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スタート地の気温は32度、一時は36度まで上がった。しかもスペイン南部はまるで砂漠のような荒涼とした大地に、オリーブの木が点々と並んでいるだけ。日差しをさえぎる木陰もなく、ひどい暑さの中、プロトンは体力消耗を避けてのんびりとペダルをこいだ。たった一人、スタート地ハエンで生まれ育ったマヌエル・オルテガ(アンダルシア・カハスール)を除いては。
地元アンダルシアの大地で、前日はアンダルシア・カハスールのヘスス・ロセンドが大逃げにトライ。山岳ジャージを獲得していた。この活躍に勇気付けられたチーム監督は、この日のスタート前、選手たちにさらなる任務を与えたそうだ。その任務とは“再大逃げ”と“山岳ジャージ保守”。そして本スタートの直後にオルテガが飛び出しあっという間にプロトンを突き放すと、見事に大逃げ任務を遂行した。その後スローペースのプロトンには、最大15分差を付けている。
後続プロトンが最初に動いたのは、第1中間スプリント地点。リクイガスが数人で飛び出すと、ダニエーレ・ベンナーティがオルテガに続く2位通過を果たす。さらに第2中間スプリント地点でも同様にリクイガスが集団で加速し、またしてもベンナーティが2位通過する。これにてベンナーティはスプリントポイントを2p×2回獲得し、ボーナスタイムも4秒×2回を計上。前日ステージ終了時点に13秒差で総合3位につけていたベンナーティは、この時点で首位のアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)に5秒差まで迫った。
第2中間スプリント地点の直後、選手たちはこの日唯一の山岳3級サン・ヘロニモへと取り掛かった。疲れの見え始めたオルテガが最後の力を振り絞って山頂を先頭通過。その後方では、ロセンドが3位通過で2ポイント獲得を成功させる。つまりアンダルシア・カハスールにとって本日2番目の任務“山岳ジャージ保守”も、ロセンドが無事に成し遂げた。またオルテガが山岳賞総合2位につけたため、ロセンドの「チーム内でできるだけ長く山岳ジャージを守りたい」という願いはしばらく叶えられるだろうか。
ただしサン・ヘロニモ峠で大いに存在感をアピールしたのは、現役世界チャンピオンのパオロ・ベッティーニ(クイックステップ)だった。登坂口から急速に加速をかけると、すでに2006年に勝利をさらっているゴール地コルドバへと向かってひとり飛び出していく。さらにゴール前20kmのアーチの下ではオルテガを追い抜き、単独トップに立った。ただしオルテガが「峠よりも、山頂を越えてからのアップダウンのほうが厳しかった!」と語っていたように、難しいルートでは思ったようにスピードが出ない。しかも後方ではイニーゴ・ランダルーチェ(エウスカルテル)の飛び出しにマイヨ・オロのバルベルデが反応したり、ツールで幾度となく“シャヴァネル風”飛び出しを仕掛けたシルヴァン・シャヴァネルが十八番の飛び出しを見せたりするたびに、徐々に集団のテンポが上がっていた。結局、ゴール前16km付近でオルテガが154kmの大逃げを終えると、まもなくベッティーニも集団内へと飲み込まれていった。
最終的に一塊になったプロトンは、時速60km超でコルドバ市街地へ雪崩れ込んでいく。きれいなチームトレインが形成されぬまま集団ゴールスプリントへと突入し、締めくくりはベンナーティ vs. トム・ボーネン(クイックステップ)の一騎打ち。昨大会で第1・最終ステージを含む3区間をもぎ取ったベンナーティが先行するも、後ろからボーネンが抜き去った。そしてツールでは区間通算6勝を上げているボーネンが、自身初めてのブエルタ勝利を手に入れた。
レース外薬物検査でコカインが検出され、ツール・ド・フランス出場を断然せざるを得なかったボーネンにとっては、最高の形でグランツール復活を果たすことが出来た。またこの日のスタート前には2ヶ月免停処分が告げられていたそうだが、勝利で嫌な気分を吹き飛ばすことが出来ただろう。また区間2位に終わったベンナーティは、中間ボーナスタイム8秒にゴールボーナスタイム12秒を加えて総合首位に立った。昨年第1ステージ後に続く、人生2度目のマイヨ・オロに袖を通している。
区間3位には38歳エリック・ツァベル(チーム ミルラム)が、コルド・フェルナンデス(エウスカルテル・エウスカディ)は4位でスペイン人として区間最高位に入った。スペイン期待の世界選手権3勝オスカル・フレイレ(ラボバンク)は区間87位。「未だ調子が100%ではないから、序盤ステージはスプリントに混じらないよ」とあらかじめ語っているため、この先の活躍に期待するとしよう。
●ダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)
総合首位
マイヨ・オロを獲得できて嬉しいよ。でも正直に言えば、ステージ勝利のほうが欲しかった。今後はステージ勝利を取りに行きたい。ボーネンはボクより強かったわけではない。何が起こったかと言うと、向かい風が非常に強くて、チームが大いなる仕事を強いられたんだ。それにボクの飛び出しも早すぎた。そしてボクの背後に控えていたボーネンに最後は追い越されてしまったんだ。
●トム・ボーネン(クイックステップ)
ステージ優勝
スペシャルな勝利だ。再びチームメイトと一緒に走ることが出来て、勝つことが出来て素晴らしい気分だ。今日のステージはすごく難しかったし暑かったけれど、勝つことが出来て本当に嬉しい。ゴール直前にチームメイトからのアシストがなくなった後、自分で決断を下さなければならないんだ。そして今日のボクはベンナーティの後ろに付くことを選んだ。つまりボクは正しい選択をしたということさ。
ボクは人生最悪の時期を過ごしてきた。でもトレーニングを積んできて、そしてボクがしっかり調整してきたことを証明することが出来た。これまでのブエルタには世界選手権の調整として乗り込んできたけれど、今のボクはかつてないほど調子がいいよ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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