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顔も背格好もまるで異なるフェイユー兄弟(アグリテュベル)。今ツール第2ステージでほんの間近を通った南仏フレジュスにて、長らく一緒にトレーニングを積んできた2人だが、脚質もかなり異なる。兄ロマンは「パンチャー・スプリンター系」。今ツール第2ステージでスプリント区間3位に入り、昨ツールには大逃げでマイヨ・ジョーヌを獲得したことでおなじみだ。一方、弟のブリースは痩せ型で背が高く、どちらかというと「山も登れるルーラー」。今シーズン序盤に兄の所属するアグリテュベルへ合流し、プロ入り1年目にしてツールへの初出場権を手に入れた。……そして、早くも区間優勝さえも手に入れてしまった!
曇り空のバルセロナを抜け出したプロトンから、まずは8km地点で3選手が逃げ出した。そこに34km地点で、ブリース・フェイユーを含む6選手が合流。計9人となったエスケープ集団は、起伏の少ないステージ前半に少しでもタイム差を稼ごうとドンドン先を急ぐ。そのおかげで55km地点では、プロトンとのタイム差は14分20秒にまで開いた。
ゴール前34.5km、モナコ公国、フランス、スペインに次いで今ツール4カ国目となるアンドラ公国にたどり着いたときも、9人は11分ものリードを保っていた。山頂フィニッシュ地である超級峠アルカリスの登坂口(ゴール前10.6km)でも、まだ6分もの差があった。そして長距離の逃げと、ハードな登りに苦しんで少しずつ脱落していく逃げの友を尻目に、ブリースはラスト5km地点で優勝への最後のアタックを決めた。
実はこのツールでの区間勝利がなんと、ブリースのプロ入り初勝利。アマチュア時代の最後の勝利は、今から11ヶ月前のバロン・ダルザス(やはり山岳だ)での快挙に遡る。そして弟の勝利を目を潤ませて喜んだ兄ロマンは、最終グルペットに乗って28分29秒遅れでステージ終了している。ちなみに今ツール最終日の7月26日に、24歳の誕生日を祝うことになる。ひとつ年上の兄ロマンはツール2回参加で2回とも無念の途中棄権に終わっているが、今年こそは兄弟力を合わせて、パリのシャンゼリゼへとたどり着きたい。
勇敢な若者のアタックが決まった背後では、老練の士たちによる完璧なるプロトン制御が行われていた。ブルイネルとランス・アームストロングの豊富な経験と叡智を集約したアスタナトレイン——しかもチームさえ変われば誰もが絶対的リーダー格、という層の厚すぎるトレインだ——が、メイン集団のコントロール権を完全に掌握。セルジオミグエルモレイラ・パウリーニョが延々と先頭で牽引し、続いてアイマル・スベルディアが黙々と前を引き、ヤロスラフ・ポポヴィッチがさらに続き……。その背後にはアームストロング、アルベルト・コンタドール、アンドレアス・クレーデン、リーヴァイ・ライプハイマーという4人のリーダー格がしっかりと控えた。
この強烈な組織に、誰が立ち向かうことなどできただろうか?マイヨ・ジョーヌ姿のファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)はゴール前7kmほどまでメイン集団で粘り続けたが、水色列車から振り落とされてしまった。表彰台候補の中では唯一、カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)がアスタナ全員を敵に回してアタックを仕掛けたが、あっという間に飲み込まれてしまった。「後悔だけは絶対したくないから、全力で攻撃する」と事前に決めていたそうだから、後悔はしていないのだろう。そしてゴール前3km、アスタナトレインの中からひとりのリーダーが、まるで弾丸のように飛び出していった。
目の覚めるようなアタックを決めたのは、昨年ジロとブエルタの2グランツールを制したコンタドールだった。文字通り一瞬で全てを置き去りにして、ゴール地まで軽々と駆け上っていく。その背後ではアームストロングとライプハイマーが、アンディ・シュレク(チーム サクソバンク)やエヴァンスにピタリと張り付き、先を行くチームメイトへ加勢し続けた。「アスタナの絶対的リーダーはいったい誰なのか」の答えを解析する鍵が、見えた瞬間だったのかもしれない。
おなじみの射撃ポーズ(優勝時や表彰台でのポーズ)こそ見られなかったものの、コンタドールはあらゆるライバルから21秒リードを奪い取った。表彰台候補としては総合トップにも立った。残念ながらわずか6秒差で、大逃げのリナルド・ノチェンティーニ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)にマイヨ・ジョーヌはさらわれてしまったけれど。もちろん「コンタドールvsアームストロング」の構図から、「コンタドール=リーダー」の図式へと移行したと断言するには早すぎる。ツールはまだ3分の1を終えたばかり。総合2位コンタドールと、3位アームストロングのタイム差は、ほんの2秒しかない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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