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サイクル ロードレース コラム 2009年9月4日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第5ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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悪天候続きだった北国から、強烈な光が降りそそぐスペインへ。気温は真夏並みの35度超。アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)によれば「暑さもそうだけど、地中海岸特有の湿度が厳しかった」とのこと。そして急激な環境の変化に体がびっくりしてしまった選手も多いようだ。アンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)もそのひとり。あまりの暑さに、休養日には不調を覚えたんだとか。幸いにも普段以上に水分補給を心がけ、体温調節機能が上手く働くようになったおかげで、……スペイン初日ステージで見事に勝利とマイヨ・オロを手に入れた!

スタートから7km地点で飛び出した6選手を見送ると、後方プロトンはゆっくりとしたテンポで走り始めた。暑さに体を慣らすためか、それとも未だ雨のリエージュステージでの集団落車の影響が残るせいだろうか。第4ステージ後には198人中3人がブエルタを去っている。この日はあちこちに絆創膏やテーピングをつけた選手が見られ、ステージ序盤には集団後方のドクターカーで治療を受ける選手が相次いだ。昨大会総合4位のエセキエル・モスケーラ(シャコベオ・ガリシア)も「一瞬でボクのブエルタは終わってしまうのか」と心配したそうだが、脚の痛みを抱えながら静かに走り続けた。

バレンシア名物オレンジの果樹園が広がる一帯でフリアン・サンチェス(コンテントポリス・アンポ)、アイトール・エルナンデス(エウスカルテル・エウスカディ)、ホセアントニオ・ロペスヒル(アンダルシア・カハスール)、ジュリアン・エルファレス(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)、マッテ・プロンク(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)、そしてセラフィン・マルティネス(シャコベオ・ガリシア)の6人は、プロトンから最高6分のタイム差を奪った。ただしスプリンターチームが少しだけスピードアップ。先頭とプロトンのタイム差は一気に減少し、1分から1分半程度の中途半端なタイム差で30kmほど延々と走ることになる。ところで両集団の差が1分以内になった場合、先頭集団の後ろについていたチームカーはプロトン後方へと戻らなければならない。しかもゴール前20km以内はチームカーによる補給が禁止だ(暑い日は特別許可される場合が多い)。エルナンデスがわざわざボトルを大量に取りに行き、逃げの仲間たちに手渡したのは、スペイン灼熱地獄の恐ろしさを知りつくした地元選手ならではの配慮だったのかもしれない。こんな美しき協力体制が見られたエスケープも、20kmを残したところで終わりを告げた。

ステージ最後の難所、ゴール前10kmのエルミタ峠ではフィリップ・ジルベール(サイレンス・ロット)が飛び出した。地元で思い通りの活躍ができなかったリエージュっ子が登り坂でアタック。アップダウンの細い道を利用して一時はメイン集団を23秒ほど突き放した。ただしスプリンターチームの追い上げ激しく、残り3kmで試みは失敗に終わる。プロトンは再びひとつになり……しかし再びバラバラになる。第2ステージ勝者ゲラルド・チオレック(チーム ミルラム)がゴール直前で落車し、前方の約20選手以外は大きく後れを取ってしまったのだ。

分断のせいでクイックステップvsチーム コロンビアとなった第4ステージとは違って、この日は各チームのエーススプリンターたちがほぼ全員前方に控えていた。オスカル・フレイレ(ラボバンク)もタイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)も。そして2007年ブエルタ&2008年ジロの「キング・オブ・スプリンター」ダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)をあっさり抜き去り、2007年ツールの「マイヨ・ヴェール」トム・ボーネン(クイックステップ)を右側から追い越したグライペルが、余力を残して先頭でゴールラインを駆け抜けた。2ステージ連続の区間優勝で、グライペル個人にとっては今季17勝目。またチーム コロンビア・HTCは今大会早くも3勝目を上げ、今季グランツールではなんと通算15勝目(ジロ6勝・ツール6勝)を計上した!

またステージ1位のボーナスタイム20秒×2のおかげで、グライペルは人生初のグランツールリーダージャージに袖を通した。4日間マイヨ・オロを着用してきたファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)は9秒差の総合3位後退。ステージ直後には27秒遅れの5位と発表されたが、「3kmルール(=ゴール3km以内にアクシデントで遅れた場合は、事故発生時の集団と同タイムが与えられる)」が適応されている。


●アンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)
ステージ勝利、総合リーダー

これまで手に入れた全ての勝利がボクにとって大切なものだけど、今日の勝利は決して忘れることのできないものとなるだろう。ボクのキャリアの鍵となる勝利だ。なんといってもステージ優勝とマイヨ・オロを同時に手に入れたんだからね。今レースが終わったら、このジャージを額に入れて家に飾るつもりさ。

ボクらのチームは全員が最強選手のために働くことになっているし、現時点ではそれがボクなんだ。これが大いなる自信をもたらしてくれる。チーム内の雰囲気はすごくいいんだ。今日はゴール間近でチームメイトの1人がパンクしたから、いつもよりも1人少ないメンバーでなんとかやりくりしなければならなかったし、瞬時に戦術を変える必要があった。幸いにもチームはすぐに体制を整え直して、ボクはスプリントに混じることができた。最後はボーネンの背後に入って、あとは全てがうまく行った。

この先どれだけリーダージャージを守ることが出来るかわからない。でもリーダージャージは選手にプラスの力を与えてくれるものだし、ボク自身はすごくモチベーションを感じているよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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