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サイクル ロードレース コラム 2008年5月25日

【ジロ・デ・イタリア2008】第14ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2008年ジロ最大のみどころ、山岳3連戦に突入する朝。スタート地は意外とのんびり静かな雰囲気に包まれた。スリップストリームが揃ってチョッパークルーザー自転車に乗ってサイン台にあらわれたり、会場に訪れたクネゴやラスムッセンが(元)チームメイトを励ましたり。陽気は汗ばむほどだった。

そしてスタートからわずか13kmで、ベッティーニ(クイックステップ)、フォイクト(チームCSC)、セッラ(CSFグループ)、ロドリゲス(ケースデパーニュ)、ノチェンティーニ(アージェードゥゼール)を筆頭とする13選手が逃げ出すと、プロトンはもうしばらく静かに過ごすことに決めたようだ。エスケープ集団に10分近く先を走らせ、有力選手たちは後方でじっと体力温存に努めた。

ゴール前50km、第1級Manghen峠への登りで、先頭集団から緑色のジャージが飛び出した。今ステージまで山岳賞マリア・ヴェルデ争いでトップに立ってきたセッラが、さらにポイントを獲得するために積極策に出たのだ。しかし山頂をトップ通過して10ポイントを加算したあとも、セッラの逃げる脚は衰えない。メイン集団との大きなタイム差に後押しされたように、最終峠もさらなる勢いで登って行く。

レインコートもアームカバーも、サングラスさえも全て外し、身軽になって標高1740mの山頂へ向けてダンシングを続けるセッラ。ゴール直前にはウォーターボトルも投げ捨てた。ただし婚約指輪——ジロ直後の6月8日に結婚予定だ——は、片時も左手の薬指から外すことはない。ゴールラインを越えるその瞬間には、婚約者を思いながら笑顔で指輪に口づけをした。ただしその笑顔は、すぐに泣き顔に変わる。第7ステージはパンクで区間優勝の夢を逃し悔し涙を流したが、4年ぶりのジロ区間優勝をあげたこの日に流したのは、暖かい嬉し涙。

もちろん山頂ゴールでも山岳ポイント15ポイントを加算。総計では62ポイントと、2位と34ポイントの大差をつけて首位の座をさらに確かなものとしている。

後方では優勝候補たちの睨み合いが長らく続く。スピードコントロールするLPRブレイクスの後ろで、選手たちは互いの顔を見合わせ警戒するばかり。シモーニ(ディクイジョヴァンニ)が「ライオンの群れかと思ったら、羊の群れだった」と揶揄してみせたほど。それでもゴール前5kmを切ってからはそのシモーニのほかに、大会前半にマリア・ローザを着用したペッリツォッティ(リクイガス)も加速してライバルたちを揺さぶる。

そして有力メイン集団で最も効果的なアタックをかけたのが……、ここまでのステージで全く目立つところのなかったメンショフ(ラボバンク)だった。昨季ブエルタ王者がゴールまで約1.5kmの斜度16%ゾーンでスピードを上げると、他選手はたまらず遅れ始める。結局、エスケープ集団の残党に続いて、メンショフは首位から8分48秒遅れの6位でゴール。ペッリツォッティとリッコ(サウニエルドゥバル)は9秒、シモーニは13秒失った。また今大会序盤から健闘光る25歳ヴァンデンブロック(サイレンス・ロット)は、ジロで2度の優勝を誇る36歳大ベテランと同タイムでゴールに到着した。

昨季王者のディルーカ(LPRブレイクス)はメンショフから26秒、リッコからは17秒の遅れを喫した。ただし第7ステージで優勝し、今ステージはもちろん連日前線でアシストを続けているチームメイトのボシージョが、マリア・ローザを獲得。8日間首位を守り続けたヴィスコンティ(クイックステップ)は、ガラーテなどの山岳強者から1日中アシストを受けたが、残念ながら総合10位に陥落した。また今大会ここまで後輩に尽くし続けたベッティーニは、今日はエスケープの果てにステージ5位にランクイン。決して山岳が得意ではない世界王者の誇り高き奮闘に、ゴールラインでは惜しみない拍手が送られた。

そして全自転車ファンから大いに注目を浴びたアスタナのコンタドール&クレーデンの2人は、最後のメンショフのアタックが決定機となり少し千切れてしまった。ライバルとのタイム差は少し縮まったものの、コンタドールは総合2位に浮上し、マリア・ローザとのタイム差も縮まった。首位ボシージョとの差はわずか5秒しかない。


●エマヌエーレ・セッラ(CSF グループ ナヴィガーレ)
ステージ優勝、山岳賞

山岳賞ポイントのために逃げようと思っていた。でも幸運にも、最高のエスケープに乗れた。集団内の全員がいい仕事をしたよ。そのあとボクはひとりで飛び出した。エスケープ集団は登りスピードが速くなかったからね。それにボクは脚の調子がいいと感じていたんだ。

今までボクの身の上に襲ってきた全ての不幸が、これで報われたね。2004年の勝利のときと今のボクは、もはや同じセッラではない。ボクはもっと成熟したし、考え深くなった。最初の勝利は期待せずに手に入れた勝利。でもあの勝利のおかげで名前を知られることになった。今回の勝利も忘れられない勝利になったね。今の夢は、山岳賞ジャージをミラノまで持って帰ることさ。


●ダニーロ・ディルーカ(LPRブレイクス)

チームはしっかりやるべき役割を果たした。ステージは非常に厳しかったけれど、我々はよくコントロールしたよ。それにゴールでは(ボシージョが)マリア・ローザを勝ち取った。各選手が出来る限りの力を尽くした。ボク自身は今日調子が良かったけれど、あと少し何かが足りなかった。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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