【ジロ・デ・イタリア2008】第17ステージレースレポート

「今日はノーレース」と、現在総合9位につけるヴァンデンブロック（サイレンス・ロット）はスタート前に笑顔で語ってくれた。そう、難しい山岳3連戦を終え、次なる山岳ステージの到来を待つ総合上位選手にとって、この日の平坦ステージはいわゆる“移動日”。ジロ最後の休日を終え、いつもより遅い午後1時45分にスタートした第17ステージは、のんびりした雰囲気で始まった。

湖水地方の美しい景色を背景に、飛び出したのは3選手。去年のジロでも大逃げで何度もわかせてくれたアテネ五輪ポイントレース金メダリストのイグナチェフ （ティンコフ）、現在“大逃げ賞”トップを走るビュファーズのチームメイト・ユゲ（コフィディス）、そしてガヴァッツィ（ランプレ）だ。特にガヴァッツィは、スタート地から約20kmのコース上にあるタラモーナという町で生まれた郷土選手。スタート地にはおそろいのTシャツを着たファンクラブが応援に詰め掛けていたが、地元の期待に見事応えて前方で存在をアピールした。

ただし最後まで逃げ続けたのはイグナチェフ。高い走行能力でゴール前4km地点まで粘ったが、最後はスプリンターチームの餌食となってしまった。なにしろスプリンターにとって、残された勝利のチャンスは今ステージ（第17ステージ）と第18ステージのあと2つだけ。最終1kmに2回の90度カーブが待ち受ける少々危険なコースにも関わらず、有力スプリンターたちは全力でカーブに飛び込んでいった。

最終250mのカーブでベッティーニ（クイックステップ）は後ろに取り残されてしまったが、全力疾走していたハイロード3人組は最高のポジションで最終ストレートへ突入した。今ジロで区間2勝をあげているカベンディッシュ擁するハイロードは、先頭で牽引してきたマルティンが脇に退くと、順調に先導役をグライペルが引き受けた。……ところがグライペルの背後につけるカベンディッシュは、何度も後ろを振り返るばかりでスプリントをいつまでも切ろうとしない。さらにグライペルの先頭通過を確信すると、真っ先に両手を点に突き上げてチームメイトの優勝を喜んだのだ！

「先日、彼がボクのために成し遂げてくれた優勝に対して、ものすごく感謝しているんだ」と語るカベンディッシュ。後ろにつけていたベンナーティ（リクイガス）を監視し、飛び出しを牽制し、自らのアシスト選手に最高のアシストで恩返しをした。ところでベンナーティvsカベンディッシュの今ジロ対戦成績は3−2と、マリア・チクラミーノのベンナーティが一歩リードしていたが、このグライペルの勝利で事実上3−3とみなしても良いだろうか？

ジロ区間勝利は初めてのグライペルだが、2008年ツール・ダウン・アンダーでは全7ステージ中5ステージを制し、総合勝利も飾った期待の大型スプリンター。今季最初のUCIプロツールリーダージャージも獲得した25歳は、今後チームメイトのカベンディッシュとともにスプリント勝利を量産していくに違いない。

●アンドレ・グライペル（ハイロード）
ステージ優勝

スプリントでは予定通りの行動をとった。マルティンが最後のカーブまで引っ張り、カーブを曲がった瞬間にボクが先頭に出る戦術だったんだ。でもカベンディッシュが最後にボクを追い越すだろうと考えていた。これはチームの勝利だよ。カベンディッシュも喜んでくれた。チームメイトなしではスプリントは勝てないんだ。

今日は体調が非常に良かったんだ。休日で疲れを回復できたからね。ドロミティ越えは非常に難しかったけれど、リタイアしないよう監督が常に励ましてくれた。

●パオロ・ベッティーニ（クイックステップ）

今日は苦しかった。脚の調子は良かったんだけれど、呼吸器の調子が悪かったんだ。それでもゴール前はスプリントに挑戦したけれど、後ろに取り残されてしまったね。ボクが勝利を掴むためには、ポジション取りが非常に大切なんだ。それなのにカーブの出口でブレーキをかけてしまった。ヴァレーゼステージ（第18ステージ）では調子を上げたいね。なにしろボクにとって非常に大切なコースだからね。（※ヴァレーゼでは今年の世界選手権コースを通過する）