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9日間のレースでマイヨ・オロの持ち主は全部で7人。2日連続でジャージを守ったのは第3・4ステージ後に表彰台に上がったダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)だけ。リーヴァイ・ライプハイマー(アスタナ)も2回マイヨを獲得したが、それぞれ1日ずつで手放しているため、結果的に今大会ここまで8回のマイヨ・オロ入れ替わり劇が行われたことになる。
ピレネーの難関から抜け出し、表彰台争いの選手たちが少し心と体を休めながら走った今ステージ、マイヨ・オロ入れ替わり劇の主役となったのはエゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)。第2ステージでは大会最初のエスケープを組織し、ボーナスタイムを獲得してマイヨ・オロまで暫定2秒に近づいたこともあった。ただしこの日の朝、マルチネスデエステバンと総合首位とのタイム差は6分41秒。53km地点から逃げ出した10選手を追いかけて後発アタックを打ち、60km地点で先頭集団合流に成功したとき、マルチネスデエステバンは果たしてマイヨ・オロ奪取が可能だと真剣に考えていたのだろうか。
ダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)は、山岳賞ジャージの奪取を真剣に狙っていた。前日の大逃げ優勝で自らの好調さを確信したクライマーは、あと10ポイント差に迫ったワインレッドのジャージを手に入れることに決めたようだ。序盤に2つ設定された山岳ポイント直前でスピードアップを見せ、2峠で計15ポイント獲得。早くも山岳賞トップに立つ。ただし目標を確実に達成すべく、さらに53km地点からの逃げ集団にも加わった。2日連続の大逃げにもかかわらず元気に走り続けたモンクティエは、後半2つの峠でも先頭通過。念願のジャージに袖を通したのはもちろん、2位以下に27ポイント差をつけたため、最低でもあと2日間は確実にジャージを保守できることになった。
マルチネスデエステバンとモンクティエを含む12人の逃げ集団は、のんびりと走るプロトンに最高6分半程度のタイム差をつけた。マイヨ・オロのライプハイマーを擁するアスタナがプロトン先頭で集団を常にコントロールし続けたため、ゴールまで40km近くになると徐々に両集団のタイム差は縮まり始める。いよいよ本格的な追走開始か・・・と思ったのもつかの間、再びタイム差は広がってしまった!ダヴィデ・レベッリン(ゲロルシュタイナー)、ダミアーノ・クネゴ(ランプレ)、フアンアントニオ・フレチャ(ラボバンク)、リナルド・ノチェンティーニ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)等、そうそうたる実力者を揃える12人のエスケープ集団は、固い協力体制でステージ終盤に差し掛かってもハイスピードを保っていたのだ。
結局、追いかけてももう無駄だと判断したのだろうか。ゴール前20kmのアーチをくぐる直前に、アスタナの選手たちはペダルを漕ぐ脚を緩めてしまった。これにて先頭集団は、区間優勝を争う許可をめでたく手に入れた。するとゴール前7km地点からめくるめく激しいアタック合戦が繰り広げられる。フレチャは矢のように飛び出し、クネゴはカウンターアタックを仕掛け、モンクティエさえも何度も後方から加速を試みた・・・。
睨み合いの蛇行から突然始まった最終スプリントでは、他選手の揺さぶりに決して動かなかったレベッリンが最初にトップ位置につける。ただし37歳の大ベテランをさらりとかわしてゴールラインを先頭で通過したのは、逃げ集団内最年少23歳のグレッグ・ヴァンアーベルマート(サイレンス・ロット)だった。大集団スプリントで終わった第3・4ステージでは、いずれも区間6位に入ったトップスピードの持ち主。自転車一家に生まれ、母国ベルギーでは将来のビッグクラシックハンターとして期待される若者が、グランツール初出場で早くも初勝利を計上した。
ちなみに最終盤の睨み合いで少々スローペースになったエスケープ集団を、マルチネスデエステバンやチームメイトのアラン・ペレスは何度も先頭で引っ張り上げた。ペレスはあまりに力を尽くしたため、先頭集団から千切れてしまったほど。なにしろ後方では、痺れを切らしたチーム CSC サクソバンクがプロトン先頭で加速を始めていたのだ。中間スプリントでボーナスタイム計10秒を獲得していたとはいえ、マイヨ・オロ獲得にはギリギリのタイム差しかなかった。
後方プロトン内のエウスカルテル選手達は、チーム一体となって減速作戦を敢行。ラスト1km近くの細いルートでは、なんと道幅いっぱいに広がってのろのろ走行さえ見せた。そして、涙ぐましい努力は見事に報われた。プロトンは先頭集団から6分42秒遅れでゴール。わずか11秒差で、マルチネスデエステバンの元に黄金ジャージがやってきた。優勝記者会見で本人も語っているように、まさに「チームみんなで勝ち取った勝利」だ。
マルチネスデエステバンが総合16位から首位にジャンプアップしたため、総合上位選手はそれぞれ順位をひとつずつ後退した。総合3位に後退したアルベルト・コンタドール(アスタナ)と4位アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)のタイム差28秒、バルベルデと5位カルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)のタイム差38秒に変化はない。
●エゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)
総合首位
マイヨ・オロは夢だった。何かものすごく大きなことだ。ボクにとってはステキな時だよ。それにエウスカルテルにとっては今年2つ目の大いなる喜びだね。サンチェスが五輪金メダルで素晴らしい喜びを与えてくれたけど、今はボクが、もうひとつの喜びをもたらしたよ。
でもボクが総合リーダーに立てたのは、今日は他の選手たちが少し体を休めたからなんだ。他チームがスピードを上げてこなかったし、それにボクもここまでのステージであまりたくさんタイムを失っていなかった。ボクはスター選手なんかじゃない。これはチームみんなで勝ち取った勝利なんだ。チームはこの先もコルド・フェルナンデスのスプリント勝利と、イゴール・アントンの表彰台を狙うために働いていく。ボクもアングリルではタイムをたくさん失うと思うから。
●グレッグ・ヴァンアーベルマート(サイレンス・ロット)
ステージ優勝
エスケープ内なら、ボクはスプリントが速い選手の1人だと自分でわかっていた。ただレベッリンとクネゴだけは警戒していた。それでも集団内でボクもしっかりリレーに加わった。体調が良かったし、自分にもチャンスがあると思っていたから。ステージ中はスプリントポイントも取りに行って、ポイント賞のことも少しは考えたけれど、でもステージ勝利のほうがもっと大切だね。キャリアで最も大切な勝利だ。ボクは根っからのベルギー人だから、この先の山岳ステージでは厳しくなると思うよ。
●ダミアーノ・クネゴ(ランプレ)
ステージ5位
チームのためにも、ボクのためにも、好成績を出せて嬉しい。ステージ前半は逃げ集団に乗るために全神経を集中させ、これに成功した。逃げ選手たちは上手く協力し合って、ボクもいい走りをすることが出来た。スプリントではレベッリンに気をつけていたんだ。最終カーブでは確かに理想的な入りが出来なかった。トップポジションで入れると思っていたからね。でもヴァンアーベルマートはあの場の誰よりも速かったんだよ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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