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果たして一体誰がボスなのか……?その答えはどうやらスイスで見つかったようだ。ヴェルビエへの山頂へ向けてアタックを決めたアルベルト・コンタドール(アスタナ)が、おなじみの射撃ポーズで、アームストロングvsコンタドール論争に終止符を打った。わずか5.5kmで1分35秒を失ったランス・アームストロング(アスタナ)は、「この先はコンタドールのために働く」とゴール地で断言。もちろん、コンタドールはアスタナ内のボスだけでなく、2009年ツール・ド・フランスの「ボス」の地位——マイヨ・ジョーヌ——も獲得した。
今大会2度目の山頂フィニッシュステージは、山岳賞1位フランコ・ペッリツォッティ(リクイガス)と山岳賞2位エゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)の山岳ポイント収集合戦から始まった。ステージ3つ目の峠まで、両者は激しいポイント争いを繰り広げる。この直接対決はペッリツォッティが余裕で全勝(1位、1位、2位。マルチネスデエステバンは3位、3位、3位)し、大会2日目の休養日を赤玉ジャージで過ごす権利を手に入れた。
ペッリツォッティはそのまま逃げ集団を作ろうと試みるも、メイン集団はそれを許さなかった。スタートから55km過ぎでひとつにまとまった集団から再びアタック合戦が始まると、ついに10人がエスケープ集団を作り上げた。その中には、母国スイスにスイスチャンピオンジャージで乗り込んだファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)の姿も! さらにはゴール前約20km地点で、逃げ集団からひとり、シモン・スピラック(ランプレ・N.G.C)がゴールへと飛び出しを図った。今ツールここまでタイムトライアルを除く全12ステージ中、なんと7ステージも大逃げ勝利が決まってきたが、さすがに今ステージは後方で総合本命たちが動き出した。
アスタナトレインが強烈な牽引を行い、リクイガスも集団前方に選手を配置。さらにヴェルビエへの登坂口へ向かうわずかな平地では、チーム サクソバンクが猛スピードで集団を千切り始めた。1年前にチーム サクソバンクの前身チームCSCが、全ての難関山岳ステージで、プロトンをズタズタに分断した記憶が蘇る。ただし、まさにこのチーム サクソバンクの攻撃を打ち破るために、コンタドールは飛び出しをかけたのだ。「本当はゴール前3〜4kmほどの地点で飛び出そうと考えていた。でも状況が状況だから、予定より早くアタックをかけた」
ひとたびコンタドールが飛び出すと、もはや誰も何も出来なかった。アンディ・シュレク(チーム サクソバンク)がすぐに後を追い、弟の援助に兄フランクが向かい、カルロス・サストレ(サーヴェロ テストチーム)やヴィンチェンツォ・ニバリ(リクイガス)も追走に加わったが、若き3大ツール勝者はいつも通りに軽やかに高みへと上って行く。「毎日難しいときを過ごしてきたボクは、このステージで解放された」。峠で己のパワーを解き放ったコンタドールは、ゴール後の表彰式でも、あらゆる喜びの感情を解き放った。
一方のアームストロングはアンドレアス・クレーデン(アスタナ)と2人、変わらぬテンポで静かに山を登る。追わなかったのか、それとも追えなかったのか。真実はこの先のステージで見えてくるかもしれない。なにしろコンタドールから未だ1分37秒の総合2位。ツール7連覇の大チャンピオンには、まだまだ復活逆転優勝の可能性も残っている。
翌日は今ツール2回目の休養日。最終週の戦いを無事に乗り越えるために、選手たちはスイスアルプスで静かなひと時を過ごす。
●アルベルト・コンタドール(アスタナ)
ステージ優勝、マイヨ・ジョーヌ
今日のボクは出来ることをやっただけ。マイヨ・ジョーヌを手に入れることが出来て満足している。アームストロングに勝てたことよりも、他のライバルたちに勝てたことが嬉しい。アームストロングを置き去りにしたことなんか、それほど重要なことじゃないんだよ。むしろ全てのライバルを置き去りにしたことが大切なんだ。
ツールはまだ終わってなんかいない。今日は確かに大きなタイム差をつけたが、これから厳しい3週目が待っている。多くのアタックが巻き起こるだろう。自分の調子がどんなに良くても、常に小さな不安はある。だって他にもっと調子がいい選手がいたら終わりだからね。だから常に不安がつきまとうんだ。
(ゴール後にアームストロングが「3週目はコンタドールのために働く」と発言したことに対して)彼がそう言ってくれたなんて、非常に光栄なことだよ。アームストロングは非常にプロフェッショナルな人間だ。今後はチーム全体がボクのために働いてくれるだろう。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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