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ひどく暑い一日。日差しは肌に突き刺すように痛い。空気の気温は35度近くまで上がり、選手たちが走るアスファルトの温度は56度にまで達した。これはツール・ド・フランスが道路の温度計測を始めて以来、2003年ツール第12ステージの61度に次ぐ2番目の記録。急遽、散水車が数台用意され、ルート上の温度を下げるために水がまかれた。ただし別府史之(スキル・シマノ)が「でも水はすぐに蒸発しちゃって、モヤモヤと湯気が上がって暑かった」と証言してくれたように、十分な冷却効果がもたらされたのかどうかは不明なのだが。
暑い上に、アップダウンが多く、しかも211.5kmという長距離ステージ。こんな三重苦にも関わらず、多くの選手が区間勝利のチャンスを狙いに行く。スタート直後からアタックにカウンターアタック、それを潰す動きが出て、またアタック、さらにアタック……。延々と続く飛び出し合戦が繰り広げられ、序盤1時間の時速は47.8kmにまで上がったほど。
高速化の原因のひとつに、中間スプリントポイントにおけるマイヨ・ヴェール争いも上げられるだろう。32km地点の第1ポイントで、ポイント賞首位のマーク・カベンディッシュ(チーム コロンビア・ハイ ロード)と2位トル・フースホフト(サーヴェロ テストチーム)が火花を散らす直接対決。マイヨ・ヴェールを身にまとうカベンディッシュが1位通過に成功し、2位フースホフトとのポイント差をさらに突き放した。総合争いの選手たちが高速の波に乗ろうと試みたのも、極度のスピードアップをもたらした。なにしろカデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)、アンディ・シュレク(チーム サクソバンク)、カルロス・サストレ(サーヴェロ テストチーム)という顔ぶれが揃って一瞬前に飛び出したのだから、アスタナが猛追をかけたのも当然だろう。
これほどまでにめくるめくアタック合戦は、75km地点で、ようやく打ち止めとなる。シルヴァン・カルザッティ(アグリテュベル)、ローラン・ルフェーヴル(Bbox ブイグ テレコム)、レミ・ポリオル(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)のフランス人3選手に、現時点で山岳賞ジャージを着ているエゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)、今ジロ3位のフランコ・ペッリツォッティ(リクイガス)、マークス・フォーテン(チーム ミルラム)、そして最後にニキ・セレンセン(チーム サクソバンク)が加わって、7人が逃げ集団を作り上げたのだ。そして一旦エスケープが決まってしまうと、後方プロトンは緩やかに減速。スプリンターチームたちもすっかり追走を放棄し、タイム差コントロールはマイヨ・ジョーヌ擁するアージェードゥゼール・ラ・モンディアルが一手に引き受けることになった。
順調にタイム差を開いてきた7人の逃げ集団が、区間優勝に向けて動いたのはゴール前23km。「あの残り距離で飛び出すことは、あらかじめ決めていた」とゴール後に語ったセレンセンが、一気に前へ飛び出した。反応できたのはカルザッティのみ。置き去りにされた5選手が、わずか10秒ほど後ろで必死の追走を企てる。ところがゴールまであと5kmを示すアーチの手前で、セレンセンはさらにアタック。今度はカルザッティも振り切り、たった1人先頭に立つと、まるで個人タイムトライアルのように自身初のツール区間優勝へ向かってひたすらペダルを踏み続けた。
忠実なアシスト選手として名高い34歳の大ベテランは、こうして「自分のカードを切りに行ける数少ないチャンス」を確実に手に入れた。翌日からルートの起伏が激しくなれば、セレンセンはチームメイトの総合候補シュレク兄弟のために、再び地味な裏方役に徹するのだろう。ちなみに追走集団とのタイム差が気になって、ゴール前ギリギリまで勝利の喜びを味わうことなど出来なかったそうだが、ツール初勝利の記憶は一生モノ。「むしろ墓場まで持って行きたいね」と語るセレンセンのうれしそうな顔と言ったら!
残りの逃げ選手は、セレンセンから48秒遅れでゴール。5分58秒遅れで到着したプロトン内では、再びカベンディッシュvsフースホフト対決が勃発し、またしても「カヴ」がライバルを一蹴した。そしてノチェンティーニは無事に6枚目のマイヨ・ジョーヌを手に入れた。イタリア人選手としては、偉大なる先人、マルコ・パンターニとマリオ・チポッリーニと並ぶ記録である。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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