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パーフェクトな移動ステージ。ピレネーを完全に抜け、総合争いはつかの間の休息に入った。そんなブエルタ一行にこの日、ビッグニュースが飛び込んできた。ツール7連覇を果たし、2005年限りで引退したランス・アームストロングが、なんと来シーズンから現役復帰するという噂があるというのだ!
アームストロングは8月上旬にマウンテンバイク100マイルレースに出場し、3年ぶりの公式自転車レースにも関わらず2位に入った。なんでもビジネスの合間に、ハードなトレーニングを欠かさず行っているとのこと。ディスカバリーチャンネル時代の監督ヨアン・ブルイネール氏率いるアスタナや、アームストロングのマネージャーは噂を否定したが、噂の情報源ヴェロニュースによると9月末にアメリカで発売される雑誌で復帰宣言が行われるそうだ。ちなみに100マイルレース後、「カムバックする?」という質問に「もちろん!」とアームストロングは即答。・・・この場合は単純に、100マイルレースにまた出場する意思がある、という意味に違いないのだが。
肝心のブエルタのほうは、ようやくやって来た平地ステージでの勝利を狙って、序盤から数多くのアタックが繰り返された。37kmでようやく飛び出しに成功したのは、マテイ・ユルチョ(チーム ミルラム)たったひとり。今季スロバキア国内選手権ロード&個人タイムトライアルの両方を制した24歳は、その後プロトンとのタイム差を7分半程度まで開く。ただし過酷な山を乗り越えてきたスプリンターが、ようやく訪れた大集団ゴールのチャンスを逃すはずもない。ステージ中盤を過ぎるとスプリンターチームがプロトン先頭に立ち、激しい追走を始めた。
ユルチョを視界に捕らえたメイン集団内では、ラスト20kmのアーチをくぐった直後、相次ぐ飛び出しが巻き起こった。特に大会序盤を盛り上げたアンダルシア・カハスールや、チーム存続の危機にあるクレディアグリコルが次々と前線に選手を送り出す。しかしオスカル・フレイレ擁するラボバンクや、エゴイ・マルチネスデエステバンのマイヨ・オロ保守とコルド・フェルナンデスのステージ優勝を同時に果たしたいエウスカルテル・エウスカディが、飛び出しを厳しく取り締まる。さらにトム・ボーネン率いるクイックステップがトレインを作り上げてプロトン前方に居座り、集団スプリントへと向けて体制を整えていった。
ところが予想以上に早く、クイックステップトレインの人数が少なくなってしまった。すると付け入る隙が出来た前方から、ゴール前1kmでフィリッポ・ポッツァート(リクイガス)がアタック。そして今大会最初のマイヨ・オロの突撃は、セバスティアン・イノー(クレディアグリコル)の言葉によると、「有力スプリンターの動きをかき回した」。
この混乱に乗じてイノーはうまく先頭に飛び出すと、そのままゴールラインをトップ通過。前ステージでは24歳のグレッグ・ヴァンアーベルマート(サイレンス・ロット)がグランツール区間初勝利を挙げているが、今ステージは34歳の大ベテランが待ちに待った“個人”でのグランツール区間初勝利を手に入れた。1997年プロ入り後、クレディアグリコル一筋で走ってきたイノーにとっては、非常に大きな1勝となった。チームは消滅へのカウントダウンをたどっているが、イノーは未だ移籍先を決定していない。この勝利のおかげで、来季の行く先を見つけるチャンスは確実に大きくなったはずだ。同時に、この優勝を機に「未だスポンサー探しを諦めていない」と公言したチームにとっても、非常に大切な1勝だ。
また区間2位にはロイド・モンドリー(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)が入り、フランス勢がワンツーフィニッシュ。同じくフランス選手のダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)は、ステージ序盤の峠で5ポイントを加算し、山岳賞ジャージを危なげなく守った。
ヴァンアーベルマートは前日の区間優勝に続いて、この日はポイント賞の表彰式に登場した。今季ジロのポイント賞ダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)が体調不良のため今ステージ前にスペインを離れ、ブルージャージ争いは少しオープンになったばかりだった。この機を逃さずヴァンアーベルマートは第1中間スプリントを2位通過して2ポイント獲得。さらにはゴールスプリントで3位に入り、16ポイントを加算していたのだ。
もちろんマルチネスデエステバンは前日苦労して勝ち取ったマイヨ・オロをしっかり守り、複合賞のホワイトジャージはアルベルト・コンタドール(アスタナ)が着用している。
●セバスティアン・イノー(クレディアグリコル)
ステージ優勝
ボク個人としてはキャリア最高の勝利だね。。チームとしては2001年ツールで、チームタイムトライアルを勝っているよ。でもボーネンやフレイレを破ったのは初めてじゃないんだ。2004年のドイツツアーで1度、彼らよりも速くゴールに駆け込んだことがあるんだ。ポッツァートのアタックが、有力スプリンターたちの動きをかき回した。そこでボクはヴァンアーベルマートの背後に入ることが出来て、さらに加速を切って優勝することが出来た。
ボクらのチームはシーズン後の解散を余儀なくされている。この勝利が、チームマネージャーのロジェ・ルジェの新スポンサー探しの手助けになることを願っている。こんな風にチームがなくなるのは悲しすぎる。素晴らしいチームだし、いつだってボクらチームはいい戦いを見せてきた。チームメイトみんなが、今大会に高いモチベーションで臨んでいる。いい戦いを見せて、好成績を出すためにね。ステージ優勝はパーフェクトな結果だよ。
●エゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)
総合首位
サラゴサでは風が多いことはあらかじめ知っていた。そして予想通り横風が多かったし、スタート直後は非常にスピードが上がったから、ナーバスなステージだった。ボクらは1分だってリラックスすることが出来なかった。リーダージャージ初日を楽しむことなんて出来なかったよ。幸いにもサストレやコンタドールが風を利用した分断を試みたりしなかったから、その点は心配せずにすんだ。明日は少し、ジャージを満喫できるといいね。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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