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スタート地は気持ち良いほど晴れていたというのに、山間部は大粒の雨が道路を濡らした。つくづく雨にたたられた今回のジロはまた、エスケープの成功が多い大会でもあった。第18ステージまでで実に7回の大逃げ勝利が決まってきたが、今大会最後の山頂フィニッシュステージでも序盤にエスケープを打った選手が区間勝利をつかんだ。
最初の1時間を時速50.4kmという超高速で走ったプロトンは、結局50kmを過ぎてからようやく7人の逃げ集団の先行を許した。一時は21分近いリードを奪ったエスケープ集団の中で、“常連”だったのが第7・14ステージに2位に入ったキリエンカ(ティンコフ)。第16ステージの山岳TTではゴール直前でメカトラブルにあい、歩いてゴールラインを越えるシーンも記憶に新しい。そのキリエンカは今ステージ中もメカトラブルで一時足止めを喰らったが、残り15km地点でアタックをかけると、ひとり山頂ゴールへと旅立っていった。
今年3月に英国マンチェスターで開催されたトラック世界選手権では、ポイントレース金メダルに輝いた26歳。何度も何度もアタックに挑戦し、ついにジロ区間優勝を手に入れた。「ロードもトラックも、ボクにとっては大切な勝利」と語るキリエンカは、北京五輪ではトラック競技とロード個人タイムトライアルに出場する予定だという。
区間優勝の後ろでは、この日登場した3つの峠で主力選手たちが大激闘を繰り広げた。前日、ガゼッタ紙の記者が「シモーニが最初のヴィヴィオーヌ峠でアタックするのでは?」と語っていたが、そのヴィヴィオーヌ峠からの下りで大アタックをかけたのはディルーカ(LPRブレイクス)だった。チームメイトのサヴォルデッリと若きニバリ(リクイガス)の3人で飛び出すと、雨の中、マリア・ローザ集団をはるか後方へと置き去りにしてしまう。さらにエスケープ集団から後退したエルメッティの助けを得て十分にリードを広げたディルーカは、残り15km、単独で走り始めた。
ディルーカには“グリンタ”=歯を食いしばって粘る強さがあるとイタリアでは良く語られるが、この日のディルーカはまさに歯を食いしばって孤軍奮闘を続けた。一時はコンタドール(アスタナ)を2分15秒近く引き離し、ボーナスタイムを考えると……暫定マリア・ローザにさえ立ったのだ(前日までのディルーカの遅れは2分18秒)。実際、最後の1kmで猛加速してエスケープの残党を2人追い越すと、区間2位でゴール。ボーナスタイムは12秒獲得している。
ただしマリア・ローザ獲得、いや、奪還はならなかった。現在ピンク色のジャージを着ているコンタドールが、危険を感じて最終峠で加速。さらに総合2位のリッコ(サウニエルドゥバル)がゴール前4kmでアタックをかけると、ディルーカとのタイム差はどんどん縮まっていった。
そして何度も加速を繰り返して、コンタドールやライバルたちを振り切ったリッコの、マリア・ローザの夢もこの日は叶わなかった。ゴール前必死でひとりスプリントを行ったものの、総合ではコンタドールに4秒届かず。新人賞マリア・ビアンカの表彰台では憮然とした表情を見せ、またコンタドールと共に加速を続けたセッラ(CSFグループ)やペッリツォッティ(リクイガス)を名指して批判した。もちろんセッラは「ボクは自分のチームのために走っている。アタックは自分のためにかけたんだ。ボクらに何を期待しているわけ?」と、イタリア人同盟など存在しないことを宣言している。また前日まで総合3位だったシモーニ(ディクイジョヴァンニ)は、最終峠で大きく遅れ、表彰台の夢費えている。
首位コンタドール、4秒差でリッコ、21秒差でディルーカ。ミラノ到着まであとわずか2日ながら、未だ2008年ジロ勝者は確定していない。第20ステージ、最後の山岳ステージでは2008年ジロ最標高地点“チーマ・コッピ”と“パンターニの山”モルティローロが、3選手の激戦を待ち受けている。
●ヴァシリ・キリエンカ(ティンコフ クレジット システムズ)
ステージ優勝
世界選手権トラック競技でも優勝しているけれど、自分ではヒルクライマーとしても悪くないと思っている。今日はトラック競技の技術に大いに助けられた。トラックでは、自分が果たして後続選手に捕まえられるか捕まらないかの距離感が分かるんだ。だから今日もライバルとの距離を測り知ることが出来た。
今日はメカトラブルがあったけれど、別に問題はなかった。「ああ、こんな状態には慣れているからな」と、いたって落ち着いたものだったよ。だって山岳TTでも自転車が壊れちゃったからね。今回は自転車を変えるだけで済んだから簡単なものさ。体調が良くて、自分に自信があったからね。
●ダニーロ・ディルーカ(LPRブレイクス)
ステージ2位
サヴォルデッリに心から感謝したい。彼は素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。それからエルメッティも大いに手助けしてくれた。マリア・ローザ獲得さえも信じたよ。一時は十分なタイム差をつけていたから。我々は素晴らしい走りが出来るんだ、ということを改めて証明できたことが一番大切だよ。
ディルーカを決して侮ってはならない。優勝は出来ないかもしれないけれど、ボクはいつだってここにいる。レースはミラノで終わるんだ。それ以前ではない。ジロの争いは未だオープンだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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