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2009年世界選手権の舞台から、2008年世界選手権のサーキットへ。コースの下見には最高の機会であり、ジロ会場には各国の連盟関係者やたくさんのジャーナリストが詰め掛けた。会場となる両自治体も、華やかなレセプションでジロ一行をお出迎え。また2002年世界選手権チャンピオンのマリオ・チポッリーニもレースに顔を出し、ファンやメディアを興奮させていた。
レースを最初に活気付けたのは、現在世界選手権2連覇中の偉大なるチャンピオン、ベッティーニ(クイックステップ)だった。2008年に五輪&世界選のダブル優勝を狙う34歳は、スタートから8km地点で単独アタックをかけると、矢のように飛び出していく。その後、次々とアルカンシェルジャージの後を追う選手が現れ、12人のエスケープグループが出来上がった。ところでグループの顔ぶれは、第14・15ステージの逃げ集団と少し似ている。今ステージを含めて3ステージ全てで逃げを打ったのはベッティーニ、ロドリゲス(ケースデパーニュ)、フォイクト(チームCSC)。そしていずれかのステージ+今ステージという逃げ組みがノチェンティーニ(アージェードゥゼール)、カルデナス(バルロワールド)。ちなみに第14・15ステージとも、セッラ(CSFグループ)が山頂フィニッシュを勝ち取ってきた。
そして、どうしても大逃げ優勝が欲しくて欲しくてたまらない彼らを、プロトンは最後まで逃がすことに決めた。なにしろ気温が低く、空模様はあいにくの雨。しかも翌日からは、総合争い最終3連戦(山岳2連戦+最終個人タイムトライアル)を控えている。表彰台争いの選手にとっては、体力温存が最優先だったようだ。
現役世界チャンピオン自らが作り上げた逃げ集団だったが、2008年世界選手権のゴールライン予定地を最初に超えることは叶わなかった。ゴールアーチが見えてきた残り40km地点で、フォイクトが思い切り加速すると、1度目のゴールラインを真っ先に通り抜けてしまったのだ。しかもゴールラインは2回通過し、3回目に本物のゴールを迎えたのだが、3度が3度ともフォイクトに先を越された。ツール区間2勝、マイヨ・ジョーヌの経験2回を誇る36歳大ベテランにとっては、生まれて初めてのジロの区間勝利だ。
置き去りにされた集団の中から、追走をかけたのはノチェンティーニ、ヴィスコンティ(クイックステップ)、ボシージョ(LPRブレイクス)というイタリア勢3人。イタリア代表監督バッレリーニが現場でレースの行方を見つめていたため、3選手にとっては絶好のアピール機会となるはずだったのだが……、フォイクトとのタイム差はどんどん開くばかり。ベッティーニに至っては随分遅くなってから慌てて1人飛び出したものの、結局、他の5選手と共に2分4秒遅れでゴールラインを超えた。一応ちょっとだけゴールスプリントを試しつつ、最後はマリア・チクラミーノのベンナーティ(リクイガス)の背中を押して先に行かせている。
メイン集団は7分51秒遅れでゴール地にたどり着いた。マリア・ローザ姿のコンタドール(アスタナ)がゴール前でスプリントをかけるサプライズも見られたが、ミラノでの表彰台候補は全員同タイムでゴールラインを超えている。
●イェンス・フォイクト(チームCSC)
ステージ優勝
今日のような状況では、最初にアタックをかけてイニシアチヴを取った選手が有利なんだ。逃げ集団に入ったとき、監督から今日のようなグループ内に入るのは名案ではないと告げられた。でも一旦エスケープを始めたら、結果を出すために最大限を尽くさなきゃならない。それにボクはベッティーニやベンナーティのように最終盤の加速だけで勝てるタイプの選手ではないから、早めのアタックをかける必要があった。
今日はセッラが逃げ集団にいなかったから、『勝ったも同然だ!』と思ったよ。だってここまで入ってきた逃げ集団にはいつもセッラがいて、彼がいつも勝って来たからね。今日は山頂フィニッシュじゃなかったから幸いだったさ。
●アルベルト・コンタドール(アスタナ)
マリア・ローザ
今日は自信があったし脚の調子も良かった。だからゴール前でアタックをかけてみたんだ。数秒稼げたらいいな、と思ったからね。世界選手権は難しい戦いになるだろうね。このコースはカーブが非常に多い。でも登りは比較的簡単だから、ボク向きのコースではないよ。むしろベッティーニやフレイレ向きかな。
明日のステージは全く恐れていない。むしろ難関ステージの到来を喜んでいるよ。ライバルたちは間違いなく、タイムを稼ぐために戦いを挑んでくるだろう。準備は出来ている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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