果たし、ボクは大多数のライバルたちからタイムを奪うことに成功した。ただ今日奪ったリードは、ジロを勝ち取るのには十分なタイムではない。でも大会序盤にしては悪くない出来だよ。ライバルたちは少し心配になってきたんじゃないかな。ただ今日のボクは、ピエポリのリズムに少し苦しめられたけどね。
●ジルベルト・シモーニ(ディクイジョヴァンニ)
ピエポリがアタックしたとき、リッコも飛び出すつもりだと誰もがすぐに理解したよ。ボクの周りには怒号が飛び交ったけど、実際のアクションはほとんど見られなかった。かつてこんなにハードなジロを戦ったことはない。普通は最初の10日間は比較的静かでのんびり走れるものなんだけど、今年は非常に厳しいね。非常に緊張感溢れるジロだ。何かとんでもないサプライズが起こってもおかしくないよ。特にピエポリには要注意……。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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