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無謀にも飛び出して行ってしまうことを“シャヴァネル風”・・・、なんて地元フランスの記者たちはちょっと皮肉気味に呼んでいる。確かに今ツールのシルヴァン・シャヴァネル(コフィディス)は大逃げ・中逃げ・小逃げに何度となく挑戦してきた。目立つアタックだけでも第2・6・13・14ステージの4回。そして山岳賞ジャージを第7ステージで1日着用した以外は、区間優勝獲りの試みは全て失敗に終わってきた。しかし今日はその“シャヴァネル風”で、シャヴァネルがついに初めてのツール勝利を手に入れた。
ただしスタートから10km地点で、最初のエスケープ集団を作ったのはエゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル)、アレッサンドロ・バッラン(ランプレ)、ステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)、ピエリック・フェドリゴ(ブイグ テレコム)の4選手。グランツール区間勝利経験者の4人——後者3人はツール区間優勝経験者——の危険な逃げを、複数のチームは許そうとしない。特に今ツール区間勝利のないリクイガスとクイックステップは、今ツール残り少ないチャンスを逃すまいと猛烈に加速。タイム差は最大1分程度にしか開かぬまま、69km地点で集団はひとつにまとまった。
そのまま極度にハイスピードを保ったままのプロトンから、シャヴァネルが例の通りアタックを試みる。一度は失敗するものの、挫けずに2度目のチャレンジ。2度目は、今季ジロで“大逃げ大賞”をほんのわずかの差で逃したやはり大逃げ好きジェレミー・ロワ(フランセーズデジュー)と共に、見事に飛び出しを成功させた。やはり一部のチームによる高速追走劇は続いたものの、上手に協力し合った2人をまるで追い詰めることが出来ない。そしてゴールまで15km地点で、プロトンからのリードはいまだ3分以上。ついに逃げ切り勝利が見えてきた。
ここでコフィディスの監督は、シャヴァネルに飛び出し、勝利を取りに行くよう指示を出した。ところが肝心の本人は、スプリント勝負に賭けるほうを選んだ。「最終盤に軽い登り坂で何度か加速して、ロワの調子をチェックした。彼はついてくるのがやっとという状態だった。だからスプリントに全てを賭けようと決めたんだ」と、ゴール後に語っている。そして最終ストレートにトップで走りこむと、ゴール間近までギリギリ待ってから加速したロワをあっさりと蹴散らして、シャヴァネルが念願のツール初勝利を上げた。
今季のシャヴァネルはパリ〜ニースでリーダージャージ着用&区間勝利、さらにベルギーセミクラシック2勝と絶好調。ツール前までに6勝も手に入れてきた。また前日には来季のクイックステップ移籍が発表され、外国チームで新たな冒険に乗り出す決意も表明していた。フランス人にとって“永遠の期待の星”・・・つまり期待は大いに持たせるものの、いつまでたっても期待止まりだったシャヴァネルが、この区間勝利でついに母国のファンから本物の実力者として認められることになりそうだ。
また1分13秒遅れでゴールにたどり着いた後続集団内では、スプリントをゲラルド・チオレック(チーム コロンビア)が制し、人生最後のツールを戦う38歳エリック・ツァベル(チーム ミルラム)は2番目につけた。今大会勝利こそないものの、マイヨ・ヴェール争いは総合2位。オスカル・フレイレ(ラボバンク)が42ポイントの大差で首位につけているが、数字の上では未だツァベルにも勝機はある。総合争いの選手たちは、翌日の個人タイムトライアルのために体力温存にでた。フアンアントニオ・フレチャ(ラボバンク)、ファビアン・ウェーグマン(ゲロルシュタイナー)、そしてマイヨ・ジョーヌを1日着用したロメイン・フェイーリュ(アグリチュベル)は、タイム制限アウト。パリまであとわずかというのに、残念ながらツールを終えることが出来なかった。
●シルヴァン・シャヴァネル(コフィディス)
ステージ優勝
最初のエスケープに乗れなくて、不満が溜まっていた。カウンターアタックをいつでもかけられる状態だった。エスケープのきっかけを作ったのはボク。集団から前へ出た後は、時速65kmでしばらく走ってとにかく粘り続けた。コフィディスへの最高のプレゼントになったね。そしてボクはこれから新たな冒険に旅立つ。ビッグクラシックを勝ちたいと思っているよ。
この勝利はボクが今まで尽くしてきた努力の成果だ。勝利まであとわずかのステージはこれまで3度あったけれど、ボクは常に不満を抱えていた。だけど今日はあらゆる人に「粘り続ければ、必ず結果は現れる」という真実を証明することができた。ただしアタックとは個人的な喜びであって、また人々に喜びを与えるためでもあるんだ。今日はたくさんの自転車ファンがテレビ画面の前で叫び、大喜びしてくれたと思っている。ボクは人々の感情を揺さぶり、人々はボクの堂々たる走りを愛する。
まだシャンゼリゼステージが残っている。ボクはシャンゼリゼ入りするのが本当に好きなんだ。日曜日にはまた派手なことをしでかすよ!
●カルロス・サストレ(チーム CSC)
マイヨ・ジョーヌ
明日は非常に大切な1日だ。一番最後にスタートを切るおかげで、前に走った選手たちから情報を得ることが出来る。これは本当に重要だ。特にボクのチームには、個人タイムトライアルを得意とするカンチェッラーラがいる。彼からあらゆる詳細を得られるのは極めて有利になるだろう。それにライバルたち、つまりメンショフやエヴァンスよりも後にスタート出来るのも有利な条件のひとつ。ライバルたちの通過タイムを知った上で走ることが出来るからね。
精神的に落ち着いているし、リラックスしている。ボクが今まで走ってきた数多くのタイムトライアルと、明日はなんら変わりはないんだ。唯一の違いは、マイヨ・ジョーヌを着て走ることだけ。自分の実力には自信を持っている。最初から最後まで全力で走る。今ツールここまでチームがボクのために1000%の仕事を成し遂げてくれた。明日はボクひとりで戦わなければならない。マイヨ・ジョーヌを守るために。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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