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サイクル ロードレース コラム 2008年7月9日

【ツール・ド・フランス2008】第4ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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フランス人マイヨ・ジョーヌの姿を一目見ようと、夏の太陽が顔を出したショレの町にはたくさんの観客が詰め掛けた。アグリテュベルのチームバス周囲はファンでいっぱい。もちろん個人タイムトライアル29.5kmの全行程に渡って、前日風雨に負けず1日中逃げ続けた小さな英雄ロメイン・フェイーリュには惜しみない大きな歓声が送られた。残念ながらたった1日でジャージは失ってしまったけれど、黄色いジャージで群集の中を走り抜けた40分のことはきっと忘れられない思い出になることだろう。

地元フランス人の関心とは別に、今ステージの注目点は2つあった。ステージ勝利の行方と、最初の大勝負における総合本命たちの動向だ。大方の予想はファビアン・カンチェッラーラ(チーム CSC)が区間優勝を、そして総合狙いの中ではカデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)とアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)が好タイムを叩き出すだろう、というようなもの。特に世界選手権個人タイムトライアル2連覇のTTスペシャリストの優勝は“ほぼ確定”と思われていたし、バルベルデも今季TTで2勝を挙げている。ただし周囲と本人の期待に応えられたのは、エヴァンスだけ。

アップダウンと風に苦しめられながらも、ゴール前で激しくスプリントしたカンチェッラーラは暫定1位に立つ。ただし「100%レベルの走りは出来なかった。でも出来る限りの全力は尽くしたんだ」という世界王者を、「アップダウンはボクの得意種目」と語るステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)があっさり追い抜いた。中間計測地点で23秒差のトップタイムを叩き出すと、ゴールではさらにリードを33秒差に広げていた。しかもカンチェッラーラがその後も3選手に次々と追い抜かれたのに対して、シューマッハーの叩き出した時速49.9kmは最後まで破られることがなかった。

約2週間後の7月21日に27歳の誕生日を迎えるシューマッハーは、同時にマイヨ・ジョーヌも獲得。2006年ジロ・デ・イタリアの第3ステージでは雷雨の中ナミュールの石畳登りフィニッシュを制し、その後マリア・ローザを2日間着用したが、イエロージャージは果たして何日間守ることが出来るだろうか。

一方、今ツールではすでに2日間に渡ってマイヨ・ジョーヌを着用したバルベルデは、「今日はボクの日ではなかった」と語るようにステージ首位からは1分34秒を失った。すなわち、区間4位に入り好調さをアピールしたエヴァンスからは、1分07秒を失ったことになる。ツール直前ドフィネ・リベレの個人TTステージ(31km)ではエヴァンスを20秒突き放し、そのまま総合優勝をさらったバルベルデだが、この日ばかりはエヴァンスに軍配が上がったようだ。

また昨ツール総合2位のエヴァンスは、他の総合ライバルたちも全部ひっくるめてリードを奪っている。むしろクライマータイプのダミアーノ・クネゴ(ランプレ)には59秒、カルロス・サストレ(チーム CSC)には1分16秒突き放した。フランク・シュレク(チーム CSC)にいたっては1分47秒もの大差をつけた。唯一、7秒差に留まったのはデニス・メンショフ(ラボバンク)。ただし前日の分断の犠牲者であるメンショフは、総合ではエヴァンスから51秒遅れているのだが。

やはりTTスペシャリストのデーヴィット・ミラー(ガーミン・チポレ)は、シューマッハーから18秒差でゴールラインに飛び込んだ。そのミラーと同タイムで終了し、100分の1の位まで計測された結果、区間2位の座を勝ち取ったのがキム・キルシェン(チーム・コロンビア)。現在マイヨ・ヴェールを身にまとうキルシェンは総合でも12秒差の2位に入り、「総合上位を狙う」宣言が現実味を増してきた。


●ステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)
ステージ優勝、マイヨ・ジョーヌ

ステージ優勝とマイヨ・ジョーヌを手に入れられるなんて信じられない。第1週目は積極的に走って、区間勝利かマイヨ・ジョーヌを取りに行こうと思っていたんだ。でも両方がうまくいったなんて、言葉ではうまく言い表せないような感激だよ。ツールの表彰台に上がれて、しかもマイヨ・ジョーヌに袖を通せるなんてとてつもなく素敵なことだ。

ボクは小さなアップダウンコースを得意とするんだけれど、今日のコースも上り下りが多かった。フラットではなかった。だからボクもいい走りを出来たんだね。でも今日勝てるとはもちろん思ってもいなかった。ボクは楽天家だけれど、カンチェッラーラが区間優勝の大本命だと思っていたからね。ボクにとってもサプライズな出来事さ。

マイヨはまず明日は最低守りたい。チームが上手くレースをコントロールすれば、おそらく可能だろう。でもその後は難しいかな。シューペール・ベスのステージは厳しそうだ。ボクのタイムリードはそれほど多くないし、たとえばキム・キルシェンはわずか5秒差しかない。たくさんのアタックが予想されるね。だからいい脚がなければ難しいな・・・。


●ロメイン・フェイーリュ(アグリテュベル)

昨日は1日中戦ったのに、今日はマイヨ・ジョーヌでたった40分しか走ることが出来なかった。レースがもっと長く続けばいいのに、って生まれて初めて願ったよ。昨日は全力を使い果たしたし、3時間しか眠れなかったんだ。だから今日は朝からすごくナーバスになっていた。パワーが全く出なかった。

でも心の奥底では少しだけ信じてた。TTスペシャリストではないクネゴもいいタイムを出していたから、もしかして行けるかな、と思っていたんだ。でも脚が思い通りに動かなかったよ。後悔はしていない。チームやファンがボクを応援して、励まして、勇気付けてくれた。スタッフたちがたったの1晩で黄色いヘルメットや黄色いサングラスを用意してくれた。素敵な1日だったよ。


●カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)

総合優勝争いの選手たちの中では1位のタイム。総合順位でもライバルたちを抑えてトップに立てた。これが今日の目標だったから満足している。山岳突入を前に望みどおりの好位置につけることが出来た。ツールの総合争いは今日始まったんだ。最高のスタートを切れたね。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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