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アンダルシアの抜けるような青い空と熱い太陽、そして見渡す限りどこまでも続くオリーブ畑。スペイン独特の風景の中、プロトンは今大会初めての通常ステージに乗り出した。
スタート直後にはアンダルシア・カハスールの選手たちがこぞって今大会最初のアタックを仕掛け、5km地点で同チームからヘスス・ロセンドがエゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル)と共に大会最初のエスケープを成功させた。さらに7km地点でシリル・ルモワンヌ(クレディアグリコル)とミハイル・イグナチェフ(ティンコフ クレジット システムズ)の2人が合流すると、4人は順調に逃げを始めた。
この日のスタート前には、若干のルート変更が発表されている。ステージの総距離は167.3kmから176.3kmに増え、45kmの3級峠が取り消された代わりに84km地点に3級ウエルマ峠が組み込まれた。また最終25kmの2周回コースは1周回に減らされたが、周回コース自体の総距離はのびた。中間スプリントポイントに関しては、キロメートル地点は変わったが場所自体は同じ。そして1度目の中間スプリント地点が近づくと、逃げ集団のからマルチネスデエステバンが飛び出しをかけた。ボーナスタイム獲得のためだ。
昨ブエルタでは廃止され、今年のツール・ド・フランスでも採用されなかったボーナスタイム制度が今大会では復活。中間スプリントポイントでは1位6秒、2位4秒、3位2秒、ゴールラインでは1位20秒、2位12秒、3位8秒が与えられることになった。つまり前日のチームタイムトライアルでチームが2位に入り、マイヨ・オロのフィリッポ・ポッツァート(リクイガス)からわずか総合で8秒差につけるマルチネスデエステバンにとっては総合順位を上げる絶好のチャンス。第1中間地点は狙い通りにトップ通過を果たし、総合首位まで2秒差に縮めることに成功した。
マルチネスデエステバンの飛び出しのせいで分裂した先頭集団では、ルモワンヌとイグナチェフがゴールまで20kmを残してプロトンに吸収された。ロセンドだけはしばらく先頭に残ったが、157.7kmの第2中間スプリントポイントが近づくと、マルチネスデエステバンが再び飛び出しをかけた。ただし一時は4分15秒も引き離したプロトンはすぐ背後まで迫っており、しかも後方でも激しいアタック合戦が始まっていた。結局、マルチネスデエステバンの2度目の試みは失敗に終わり、新たに飛び出してきた選手に先を譲らざるを得なかった。
緩やかな起伏とカーブが延々と続く少々難解なステージ最終盤では、コフィディスやクレディアグリコル、フランセーズデジューなどのフランスチーム、さらにはヤロスラフ・ポポヴィッチ(サイレンス・ロット)といったリーダー級の選手が積極的に飛び出しを仕掛けた。ただしマイヨ・オロを守りたいリクイガス、そして今ステージのような軽い登りゴールで実力を発揮するパオロ・ベッティーニ擁するクイックステップが厳しいスピードコントロールを続けたため、最終盤のアタックはいずれも長続きすることはなかった。そして残り4km地点でプロトンは完全にひとつになった。
ところが残り1kmのアーチに突入する直前、再び調和は崩れる。ホアキン・ロドリゲス(ケースデパーニュ)が渾身のアタックを仕掛けたのだ。出し抜かれた他チームが必死の追走に力を費やす一方で、チームメイトの好プレイを引き継いでアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)は余裕を残して最終300m地点で一気にスピードアップ。「あれはバルベルデにしか出来ない芸当さ」(サストレ)、「本物の王者の勝ち方だ」(コンタドール)とライバルたちも惜しみない賞賛の声を上げたほどの見事な加速であっさりトップに躍り出ると、そのままゴールラインを先頭でこえた。
ツール・ド・フランスの第1ステージ“登りゴール”に引き続く、今ブエルタ実質的な開幕ステージの“登りゴール”勝利。後続には2秒差を付け、さらにゴールボーナスタイム20秒を手に入れたバルベルデは、区間勝利と共に総合リーダージャージ“マイヨ・オロ”とポイント賞ジャージをも獲得した。2006年ブエルタでは8日間、そして2008年ツールでは2日間に渡って総合リーダージャージを着用しているが、果たして今ブエルタでは何日間総合トップの座を守り切れるだろうか。
また逃げ切りを果たせなかったマルチネスデエステバンはコンビネーション賞を、昨ブエルタでは最下位145位で完走したロセンドは山岳賞ジャージを手に入れている。
●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)
ステージ優勝、総合首位
ステージはむしろスプリンター向けだったけれど、自分にも勝機があると分かっていた。ゴール地でボクを待っていてくれた2人の子供と家族にこの勝利を捧げたい。それからケースデパーニュの全チームメイトにも。彼らはステージを通して素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。ロドリゲスが残り1kmでアタックをかけて他チームをかき回してくれたから、ボクは非常にやりやすかった。ゴール前の登りはボクにとってパーフェクトだったよ。
今ブエルタでの目標はステージ優勝を上げて、マイヨ・オロを着用することだった。これはすでに達成されたから、他のステージ優勝を狙っていく。ジャージも守りに行くけれど、ボーナスタイム制度があるから難しいだろう。だって他のスプリンターたちとのタイム差は本当に少ないから。
最初のステージを勝って、リーダージャージを獲得したというのは、ツール・ド・フランスと同じ状況だね。でも同じミスは繰り返したくない。ツールでは自分をの力を過信しすぎていた。今は自分にあまりプレッシャーをかけたくない。
●ヘスス・ロセンド(アンダルシア・カハスール)
山岳賞
ハエンまで逃げ切れるかもしれない、と思っていたよ。でも結局は最終盤に吸収されてしまったね。登りでは本当に上手くやれた。今年のブエルタでは、去年よりはいい成績で終えたいと願っている。といっても去年は最下位だったから、ボクは他選手よりも上に行く余地がたくさんあるけどね。最下位については、自分では誇らしく思っているんだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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