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3日連続で表彰台争いはお休み。マイヨ・オロのアルベルト・コンタドールが所属するアスタナの監督が「明日の第19ステージはまだまだ要注意。それからもちろん第20ステージの山岳タイムトライアルもね。だから今日は体力を使わせないよ」と言っていた通り、総合トップ10選手は出来るだけ静かに1日を過ごした。
一方、山岳TT勝利を狙える脚を持つ選手や、マドリードゴールに照準を合わせるスプリンター“以外”の選手にとっては、第18、19ステージが実質最後の区間優勝のチャンス。右斜め前から強風が吹き付ける平原のど真ん中で、飛び出したい選手たちはスタート直後から延々と1時間にも渡ってアタック合戦を繰り広げた。加速に次ぐ加速で、恐ろしい向かい風にも関わらず1時間目の時速はなんと49.4km!そして50km地点を過ぎて、ついに18選手がエスケープをもぎ取った。
エスケープ集団には今ステージを最後にヴァレーゼへ旅立つという噂のパオロ・ベッティーニ(クイックステップ)を筆頭に、ポイント賞ジャージのグレッグ・ヴァンアーベルマート(サイレンス・ロット)、大逃げ得意のフアンアントニオ・フレチャ(ラボバンク)といった実力者たちが滑り込んでいた。ひとたび逃げが形成されるとプロトンは急激にテンポを緩め、アスタナがコントロールする先頭集団は最大8分半のタイム差を奪う。ただし前方には19分31秒遅れで総合17位につけるニコラス・ロッシュ(クレディアグリコル)が潜り込んでいたため、後続メイン集団内で焦りを感じ始める選手もいたようだ。特にオリヴェール・ザウグの総合10位の座を守るために、ステージ後半はゲロルシュタイナーがプロトン前方でスピードコントロールを行った。
相当早くから逃げ切り勝利を予想していたのだろうか。先頭集団は残り約45km地点から始まる3級レオネス峠の登りで、早くもステージ優勝に向けての飛び出し合戦に突入した。ベッティーニが仕掛けたのを皮切りに、エウスカルテルやクレディアグリコル、ケースデパーニュといった集団に2人ずつ送り込んだチームの選手が代わる代わるアタックを試みる。カルロス・サストレの忠実なアシスト、15回連続ブエルタ出場のイニーゴ・クエスタ(チーム CSC サクソバンク)や、もちろんフレチャも何度か加速。ただしスプリント勝負に持ち込みたいヴァンアーベルマートやベッティーニの追い上げが厳しく、アップダウンが多いルートでなかなか逃げは決まらない。
混乱状態の中からひとり、ゴール前5kmで大きく逃げ出したのはダビ・エレーロ(シャコベオ ガリシア)だった。第15ステージでも逃げ集団の“ノーマーク”を利用して同チームのダビ・ガルシアが区間勝利をさらったが、この日は残り1.5km地点でロッシュ、イマノル・エルビーティ(ケースデパーニュ)、ヴァシリ・キリエンカ(ティンコフ クレジット システムズ)の3人がエレーロを捕らえた。そしてゴール前500m、左への急カーブから始まる軽い上り坂で、ロッシュが最初にスプリントを切る。
今年8月のツール・ドゥ・リムザンでは第1ステージで逃げ切り優勝、第2ステージでは集団スプリントゴールで2位——優勝は日本の新城幸也——に入っているロッシュは、しかし「少し飛び出しが早すぎた」ようだ。続いて加速したエルビーティとゴールライン直前まで粘りあったが、フォトフィニッシュ(ゴール写真判定)にもつれ込むほどの僅差でエルビーティに勝利の判定が下された。エルビーティにとってはプロ入り4年目にして嬉しい初勝利。またチーム総合首位につけるケースデパーニュにとっては、今ブエルタ2勝目となる。
メイン集団は7分29秒差でゴール。「総合より区間優勝が欲しかった」とがっくり肩を落としたロッシュだが、中間ポイントでのボーナスタイム4秒×2とゴールボーナスタイム12秒を加算し、総合では17位から13位へとアップしている。
●イマノル・エルビーティ(ケースデパーニュ)
ステージ優勝
僅差での勝負だから、勝ったかどうかわからなかった。だから腕を上げることができなかったんだ。ボクにとってはプロ入り初勝利。グランツールで初勝利を上げられるなんて、僕にとってはとんでもないことだよ。でも少なくともこの勝利の半分は、逃げ集団のチームメイト、ガルシアアコスタのおかげだね。逃げ集団にはベッティーニのような非常に危険な選手が多かったけれど、ボクら2人はフィニッシュまで危険を省みずに追走を行ってきたから。
ボクのこれまでの努力が全て報われた。信じられないようなご褒美だよ。夢のようだ。この勝利をチーム、家族、そしてボクの勝利を喜んでくれる全ての人に捧げたい。
●ニコラス・ロッシュ(クレディアグリコル)
ステージ2位
総合順位をアップしようなどとは全く考えていなかった。今日と明日が大逃げ勝利の最後のチャンスだと思っていたから、逃げに乗ろうと最初から決めていたんだ。エスケープは実力者が多かったし、最終盤にものすごいアタック合戦が繰り広げられたから、非常に緊張感が多かった。しかもボクも何度もアタックを試みたから、最後は少し疲れていたのかもしれない。それにゴール前は少し飛び出しが早すぎた。でも勝負に絡めて満足しているよ。でも総合アップより、ステージ勝利が欲しかった。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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