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中継不可能なほどの雨雲に覆われた前日から一転、ピレネー3連戦2日目の今ステージは幸いにも好天に恵まれた。そして前日はチームオーダーで逃げ集団に入ることを許されなかったダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)が、この日は念願の逃げを打ち、見事な勝利を獲得した。
前ステージ、フランスTV生中継に電話出演したコフィディスのドロゥイユ監督は「シルヴァン・シャヴァネルのマイヨ・オロを守るため、逃げ集団に一旦入ったモンクティエに、プロトンに戻るよう指示をした」と発言した。しかしモンクティエの抜けた逃げ集団からアレッサンドロ・バッラン(ランプレ)がステージ優勝を果たし、しかもシャヴァネルはリーダージャージを失ってしまう。当然、フランスのファンやメディアからは“二重のミス”と批判の声が上がった。ただしモンクティエ本人は、前日の出来事に気を落としてはいなかったようだ。むしろ“アタックする自由”を手に入れて、意気揚々と飛び出しにトライしていった。
下りで始まった今ステージは、16km地点、1級カント峠への登り突入と同時にアタック合戦の火蓋が落とされた。前述のモンクティエはもちろん、プロトンからは数多くの選手が加速を切る。幾度となく飛び出しと吸収が繰り返され、最終的な逃げ集団が出来上がったのはようやく35km過ぎ。クリストフ・ケルヌ(クレディアグリコル)、ニキータ・エスコフ(ティンコフ クレジット システムズ)、セバスティアン・ジョリー(フランセーズデジュー)、フアンマヌエル・ガラーテ(クイックステップ)にモンクティエを加えた5選手は、後続に最高5分半ほどのタイム差をつけると、最後から2番目の1級ボネガ峠へまで順調に逃げを続けた。
うねうねと激しく蛇行する、全長19.7kmの長いボネガへの登りへ向けて、後方プロトンも徐々に加速を始めていた。そして登りが開始すると、アスタナやエウスカルテルがさらなるスピードアップ。集団は小さく千切れ始め、逃げ集団との距離も急速に縮み始めた。そしてタイム差がわずか2分程度しかなくなったとき、山頂まで5km地点でモンクティエは決死の単独アタック。2004年と2005年ツールで区間1勝ずつ勝ち取ったときと全く同様に、早めのアタックでひとりゴール地まで逃げ切る道を選んだ。
下りでは一旦ジョリーに追いつかれたが、最終プラ・デ・ベレへの登り口でモンクティエは再び独走態勢に。後方では表彰台争いの選手たちによる戦いが勃発したせいで、「最後の2kmまでは勝てるかどうか確信が持てない」状況だった。それでも山岳強者はゴールまで力強く走りきると、ガッツポーズで自らの勝利を喜んだ。プロ12シーズン目を過ごしている33歳ベテランが、生まれて初めて参加したブエルタで手にした初めての区間勝利。ケガや体調不良でほぼ2年間棒に振ってきたモンクティエにとっては、2005年ツール“革命記念日”優勝以来の勝利である。
後続メイン集団内では、「ボネガ峠の下りが少し寒かった。そのせいで最後の登り序盤でもたついてしまった」というカルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)がプラ・デ・ベレの登りで遅れ始めていた。しかも2008年ツールでは常に強力なアシスト陣に囲まれていたサストレだったが、今ステージはひとりのアシストも残っていなかった。この機を利用してサストレを引き離そうと、アスタナのリーヴァイ・ライプハイマーやホセルイス・ルビエラが集団先頭で加速を繰り返した。さらにはゴール前4.5km地点で優勝大本命アルベルト・コンタドール(アスタナ)が自らアタック!すぐに反応できたのはアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)だけ。さらにイゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)も遅れてコンタドールに合流した。
その後、コンタドールは何度も加速を繰り返すが、バルベルデとアントンは執拗についていく。しかもバルベルデは「世界最高峰クライマーであるコンタドールの走りについていくだけで限界」と、リレーに一切加わらない。一方のサストレは、登りで徐々に自らのテンポを取り戻し、コンタドール集団のすぐ後ろの集団に復帰した。結局、コンタドールとサストレの区間ゴールタイム差はわずか5秒。またスプリント得意のバルベルデに区間2位ボーナスタイム12秒も奪い取られてしまったため、区間3位のボーナスタイム8秒で満足するしかなかった。
総合ではサストレと同タイムでゴールしたライプハイマーが、再びマイヨ・オロに袖を通した。またコンタドールは総合4位から2位へ浮上。チームメイトの着用するマイヨ・オロまで21秒に迫った。前日のハンガーノックアウトで表彰台から遠ざかったかに見えたバルベルデは、表彰台圏内3位に復帰。総合4位サストレは首位から1分27秒遅れ、コンタドールと1分6秒差、バルベルデとは38秒差。もちろんグランツール3週目に強く経験豊富なサストレは「彼らは総合優勝のチャンスをひとつ逃した。まだ戦いはオープンだ」と決して自信を失ってはいない。
●ダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)
ステージ優勝
健康問題に悩まされて、空白の2年を過ごしてきた。レース復帰後、この大会で初めて、自分のレベルを本当の意味で取り戻したと感じていた。だから今日は、ボクのステージに出来ると確信していたんだ。でもギリギリの勝利だったね。ゴール前2km地点でようやく優勝できると実感できた。力づくでもぎ取った勝利。本当にスペシャルな勝利だよ。
●リーヴァイ・ライプハイマー(アスタナ)
総合首位
今後もコンタドールのために走る。コンタドールは他の誰も出来ないような山岳での加速を持っている。たぶん彼についていけるのは、好調な時のバルベルデだけだ。コンタドールはツールとジロを勝っているし、世界最高のクライマーなんだ。彼こそチームのナンバーワンキャプテン。
昨日と今日の最終峠はそれほど難しくなかったね。アングリル峠は一度も登ったことがない。アングリルは別世界なんだと意解しているけど・・・。まだ先は長いんだ。今は我々チームがリーダージャージを保持していて、ボクらがレースをコントロールしていくよう期待されている。やるべき仕事はたくさんあるさ。
●アルベルト・コンタドール(アスタナ)
総合2位
ライプハイマーが再びマイヨ・オロを手に入れて、本当に嬉しいよ。これこそチームが非常に強いことの証明だ。今日アスタナチームは素晴らしい仕事を成し遂げた。
唯一残念なのは、タイム差が未だほんのわずかなこと。誰も働いてくれなかった。バルベルデも、アントンも、リレーに加わってくれなかった。もしもバルベルデがもう少し協力してくれたら、タイム差はもう少し開いたはずなのに。どうして彼が協力してくれなかったのかわからない。サストレからリードを開ければ、彼にとっても有利だったのに。でもサストレから数秒獲得することが出来たし、結果として、努力は報われたんだ。
ピレネーは決定的な違いを生まなかった。スタート地で考えていた通り、アストゥリアスの山岳ステージと最終週のタイムトライアルがブエルタの優勝を決定することになるだろう。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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