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サイクル ロードレース コラム 2008年9月21日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2008】第20ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2008年ブエルタ最後の決戦、そして今季3大ツール最後の戦い、17.1kmの山岳個人タイムトライアル。アルベルト・コンタドール(アスタナ)が史上5人目の3大ツール全制覇を達成する歴史的瞬間を目撃しようと、山道には大勢のファンが詰め掛けた。そして全131選手中で最後にスタートしたコンタドールが最大9%の坂道を登り切った瞬間、2007年ツール、2008年ジロに続く3つ目の栄光が訪れた。

強い日差しが照りつけたこの日、おそらく総合下位の選手たちの心は、すでにマドリードに飛んでいた。大多数の選手が完走だけを考えてマイペースで走ったため、特別な番狂わせもない。131人中19番スタートのクリストフ・ケルヌ(クレディアグリコル)が約1時間に渡って暫定1位を守り続けた後は、数人ずつ1位の座が入れ替わっていく。そして総合21位のアンドレアス・クレーデン(アスタナ)が暫定トップタイムでゴールラインを駆け抜けると、ここから区間勝利と総合順位争いのサスペンスが始まった。

マイヨ・オロのアルベルト・コンタドール、そして2位リーヴァイ・ライプハイマーの“指針”となるべく走ったクレーデンのタイムを最初に越えたのは、最後から12番目に出走したマルツィオ・ブルセギン(ランプレ)。今季はジロ総合3位、ツール総合27位で完走しているTT巧者は、1週間前に「もしも総合10位に入れそうならブエルタも完走したい」と述べていた。そして目標を見事に達成する素晴らしい走りを見せて、ステージは8位。総合では10位にジャンプアップしている。また山岳賞をすでに確定しているダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)は、“山岳王”の名に恥じない走りを見せ、区間5位で総合9位から8位へと順位を上げた。

前日は狙っていた区間勝利とボーナスタイム獲得を逃してしまったが、総合6位でスタートしたアレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)は総合5位への上昇を成功させた。しかも序盤から攻めの走りを行い第2中間計測地点を1位通過すると、暫定1位でゴールラインに飛び込んだのだ。残念ながら2つの中間地点で圧倒的なトップタイムを叩き出したライプハイマーに区間勝利はさらわれてしまったが、ゴール後のバルベルデは終始笑顔を崩さなかった。実はこの日にツール・ド・ポーランドが最終日を迎え、その結果、バルベルデの2008年度UCIプロツール総合優勝が確定していた。シーズン通しての成績が求められるプロツールで2006年に続く2度目——そしておそらくプロツール史上最後——の優勝は、バルベルデ本人にとって満足のいくものだったに違いない。またチームメイトのホアキン・ロドリゲスも総合7位から6位へ成績をひとつ上げ、ケースデパーニュはチーム総合首位を守った。

“モスケーラ、表彰台”との横断幕も沿道に掲げられていたが、エセキエル・モスケーラ(シャコベオ ガリシア)は区間6位で総合4位フィニッシュ。また2007年ツール勝者カルロス・サストレ(チーム CSC サクソバンク)は、チームマネージャーのリースとの確執の噂で難しい時を過ごしているが、無事ブエルタ3位の座を確保している。

そして総合トップ2を独占するアスタナの2人が、今ステージでもワンツーフィニッシュを決めて大団円の終わりを迎える。総合2位のライプハイマーは2位以下を31秒突き放す堂々たる走りで区間優勝をさらい、総合首位のコンタドールは「調子が悪かった」と語りながらもバルベルデと同タイムの区間2位に入った。コンタドールはゴールラインで小さくガッツポーズ。ゴール後にはマドリード郊外に住む家族や恋人と抱き合い、優勝の喜びを分かち合った。もちろん2選手は山を降りずにゴール地で待ち構えていたチームメイト全員と固く握手を交わし、3週間の努力をいたわりあった。

2008年ブエルタも最終第21ステージ、102.2kmのマドリードへの“凱旋”ステージを残すのみ。コンタドールは日曜日の午後にサイクリングを楽しんだ後、何の問題もなければ、アンクティル、メルクス、ジモンディ、イノーという往年の名選手と並んで3つのグランツールを全て手中に収めることになる。2007年7月29日に最初のグランツールタイトルを手に入れてから、わずか14ヶ月後のスピード快挙である。


●リーヴァイ・ライプハイマー(アスタナ)
ステージ優勝、総合2位

コンタドールから1分17秒取り戻してブエルタ総合優勝したいなどと、決して考えなかった。ただ今ステージの優勝が本当に欲しかった。そのことだけに集中していたし、コンタドールのための最高のタイム指針になれたらと思って走った。

ボクはなんのプレッシャーも感じていなかった。かなりリラックスしていた。一方のコンタドールは大本命選手だし、スペイン人だし、これはスペイン一周なわけだし、ファンからの期待も大いに背負っていたはずなんだよ。母国のグランツールを、3つ目のグランツールを勝って欲しい、という期待だね。これがボクと彼との大きな違い。だからコンタドールは総合優勝に値する選手だよ。彼はここぞという場面で素晴らしいパフォーマンスを見せた。アングリルでは彼がベストだと証明した。ここに一切の議論の余地などない。

アスタナにとって最も大切なことは、ボクらがワンツーフィニッシュを果たしたこと。チームが世界最強だと証明して見せたこと。僕らは初日から賢くレースをコントロールし続けた。コンタドールは大本命であり、誰もがボクらチームがレースコントロールすることをう期待していた。そしてボクらはそれを成し遂げた。しかも優勝だけではなく、2位の座も勝ち取ったんだよ。


●アルベルト・コンタドール(アスタナ)
ステージ2位、総合首位

今日はスタート直後から調子があまりよくないと感じていたから、ステージ優勝を取りに行くのではなくて、総合首位を守りに行くための走りを行った。今ブエルタを勝ち取ることが出来て本当に誇らしく思っている。ツールに出場不可能だと知らされた2月から、ブエルタこそがボクにとってのシーズン最大目標だった。このせいでストレスも感じたけれど、目標を達成したときというのは、言葉では表現できないような気分を感じるんだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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