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サイクル ロードレース コラム 2009年7月6日

【ツール・ド・フランス2009】第2ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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第1ステージ終了直後の通り雨がモナコの町を濡らしたせいで、涼しく快適な夜を過ごせた選手が多かったに違いない。ただし一夜明ければ、またしても強烈な南仏の太陽がツール一行を照りつけた。選手たちが現地入りしてからすでに4日近く、連日30度超の暑さが続いている。おそらく、この先もずっと熱波は続くのだろう。2009年ツール・ド・フランスの地中海岸巡りは、まだまだ始まったばかり。

モンテカルロのゴージャスなカジノ広場で開幕公式セレモニーを終えた180人のプロトンは、今ツール初の一斉スタートステージへと走り出していった。そして第96回ツールの記念すべき最初のアタックをかけたのは、サミュエル・ドゥムラン(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)。昨大会では第3ステージの大逃げで嬉しいツール初区間優勝を決めた「リトル・ビッグマン」だったが、この日のアタックは長くは続かず。その代わりにツール序盤の大逃げ常連でありチームメイトのステファヌ・オジェが、スタフ・クレメント(ラボバンク)、シリル・デッセル(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、ユッシ・ヴェッカネン(フランセーズデジュー)と共に今大会初の本格エスケープに乗り出した。

ツール・ド・フランス初日「名物」とも言える山岳賞ポイント収集に動いたのは、ヴェッカネンだった。この日登場した4つの峠のうち3つを先頭通過。9ポイントを拾い集めて、アルベルト・コンタドール(アスタナ)から赤玉ジャージを奪い取った。ただし一時は5分半ほど開いたメイン集団とのタイム差は、ステージの終わりが近づくにつれて、徐々に縮まっていく。もうひとつのツール初日名物である大集団ゴールスプリントへ向かって、後方集団が強烈な追い上げを開始したのだ。

プロトン前方で加速を強いたのは、今季序盤から「マイヨ・ヴェール獲り」宣言を出しているマーク・カベンディッシュ率いるチーム コロンビア・ハイ ロードと、すでに2005年に緑ジャージをパリに持ち帰っているトル・フースホフト擁するサーヴェロ テストチーム。もちろんマイヨ・ジョーヌのファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)と、彼を取り巻くチームメイトたちの姿も見える。

スキル・シマノも前方で存在感をアピール。現在好調のスプリンター、ケニー・ロバート・ファンヒュンメルを前方の好ポジションへと引き上げようと、別府史之も大いに奮闘する。大逃げ王ミハイル・イグナチェフ(チーム カチューシャ)が得意の大逃げではなく、最終盤に果敢にひとりアタックを打ったときにも、他チームの選手と共に集団のスピードアップに励む別府の姿があった。「最終盤はかなり引いたので、後ろを振り返ったら、チームメイトが誰も残っていなかったときさえあったんですよ!」と別府。「とにかく集団ゴールでは、スプリンターをいい位置まで連れて行ってあげるのが仕事。今日のような走りが続けていけたらいいと思っています」。

10kmのアーチを潜り抜けた直後に4人の逃げを捕らえ、残り5kmを切ってイグナチェフも飲み込んだプロトンは、そのまま大集団スプリントへと向かっていく。と、ゴール直前に待ち構える意地悪なカーブで、落車が発生。多くの有力選手がここで思わぬ遅れを取り——ファンヒュンメルはポジションを失い、トム・ボーネン(クイックステップ)は小さなアジア選手に欲しかった位置を奪い取られて——、一方で隙間を見つけて前方へと飛び出していった選手も存在した。

新城幸也(Bbox ブイグ テレコム)もそのひとり。チームエースのトマ・ヴォクレールに引かれ、フースホフトの元牽引役ウィリアム・ボネに導かれ、初めて参加したツール・ド・フランスの初スプリント合戦に混ざると……なんと区間5位の成績をもぎ取ってしまった!「体調はすごくきつかったんです。でもたまたま自分はいい位置にいて、チャンスが巡ってきた。でも5位ですから、祝福なんてしないでくださいね」と本人はコメントするが、チームマネージャーのジャンルネ・ベルノドーは「初めてのツールスプリントで、あっさり上位に入ってしまった!彼は自転車レースのやり方をしっかり理解している。そして強い」と興奮を隠せない。

肝心のステージを制したのは近頃「現役最強スプリンター」の呼び声高いカベンディッシュ。2位のタイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)に車体3つ分の差をつけたほどの圧勝だった。これでツール通算5勝目、グランツール通算10勝目と共に、、早くも念願のマイヨ・ヴェールも着用。満足気な表情で「この暑さだって、緑に包まれていれば乗り越えられるさ……」と語っていたが、それでは山の難関も、マイヨ・ヴェールを着ていれば最後まで乗り越えられるだろうか!?

マイヨ・ジョーヌと新人賞ジャージの持ち主(ファビアン・カンチェッラーラとロマン・クルイジガー)に変動はなかった。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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