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ゴール後、3つの笑顔が並んだ。区間優勝を決めたセッラ(CSFグループ)ひとりでセッラの追走を続けたシモーニ(ディクイジョヴァンニ)、そしてステージ4位に入ったリッコ(サウニエルドゥバル)。それぞれ結果は違っても、満足度は違っても、2008年ジロ最後の通常ステージで各選手は自分のできる限りの走りを見せたのだ。
前日リッコに「コンタドール(アスタナ)とのタイム差作りに協力してくれなかった」と批判され、「ボクは自分のチームのために走っているんだ!」と怒りをあらわにしたセッラ。補給地点を過ぎてから発生したエスケープ集団が全て吸収されたその直後に、自らの存在意義を証明するために大きなアタックを打った。そして山岳賞の証マリア・ヴェルデを身にまとうセッラは、……残念ながら今ジロ最標高峠“チーマ・コッピ”も“パンターニの山”も制することはできなかったけれど、2008年ジロ最後の峠を見事に先頭通過。これで今大会登場した全32の峠で、14もの峠を先頭で駆け抜けたことになる。
しかもセッラは最強クライマーとしての証明だけではなく、ゴールラインでは今ジロ3つ目の区間勝利も勝ち取った。走りながら1、2、3と指を開いて数えた勝利数は、もちろんベンナーティ(リクイガス)と並ぶ今ジロ最多ステージ勝利数だ。
セッラに続いて飛び出したシモーニは、結局ステージ勝利も手に入れることが出来なかったし、前日失った総合5分57秒のうち38秒しか取り戻すことが出来なかった。それでもたったひとり前を目指して走り続けた36歳に、観客からはとどろくような歓声が降りそそぐ。そしてゴール地で周りを囲んだメディアに対して、ベテラン・シモーニは「あんなセッラにはかなうわけないんだ」と落ち着いた様子で応えている。
リッコに関しては総合争いの状況は「首位コンタドールと4秒差」に変わりはない。ただし前日とは対象的にリッコはマリア・ビアンカの表彰式にすっきりとした顔であらわれた。モルティローロへの登りではメンショフ(ラボバンク)やセッラと加速合戦を繰り返し、ボーナスタイムこそ獲得できなかったもののスプリントでコンタドールより先にゴールラインを切ったのだ。普段はクールな表情をなかなか崩さないのに、表彰式後の囲み記者会見では自然な笑顔さえ飛び出した!もちろん「最後の1秒まで、ボクは降伏宣言を出したりしない」と、最終日に向けて意気込みをあらわにした。
一方で、重苦しい顔でゴールラインにあらわれたのはディルーカ(LPRブレイクス)だ。前日にビッグアタックを成功させて21秒差の総合3位に返り咲いたというのに、今ステージではマリア・ローザ集団から再び大きく遅れを取った。結局、4分18秒差の7位に転落してしまった。
コンタドールも未だ100%晴れやかな顔はできない。通常、最終日前日には恒例の“総合勝者記者会見”が行われるのだが、2位リッコとのタイム差がわずか4 秒のコンタドールにリラックスなど出来るわけがないのだ。昨年ツール最終日前日記者会見では、明るい笑顔で饒舌だったコンタドールだったが……、この日ばかりはものすごい早口で数点質問に答えると、疲れた顔で足早に会見場を後にした。マリア・ローザを巡る戦いは、ミラノでの個人タイムトライアルゴールまで続く。
アルベルト・コンタドール(アスタナ)
マリア・ローザ
明日の目標はマリア・ローザを守ること。総合優勝を勝ち取るために走る。ジロが始まる前、自宅に召集の電話がかかってきたときには、こんな状況になるとは想像さえしていなかった。だからマリア・ローザ争いをすることが出来て本当に満足しているんだ。
優勝できるかもしれない、と本気で考えたのはマルモラーダステージ(第15ステージ)の後。でも第10ステージ・個人タイムトライアルの後、日に日に調子が上がっていくのを感じていた。総合優勝を狙うことにしたのはその時からだね。
今季序盤に立てた目標はツール優勝だったけれど、大会側から受け入れてもらえなかった。だから少し足踏みしてしまった気がしたんだけど、今はこの先一体どんな状況になるのか全く見当がつかないよ!きっと今季の終わりには、ツールだけを走ってツールだけを勝った場合よりは、ずっと素晴らしい年になっているかもしれないね。
エマヌエーレ・セッラ(CSFグループ)
ステージ優勝、山岳賞
今日はまた何かすごいことを成し遂げてやろうと考えていたんだ。ボクの十八番が飛び出したね。チームには心から感謝したい。ボクも自転車界の歴史に名を残すことが出来たと思う。ボクの価値をきっちり証明できた。コンタドールには大いなるブラボーを送りたい。彼はレースを完全にコントロールしていたし、アスタナは素晴らしい仕事をしている。彼はモルティローロさえも恐れていなかったよ!
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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