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まずは2008年ツール・ド・フランスの開催委員会が出版した公式ガイドに掲載されている、総合優勝本命たちの“採点表”をチェックしてみよう。
40点満点中——、
36点 カデル・エヴァンス
32点 ダミアーノ・クネゴ
30点 デニス・メンショフ、オスカル・ペレイロ、アレハンドロ・バルベルデ
29点 アンディ・シュレク
27点 カルロス・サストレ
25点 サムエル・サンチェス
23点 シルヴァン・シャヴァネル
ちなみにこのプログラムが6月上旬に発売開始されたことを考えると、ドフィネ・リベレで総合優勝を決めたバルベルデ(ケースデパーニュ)は数ポイントアップしてもよさそうだ。
またツール・ド・スイスでは落車前まで絶好調だったフランク・シュレク(チームCSC)の名前がなく、代わりに昨ジロ総合2位の弟アンディ・シュレクが上げられている。これはリストがチームCSCだらけになるのを避けるためだろうか。地元フランス希望の星であり今季絶好調のシャヴァネル(コフィディス)、昨勝者あるベルト・コンタドール(アスタナ)が不出場のため参加選手の中で唯一のツール優勝経験者となったペレイロ(ケースデパーニュ)もリストインしている。
●マイヨ・ジョーヌ争い大本命は
今シーズン開始直後から、ツール総合優勝大本命の筆頭に上げられ続けているのが昨季総合2位のエヴァンス(サイレンス・ロット)。オフ期間には2005年マイヨ・ブラン&昨ツール総合8位のヤロスラフ・ポポヴィッチを、強力アシストとしてチームに迎え入れた。そして今年最初の脚試しパリ〜ニースで早くもエヴァンス本人はモン・ヴァントゥを制し、ポポヴィッチは総合3位という好成績を叩き出す。また魔の山での勝利で「難関山岳ではとにかくついて行くだけ」というネガティヴなイメージも払拭。春クラシックでも常に前線で存在を見せつけ、ドフィネ・リベレでは総合2位に入ったエヴァンスは、オーストラリア人として初めてのツール総合王者を狙っている。
そのエヴァンスをドフィネ・リベレで圧倒し総合優勝を果たしたバルベルデは、いよいよマイヨ・ジョーヌ獲りへの準備が整ったようだ。難関山岳・少人数スプリント・TT全てで力を発揮できる天才型オールラウンダーは、“ミゲル・インデュラインの後継者”とスペインはもとより自転車界全体から期待されながら、同胞ペレイロとコンタドールに先を越されてしまったが……。過去の経験(昨ツール体調不良で失速→総合6位、2006年ブエルタで下りで大逆転され総合2位陥落)を生かして、本当の頂点に立つべき時がやってきた。
またバルベルデ同様に難関山岳強し、少人数スプリント強し、TT能力向上中のクネゴ(ランプレ)も恐ろしい存在になるだろう。なにしろ2004年ジロ王者は、母国のジロをスキップしてまで、「TTが少なく山が多い、つまりボク向きの」今ツールに全てをかけているのだ。今季アムステル・ゴールドレースを勝ち取った後、現在はUCIプロツール首位につけている。
一方、過去2度優勝したブエルタを今年のスケジュールから外し、逆にジロで本命ツールへの調整を行ったメンショフ(ラボバンク)も要注意。ちなみにジロでは難関山岳で何度かアタックを仕掛け、総合5位に入る強さを見せた。ここ数年はミカエル・ラスムッセンとの兼ね合いで色々と苦労してきたそうだが、いよいよ待望の絶対的リーダーとしてツールを迎える。
●3リーダーを抱えるチームCSC
今ツールで最も危険なチームといえばチームCSC。個人TT世界王者F・カンチェッラーラは平地・個人TTでは誰にも止められない脚を持っているし、スチュアート・オグレディやイェンス・フォイクトも大逃げ勝利をつかめる決定力を備えた選手だ。しかも全く穴が見当たらないこのチームには、総合上位を狙える実力を持つ選手が3人も存在する。2006年総合3位・2007年総合4位のサストレ、2006年ラルプ・デュエズを制したフランク・シュレク、そして2007年ジロ総合2位のアンディ・シュレクである。
リース総合監督がチームリーダーに指名したのはサストレ。ブエルタでも2006年4位・2007年2位という高い実力と、豊富な経験を誇る33歳にとって、年齢的に考えればおそらく本気でツール総合優勝を狙える最後の年になるだろうか。とにかく山岳強者のサストレにとっては、クネゴも言っているように、TTが比較的短い(計82.5km)今ツールは最高のチャンスだ。しかも現自転車界を席巻するシュレク兄弟のアシストを全面的に受けられるのだから!
その兄フランクはツール・ド・スイス第5ステージでルート外に転落し、背中と指を軽く痛めてしまった。ただしツールの難関山岳突入までには本調子に復帰できる予定。意外にも過去は2006年の総合10位が最高成績だが、今年はサストレを表彰台のてっぺんに送り込みつつ、自らも表彰台に迫る活躍を見せて欲しい。
総合でどこまでやれるのか、いや、どこまで行ってしまうのか全く未知数なのが弟アンディ。「ボクよりもはるかに才能を持つ」と兄に言わしめる弟は、初出場の昨ジロではわずか22歳にして総合2位をさらってしまった。一方、今春のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは兄弟アシストで大いに見せ場を作ったものの、4位に終わり走りの未熟さも露呈した。初参加となるツール・ド・フランスでは、どんな走りを見せてくれるのか。アンディはこの6月10日に23歳の誕生日を迎えたばかりだ。
●総合争いをかき回せ!
自転車ファンを大いに喜ばせているのが、今ジロを総合2位で終えたリカルド・リッコ(サウニエルドゥバル)のツール参戦だろう。リーダー予定だったホセアンヘル・ゴメスマルチャンテが体調不良でツール欠場を決めたため、急遽“コブラ”のリーダーとしての出場が決まったのだ。すでに2006年にツールに参加し、総合97位で完走しているが、本命級の選手としてツールに乗り込むのは初めて。
もちろん5月のジロでコンタドールと最終日まで死闘を繰り広げ、未だ疲労の抜けないリッコが目指すのは、総合上位よりも難関山岳ステージ優勝。なんでもはっきり口にしなければ気のすまない24歳の若者は、「ラルプ・デュエズ獲り」を宣言している。もちろん自らがアイドルと仰ぐマルコ・パンターニが2度制した、伝説の山である。
昨年のブエルタで総合3位に入ったサンチェス(エウスカルテル)も、総合上位をかき回す可能性を秘めている。なにしろスペインでのグランツールでは凄まじい下り坂テクニックを見せ付けたが、今ツールでは第9ステージと第16ステージに山頂からの長い下り坂ゴールが待っている。この2ステージでライバルたちを出し抜き、思わぬタイム差をつけられるかもしれない。
昨年山岳賞マウリシオ・ソレル(バルロワールド)、キム・キルシェン(チームコロンビア)なども総合上位に食い込んでくるはずだ。地元フランス勢ではパリ〜ニース、そして北クラシックで勝利を重ねたシルヴァン・シャヴァネルに大いに期待がかかる。また昨年マイヨ・ジョーヌ獲りに失敗したクリストフ・モロー(アグリチュベル)も、決して栄光をあきらめてはいない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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