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サイクル ロードレース コラム 2008年7月12日

【ツール・ド・フランス2008】第7ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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適度に難しいアップダウンが登場し、距離が154kmと短かった今ステージ。「今日こそは大逃げが決まるはず」と誰もが考え、「今日こそはわがチームから勝者を出したい」と各チーム監督はスタート前に口にしていた。だからこそスタート直後から数々のアタックが巻き起こり、プロトンの走行速度は極限まで上がる。序盤1時間に渡って大々的なアタック合戦が繰り広げられたあと、ルイスレオン・サンチェス(ケースデパーニュ)、ダビ・デラフエンテ(サウニエルドゥバル)、ホセ・フフレ(サウニエルドゥバル)の4選手がようやく逃げ出すことに成功した。

高速スピードはプロトン内に様々な影響を与えた。今ツール序盤から不振が目立ったマニュス・バクステッド(チーム ガーミン)は、真っ先に千切れ、1日中たった1人で戦い続けた。肩で大きく息をしながらもなんとか完走したが、残念ながら4分28秒足りずに制限時間アウト。ツールから立ち去ることが決定した。一方、この日最初にアタックを仕掛け高速化の原因を作ったクリストフ・モロー(アグリチュベル)は、今ステージの途中で棄権。今年は山岳賞獲得を狙っており、スタート前には好調さを見せていただけに、関係者は“不可解なリタイア”と首をかしげる。また今ツールすでに2度の大逃げを打ったリリアン・ジェグーが激しい落車の犠牲となり、ツール続行を断念している。

チーム コロンビアとチーム CSCが強烈なプロトン牽引を始めたころ、72km地点で集団落車が発生した。そしてこの落車をきっかけにプロトンは大きく3つに分断し、不運にもヒップを地面に打ちつけたダミアーノ・クネゴ(ランプレ)が後方の集団に取り残されてしまう。こうして軽い雨と霧に覆われたマシフサントラル=中央山塊の山道で、クネゴ率いるランプレ集団は追走トレイン編成の必要に迫られた。アシストの献身的な努力に助けられ、実に20kmもの追走の上、2004年ジロ総合王者はなんとかメイン集団に追いつく。・・・しかしこの追走でエネルギーを消耗したのか、ステージ最後の3級山岳で始まった強豪たちの争いで完全に集団から再び弾き飛ばされてしまった。

この3級峠では、もはやプロトンとの合流は避けられなくなった先頭エスケープの4人から、最後の力を振り絞ってデラフエンテが飛び出した。そして頂上を1位通過して山岳ポイントを4点加算すると、前日に山岳賞ジャージを獲得したばかりのシルヴァン・シャヴァネル(コフィディス)の総計27ポイントをわずか1ポイントだけ上回った!「寒いのは大嫌い。でもここ数日暖かくなって、調子がどんどん上がってきた」と語るスペイン出身の27歳は、待望の赤玉ジャージに袖を通した。

残り10km地点では前日ゴール直前で落車し、マイヨ・ジョーヌを失ってしまったステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)の加速も見られた。これは「キム・キルシェン(チーム コロンビア)の後輪に触れたんだ。その彼がマイヨ・ジョーヌを奪うなんて、どうかしてる」との鬱憤を晴らし、首位までの16秒差をひっくり返すための賭けだったのだろうか。しかしこの日の賭けは失敗に終わる。

賭けを大成功させたのは、ゴール前4kmでこの日3度目のアタックをかけて飛び出していったルイスレオン・サンチェスだ。得意の下りで猛加速を始めると、ゴールまで一気に走り降りる。最終ストレートでは猛追プロトンがすぐ背後まで迫っていたが——、2008年パリ〜ニース最終日で下り単独走行し、最終ストレートで迫りくるプロトンをかわして勝利を得たときよりは、“6秒差”と余裕のある勝利だった。ゴールラインでは3年前に交通事故で天に召された兄に、ゆっくりと勝利を捧げる時間もあったほど。「ミゲル・インドゥラインの後継者」と呼ばれてきた24歳にとっては、初めてのツール区間勝利である。

6秒差で雪崩れ込んできたメイン集団は、シューマッハーが2位に入る意地を見せた。マイヨ・ジョーヌのキルシェンも同タイムでゴールし、問題なく総合首位を守った。

ステージ終了から約2時間後、2008年ツール・ド・フランスに悪い知らせが届いた。第1ステージ終了後のドーピング検査で、リクイガス所属のマヌエル・ベルトランの尿からEPOが検出されたのだ。この日は朝からフランスメディアが「これまでのドーピング検査で“疑わしい”ケースが10件ほどあった」と報道していたが、最悪の事態が起こってしまった。ベルトランはツールから即刻追放、チームは現時点ではレース続行を発表している。


●ルイスレオン・サンチェス(ケースデパーニュ)
ステージ優勝

この勝利は3年前に交通事故で亡くなった兄に捧げる。ボクら家族は非常に仲が良くて、ボクが21歳のときまで一緒に自転車をやっていたんだ。ボクらチームメイト全員、バルベルデかペレイロがマイヨ・ジョーヌを着てパリに突入できるよう仕事をしている。どのステージも、その事を肝に銘じて走っている。ボクがエスケープに参加して、ステージを制することが出来たのは、状況がそれ許したから。それだけの話。我々の目標は一つだけしかない。マイヨ・ジョーヌでパリを迎えること。

強豪選手が揃ったチームに所属していることを幸運に思う。バルベルデやペレイロと触れ合うことで、多くのものを学び取れるからね。ボクはまだ24歳だし、まだ学ぶべきことは多い。もちろん3、4年後にはツールで総合上位を争えたらと願っているのは確かだよ。


●キム・キルシェン(チーム コロンビア)
マイヨ・ジョーヌ

今日の序盤は冷静でいられた。脚の調子が良かったし、チームは非常に強く、マイヨを守るための準備が出来ていた。だからボクは自信を持っていられたんだ。だからレースを完璧にコントロールしてくれたチームにもう一度感謝の気持ちを伝えたい。簡単ではなかったよ。登りが多かったからね。とにかくマイヨ・ジョーヌを守って、チーム全体が本当に喜んでいる。

母国ルクセンブルクでは、ボクとシュレク兄弟が同じ考えを分け合っているわけではないことを誰もが理解している。誰でも思ったことを行動に移す権利がある。それにチームも違うし、だから勝利をプレゼントしたりはしないんだ。真剣勝負を繰り広げる。そして今日は兄弟が我々チームを非常に苦しめたよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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