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お天気のよい7月最後の日曜日。雨・風・寒さがプロトンを襲ったブルターニュ地方を出発し、3週間にわたる長旅を続けてきたツール一行は、伝統の最終ゴール・シャンゼリゼ大通りにたどり着いた。パリ入りの前には恒例、写真撮影タイムやシャンパンタイムも見られた。勝った選手も勝てなかった選手も、この日ばかりは終わりまで走り切ったことを互いに讃えあい、心から喜び合うのだ。
8周回のシャンゼリゼでは、たくさんの選手が飛び出しを試みた。ほんのわずかの差で勝利を逃したニコラ・ヴォゴンディ(アグリチュベル)やカルロス・バレード(クイックステップ)はツール期間中に抱いた後悔を大会後まで持ち越さないように、全く存在感を出せなかったフィリップ・ジルベール(フランセーズデジュー)やブイグ テレコムは世界一美しい大通りで自らのジャージをアピールするために、個人タイムトライアル2勝のステファン・シューマッハー(ゲロルシュタイナー)は貪欲に。ただし今大会の勝機をほぼ全てマーク・カベンディッシュ(チーム コロンビア)に奪われてしまったスプリンターたちが、最後のチャンスを決して譲ろうとはしなかった。
プロトンは一塊になってコンコルド広場からゴールラインへと雪崩れ込んでいく。さらにクイックステップが今ツール最後のトレインを形成した。普段はトム・ボーネンのために作られるトレインに、今大会はヘルト・ステーグマンが乗る。昨大会はアシストの結果に思わぬステージ優勝が転がり込んできたが、今ステージでは堂々と自分のためだけに最終スプリントを切った。そしてカベンディッシュのアシストゲラルド・チオレック(チーム コロンビア)とマイヨ・ヴェールのオスカル・フレイレ(ラボバンク)の追走を振り切り、2008年ツール最後の区間優勝を手に入れた。
ゴール後にシャンゼリゼ大通りに設置された表彰台では、カルロス・サストレ(チーム CSC)が2人の子供とおそろいのマイヨ・ジョーヌを身にまとって、満面の笑みを見せていた。「今年のラルプ・デュエズで、自転車界は美しき神秘を取り戻した。登坂口での果敢な単独アタック、追走を試みるライバルたち、見事な独走勝利、ゴール後に疲れ切って動けない敗者たち。そして最も幸いなことは、伝説の山を制したサストレがツールの総合優勝を果たしたこと」と、開催委員長C・プリュドムも絶賛する見事な勝利。過去18のグランツールに参加してきた33歳が、初めて総合優勝の座に駆け上がった。また連日、高速でプロトンを引いたチーム CSCはチーム総合首位の座を勝ち取り、アンディ・シュレクはマイヨ・ブランに袖を通した。
パリの街角には2年連続でスペイン国歌が流れ、スペイン年——サッカーのユーロでスペイン代表優勝、テニスの全仏・全英オープンでスペインのナダル優勝、ジロ・デ・イタリアはスペインのアルベルト・コンタドール優勝——を沿道のファンたちは大いに祝う。約1ヵ月後にはそのスペインの大地で、ブエルタの戦いが待っている。もちろん主役はスペイン人たち。コンタドールとサストレだ!
●ヘルト・ステーグマン(クイックステップ)
ステージ優勝
ツールの最終ステージを勝てるなんて最高だ。チームメイトが非常に高速でボクを導いてくれたから、遠くからスプリントを切っても誰にも追いつかれないだろうと考えた。最後のロングストレートについては熟知していたからね。ツールの期間中、チームはボクのために働いてくれた。特に今ステージでは完璧なトレインを作ってくれた。だからツール通算2勝目を上げることが出来て本当に満足している。
普段のリーダーはボーネンだ。でも今年は彼がいなかった。だからボクが区間優勝の任務を負うことになり、かなりプレッシャーを感じたよ。そして区間を手に入れるために、長い間待たされた。本当に長かった、長すぎた。でもついに勝利が訪れた。最高だね。
●ベルンハート・コール(ゲロルシュタイナー)
総合3位&山岳賞
本当に嬉しい。山岳賞ジャージを着てパリにたどり着けるなんてまるで夢のようだよ。さらに総合3位。最高の気分だよ。夢にさえ見たことのない好成績だ。シャンゼリゼの表彰台はテレビでずっと昔から見てきた。単なる一ファンとして見てきたのであって、そこに自分が登る日がやってくるなんて考えたこともなかった。表彰台に登るチャンスがあると知っていたから、昨日の個人タイムトライアルでは全力を尽くした。
●シルヴァン・シャヴァネル(コフィディス)
スーパー敢闘賞
シャンゼリゼでも飛び出しを試みた。でもミッション・インポッシブルだったね。特にここはスプリンターが逃がしてくれないから。でも観客のためにトライしたかったし、後悔はしていない。来年クイックステップに移籍した後、どんなプログラムで走ることになるのかはこの冬に決定するだろう。パリ〜ルーベと、もちろんツールは走りたい。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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