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159kmという短距離に、大きな山が2つ。上って下りて、上って下りる。そんな単純で、しかしとびきり難易度の高いステージで、スタート直後から19人が飛び出した。大部分は、パリまで6日に迫って、未だステージ優勝を追い求める選手たち。中には区間優勝をもちろん狙いつつ、山岳ポイント収集にも熱を入れるフランコ・ペッリツォッティ(リクイガス)の姿もあった。
第9ステージで大逃げの果て区間2位に入り、第13ステージ後に赤玉ジャージを身に付けてからも、ペッリツォッティは連日のように大小の逃げを見せてきた。この日も最初の超級グラン・サン・ベルナール峠の麓で、ウラディミール・カルペツ(チーム カチューシャ)を伴って、エスケープ集団からさらに前へと飛び出していく。20kmほど2人で黙々と上り続けた後は、予定通りに先頭で山頂通過。20ポイントとツール創始者を記念するアンリ・デグランジュ賞を手に入れて、しかも先頭で母国イタリア入国を果たす!この日2番目の、そして最後の「小さなセントバーナード峠」プティ・サン・ベルナール峠でも、逃げの友の顔ぶれこそ変わったものの、ペッリツォッティはしっかりとトップ通過で30ポイント獲得。2009年ジロ最終日のローマでは総合3位の表彰台に上がったが、今ツールのパリでは山岳賞表彰式に挑めるだろうか?ちなみに2位エゴイ・マルチネスデエステバン(エウスカルテル・エウスカディ)とのポイント差は、第16ステージ終了時点で58。第17ステージだけで最大85ポイント収集可能なため、まだまだ安心はできない。
そのペッリツォッティと共に、山頂からゴールへと超高速ダウンヒルを行ったのはユルゲン・ヴァンデンブロック(サイレンス・ロット)、ミケル・アスタルロサ(エウスカルテル・エウスカディ)、そしてアマエル・モワナール(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)。その背後には4選手が急激な追い上げをかけてくる。まさに秒単位の追いかけっこ。ほんの15秒程度のわずかなタイム差が延々20km近くもまるで変化しないという、恐ろしいサスペンスが繰り広げられた。
このプティ・サン・ベルナールからの急降下中には、スタート直後からのエスケープ集団に乗っていたイェンス・フォイクトの落車事故も発生した。頭部や体のあちこちを激しく地面に叩き付け、一時は意識も失ったようだ。ヘリコプターで救急病院に搬送されたフォイクトは、この先、全身スキャンを受ける予定となっている。
4人vs4人の猛烈な追いかけっこの均衡が崩れたのは、ようやく残り3km地点になってから。後ろの4人が徐々にタイムを縮めてきたのを感じたモワナールが、全力を尽くしたアタック。それをアスタルロサが見事なカウンターアタックで切り返すと、あとはひたすら1人先頭でペダルを踏み続ける。そして後方にわずか6秒差を付けてゴールラインを横切ると、喜びの感情を大きく爆発させた。ゴール後に流暢なフランス語で何度も繰り返したように、これまで29年8ヶ月生きてきたアスタルロサにとって「人生最高の日」となった。
2日前のヴェルビエ山頂でついに権力をつかみとり、新たにマイヨ・ジョーヌを着て登場したアルベルト・コンタドール(アスタナ)は、ライバルたちのアタックに翻弄されることなく1日を終えた。アンディ&フランク・シュレク(チーム サクソバンク)は兄弟アタックがまたしても徒労に終わり、昨ツール覇者カルロス・サストレ(サーヴェロ テストチーム)はコンタドールと同グループでゴールするだけで精一杯。休養日に「敗北宣言」を出したカデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)はアシストのヴァンデンブロックを前に送り出し、本人は総合の「元」ライバルたちから3分近く遅れてゴールへたどり着いた。
コンタドールにとって最大の敵ランス・アームストロング(アスタナ)は、プティ・サン・ベルナールの登りで1人後方に取り残されてしまう場面も。しかしダンシングスタイルでなんとかスピードアップし、コンタドール集団への居場所を取り戻した。「加速したとき、ひどく年をとったような気がした」と本人は語りつつ、「でも、このガキどもに負けない走りができると悟った」のだとか。ならばプロフェッショナリズムに徹してコンタドールをサポートしつつ——両者の人間としての関係は冷え切っているが——、この先につながるいい走りを見せて行けるだろうか。
37歳のアームストロングはこの日、2010年に再びツールに戻ってくることを正式に宣言している。
■ミケル・アスタルロサ(エウスカルテル・エウスカディ)
ステージ優勝
ボクがスプリントで勝てるチャンスはゼロに近いから、遠くからアタックを仕掛けるしか選択肢はなかった。それに背後から数人が迫ってきていた。だからゴール前3kmでひとり飛び出した。あれがボクにとっての唯一のチャンスだった。
それにしても一体何度、ボクはトライしてきただろう!ようやく今日、ボクの日が訪れた。ボクにとって最高の日が来たよ。ツールは世界最大のレースであり、ボクの最大の目標だった。毎年ツールを夢見てきたんだ。今日の勝利は、ボクのキャリアにおける最高の出来事だよ。ゴールラインを越えたときは信じられない気分だったけど、今だって勝利を信じられないほどさ。
ボクはバスク人だし、チームもバスク人。地元のチームで走ることは、ボクにとって非常に大切なこと。バスクは自転車が非常に盛んだし、素晴らしいサポーターが大勢いる。ピレネーだけでなく、アルプスでもバスク旗を見たよ。とにかくボクらの「国」にとって自転車はすごく大切なものなんだ。
ボクのツールはまだ終わっていない。もう1勝狙いに行くし、総合順位を上げてトップ10入りを目指したい。だから、またアタックを仕掛けていく。努力は必ず報われる、このことを今日の勝ちで理解したからね。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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