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珍しく樹木が生い茂る道を突き進んだこの日は、お天気も良く、風もなく、絶好の戦闘日和。出走選手は3週間前の171人から第19ステージスタート時には133人にまで減り、いよいよ今ブエルタ最後の“直接対決”ステージを迎えた。
ある者は総合順位アップ、ある者は区間優勝の最後のチャンスを逃すまいと、選手たちは高速でスタートラインを飛び出した。序盤から逃げへの挑戦は幾度となく続く。十数秒ほどタイム差がついては、そのたびにアスタナが集団先頭でスピードアップして吸収する。ただし40km地点で最初の1級峠ナバセラーダの登りが始まると14選手が飛び出しを成功させ、ようやくアタック合戦に一旦終止符が打たれた。
逃げの14人中、4人がケースデパーニュ。こんな危険なエスケープ集団から、後方のアスタナはけっして目を離さなかった。マイヨ・オロのアルベルト・コンタドール(アスタナ)も先頭に立ってスピードコントロールを行い、最大1分半ほどしかタイム差を許さない。しかもケースデパーニュ先頭軍団の中には総合7位ホアキン・ロドリゲスが滑り込んでいたため、表彰台3つ目の位置を狙う数選手もアスタナへの協力を惜しまない。すると総合上位選手たちの高速走行のせいで、プロトンは完全に崩壊。ナバセラーダの山頂で前方に逃げる14人、追うメイン集団の20数人、そしてバラバラに千切れた数人ずつの選手・・・という構図が出来上がった。
第1中間スプリントポイントをケースデパーニュ3人が独占したあと、レースは2番目の1級峠ナバフリアへと突入。すでに逃げ集団とメイン集団の差は小さくなっていたが、さらに接近を早めようと総合3位カルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)がアタック。総合4位エセキエル・モスケーラ(シャコベオ ガリシア)も加速を見せ、山頂間近でメイン集団は先頭集団と合流を果たした。
少し大きくなったメイン集団からは、当初の14人逃げ集団に属していたジュリアン・ルベ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、ヴァシリ・キリエンカ(ティンコフ クレジット システムズ)、そしてケースデパーニュからダビ・アローヨが下りで再び飛び出していく。後方のメイン集団は平地でまた一回り大きくなったが、相変わらず集団内の最大勢力はケースデパーニュの6人。しかもチームメイトのアローヨが前方で逃げているにも関わらず、メイン集団前方で速度制御に勤しむ姿が見られた。
実はマドリード表彰台の夢潰えたアレハンドロ・バルベルデが、「名誉挽回への最終チャンス」と登り坂ゴールでのステージ優勝を狙っていたのだ。だからこそゴール前10kmで先頭がキリエンカとアローヨの2人に絞り込まれたあと、アローヨは一切の先頭交代を拒否し続けた。ところがここで誤算が生じる。2008年トラック競技世界選手権ポイントレースチャンピオンのキリエンカは、2日連続のエスケープにも関わらず逃げる脚がまったく衰えない。ケースデパーニュ軍団は思うようにタイム差を縮めることが出来ず、残り2kmでも未だタイム差38秒。ゴールまで続くきつい登りが始まるとバルベルデ自ら飛び出しを試みたが、先頭の2人を捕らえることはもはや不可能だった。
アローヨが後に「ちょっと彼はイノセントすぎたんじゃないかな」と振り返ったように、キリエンカはゴール前150mまでひたすら先頭で走り続けた。そしてバルベルデが優勝できなかった場合の“第2オプション”、つまりアローヨがゴール直前での加速を実現させると、もはやキリエンカはスプリントする気力さえ残っていなかった。第15ステージのアローヨはライバルと牽制しあっている隙に勝利をさらわれてしまったが、この日は2度と同じ過ちを繰り返すことなく、ついに嬉しいブエルタ初勝利を手に入れた。
また後続では第15ステージに牽制しあった仲間、ニック・ナイエンス(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)がバルベルデを出し抜いて3位ゴール。バルベルデは残念ながらゴールボーナスタイムを獲得することさえ出来なかった。また総合トップ10選手は全員バルベルデと同タイムのトップから11秒遅れで今ステージを終了し、総合争いに変化はなかった。ジャージ争いに関してはマドリードまであと2ステージ残して、ダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)が山岳賞を確実なものにしている。
●ダビ・アローヨ(ケースデパーニュ)
ステージ優勝
1日中チーム一丸となって働いてきたから、最後は勝てるかどうか確かに少し怖かった。慎重に行く必要があったね。だから勝利を手に入れることが出来て本当に満足している。ボクにとっては非常に大切な勝利だ。
今日のチーム戦術は、バルベルデでステージ優勝を狙うというものだった。ゴール前の地形が非常に彼向きだったから。それに今大会は明日の個人タイムトライアルと、マドリードへのいわゆるサイクリングステージしか残っていない。だからチームがバルベルデに勝ちをもたらすことが出来るのは、今日が最後のチャンスだった。だからステージ序盤からステージをコントロールしていった。
キリエンカは最終盤、少しイノセントすぎたんじゃないかな?なにしろボクを最後まで引っ張って行ってくれたんだからね。もちろん彼は何度も先頭交代してくれるように頼んできたけれど、ボクは彼に説明した。これはチーム戦術であり、チームは後ろでバルベルデの勝利のために引いている、ボクは決して先頭交代することは出来ない、と。でもボクら2人がゴールまで先頭でたどり着いた。その場合にボクがすべきことはゴールスプリントだったんだ。そしてボクは加速して、成功した。まるでプレゼントのような勝利だよ。満足だ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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