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一足早いキャトーズジュイエ=7月14日革命記念日!? 肝心の当日は難関山岳ステージのため、1週間早い7月7日にフランス選手たちは大勝負に出た。ピュアスプリンター向けと言われた第3ステージで、文字通りスタート直後にアタックを打って逃げ始めた4選手が大会初の大逃げ勝利を決めたのだ。その4人のうち、2人がフランス人。そして1人はステージ優勝を、もう1人はマイヨ・ジョーヌを勝ち取っている。
相変わらずブルターニュの強い海風と強いにわか雨に苦しめられたこの日のプロトン。翌日に“ツール最初の本命大勝負”個人タイムトライアル29.5kmを控え、強豪選手たちはおとなしく体力温存に務めたのだろうか。マイヨ・ジョーヌを着てステージに乗り込んだアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)は、「序盤はうまくコントロールできた。後半はスプリンターチームが追走を始めると思ったんだけど・・・。そのまま逃がしてしまった」と振り返る。前半で16分近くまで開いたタイム差は、残り50km地点では6分半程度にまで順調に減っていた。しかし天候とデモ集団にリズムを乱され、結局、後続集団は再び4人の後姿を見ることはなかった。
強風に悩まされた後続集団では分断も発生。なんと優勝候補のデニス・メンショフ(ラボバンク)とジロ総合2位のリカルド・リッコ(サウニエルデュバル)が、他のライバルたちから38秒も遅れてしまった。平地ステージでの失態を、個人TTと山岳でどう取り戻すか。昨ツールがわずか23秒差で決まったことを忘れてはならない。
上手に協力し合って逃げ続けた先頭の4人が、ようやく互いに顔を見合わせ始めたのがゴール前2km。そしてコフィディスのフランス人、サミュエル・ドゥムランが残り1.5kmで最初のアタックを打って飛び出した。ウィリアム・フリッシュコーン(ガーミン)、さらにもう1人のフランス人ロメイン・フェイーリュ(アグリテュベル)は後を追い、パオロ・ロンゴボルギーニ(バルロワールド)はたまらず先頭から脱落。その後、スプリント得意なフェイーリュが加速を仕掛けた。
ただしスプリントは少々長すぎたようだ。身長159cmで“ビッグ・リトル・マン”の異名を持つドゥムランが同朋を追い越すと、そのまま先頭でゴールラインを越えた。5回目のツール出場にして始めて勝ち取った区間優勝。夢がかなったというドゥムランの次なる夢は、フランスチャンピオンジャージを着てツール区間を優勝することだとか。
そしてプロ2年目、ツール出場2回目のフェイーリュが、マイヨ・ジョーヌを獲得した。プロ初レースのツアー・オブ・カタールでは第1ステージで大逃げを仕掛け、プロ初のビッグレースであるパリ〜ニースではやはり第1ステージの大逃げで山岳賞を獲得し、昨年初めてのツール第1ステージではビッグネームたちと共に集団スプリントに参戦し区間5位に入ったという堂々たる攻撃屋。確かに今大会でも第1ステージ最後のカドゥダル峠で最初にアタックをかけたのは彼だ・・・。昨冬に病気を患い、しばらく自転車に乗れない時期を過ごしたが、「昨年以上に強くなって帰ってきた」(byアグリテュベル監督ユベール氏)。フランスの未来を背負う24歳は、新人賞ジャージも同時に手に入れている。
●サミュエル・ドゥムラン(コフィディス)
ステージ優勝
先の2日間でフラストレーションがたまっていた。ツールで活躍したいと願って乗り込んできたのに、スピードに乗れなかったし、調子も悪かった。だから今日は「アタックしよう、調子も上がっていくさ。もし最後まで逃げ切れなくても、前線で楽しめばいいじゃないか」って自分に言い聞かせたんだ。誰もが今ステージはスプリントゴールになると予想していたのにね。自転車レースは本当に論理だけでは語れないものだ。それにボクは自転車選手にとって必要な肉体条件を備えているとは言えないけれど、勇気と知恵を持っている。
レース中にフェイーリュのマイヨ・ジョーヌ獲得の知らせがあったから、たとえボクがアタックをかけても追いかけないでくれ、と彼に頼んであったんだ。でも彼は追いかけてきたからびっくりしちゃったよ!とにかくアタックで差をつけることが出来なかったから、最後まで戦い抜いた。もうサドルから立ち上がってペダルを漕ぐ力が残っていなかったけれど・・・勝てたんだ!
●ロメイン・フェイーリュ(アグリテュベル)
マイヨ・ジョーヌ&マイヨ・ブラン
マイヨ・ジョーヌのことは1日中考えた。スタート直後に逃げ始めてから、ボクが一番マイヨに近いと知っていたからね。でも最終スプリントでは力が足りなかった。グループ内では4人が非常によく協力し合った。最後の20kmまで逃げ切れれば、風向きが好都合になってくるはずと分かっていた。
タイムトライアルはどんな風に走れるか全く分からない。体調がどこまで回復しているかによるね。カンチェッラーラとの差は1分52秒。彼のようなスーパースペシャリストにとってはたいしたタイム差じゃないはずだ。ボクが最後にリーダージャージを着てタイムトライアルを戦ったのは、ジュニア時代にさかのぼる。そのときは10秒差しかなかったけれど、ジャージを何とか守ったよ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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