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サイクル ロードレース コラム 2009年9月15日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第15ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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苦しかった山越えを終えて。この3日間グルペットでじっと我慢し続けてきた選手たちが、ここぞとばかりに攻撃を再開させた。蒸し暑いハエンの町から走り出した155選手の中から、誰かが前に飛び出しては、すぐに別の誰かが潰しにいく。こんな追いかけっこが延々と繰り返されていくうちに、スピードはぐんぐん上昇。スタートから1時間目の時速はなんと48.9kmにまで達した!

この超高速レースの渦中にはプロトンが3つに分断し、マイヨ・オロのアレハンドロ・バルベルデとケースデパーニュが後ろに取り残されてしまったことも。幸いにも過去の苦い経験を繰り返すことなく——例えば雨具を取りに行って分断の犠牲に合い、マイヨ・ジョーヌを失ってしまった2008年ツール第12ステージのような——、バルベルデはすぐに集団復帰を果たしている。

アンダルシア特有の広大なオリーブ畑の間を駆け抜けて、超高速のアタック合戦は1時間半近く延々と続いた。12人が脱出を成功させたのは、ようやく65km地点を過ぎてから。さらに遅れてもう1人が飛び出し、82km地点には13人のエスケープ集団が出来上がった。すると途端に後続集団は減速する。なにしろ先頭13人の中で最も総合上位につけるのは、ダビ・エレーロ(シャコベオ・ガリシア)の総合52位1時間09分39秒遅れ。ポイント賞争いや山岳賞争いを脅かす選手も存在しなかった。おかげでプロトンは思い切りのんびりモードに突入し、前方集団との差をまるで気にせず開くがままに走った。……そしてゴールラインには25分1秒も遅れてたどり着いた。ちなみにこの日の制限時間は約32分。つまり退屈なレースではあったが、ルール的には何の問題もなかった。

協力し合ってタイム差を広げてきた13人の先頭集団が、残り25km地点でついに動いた。ステージ最終盤に2回通過する2級峠サン・ヘロニモの、2回目の登坂直前にビセンテ・レイネス(チーム コロンビア・HTC)とドミニック・ローエルス(チーム ミルラム)が急加速。そこにセラフィン・マルティネス(シャコベオ・ガリシア)とラルス・ブーム(ラボバンク)が反応すると、逆にこの2人が登りで先頭を奪い取る。さらにはブームが加速を緩めずに、そのまま独走態勢に入った。

地元オランダを通過した第3、4ステージでもブームは大逃げを打ち、第3ステージ後には赤ゼッケンを、第4ステージ後には山岳賞ジャージを手に入れていた。「でも本当はアッセンでいい成績をだしたかったんだよね。あの時はひどくがっかりした」と語る23歳は、この日こそ美しき勝利をつかみとろうと、フルスピードでペダルを漕ぎ続けた。そしてシクロクロスで国内外・全年齢別タイトルを総なめにしてきたレース強者は、ロード転向1年目、初めてのグランツールで初めてのステージタイトルを手に入れた。今後のブームはこの勝利を礎に、ロード界でもビッグキャリアを築き上げていくことだろう。

またチームメイトのマルティネスに追いつき、その後1人でブームを追いかけたエレーロは区間2位。逃げの13人の中で最上位だった総合順位は、33位へと大幅にアップした。

逃げ集団を全く追い上げるつもりはなくとも、マイヨ・オロ擁するケースデパーニュは最後まで集団コントロールを続けた。特に2回の2級峠では、総合3位「下り巧者」サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)の飛び出しに最大限の警戒を払う必要があった。危険なダウンヒルを終えて、スプリンターチームが残りわずか「2枠」となったゴールポイントのためにトレインを作り始めると、ようやくケースデパーニュも長い仕事から解放されたようだ。プロトン内スプリントを取ったのはアンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)。前日ポイント賞ジャージをバルベルデにさらわれていたが、このスプリントで2ポイント取り戻して、緑ジャージ再奪取まで4ポイントに迫っている。


●ラルス・ブーム(ラボバンク)
ステージ優勝

今大会にはまず、アッセンのTTでいい成績を出したいと思って乗り込んだ。だから少しがっかりしたね。でもそのあと、2日連続でいい走りが出来て、エスケープに乗ることができた。そして今日はステージ優勝。最高だね。プロ最初の年の、初めてのグランツールで、早くもステージ優勝が手に入ったなんてパーフェクトだよ。

登りの直前にアタックがかかって、そこに2選手が付いていった。そしてボクも反応した。その時点で他の9選手をすでに200mほど離していたから、「これはいけるぞ」と思ったんだ。登りが始まってからは我々4人は順調にリードが開いたし、ボクも逃げ切りを確実にするためにフルスピードで走った。他の9人を徹底的に突き放そうと努力したんだ。それからマルティネスが千切れて、ボクにはチャンスだと思ったんだ。だからボクはフルスピードで走った。結局、その後は誰もボクに追いつくことが出来なかった。

この2週間を通してすごく調子が良い。もちろん少し疲れを感じ始めているけれど、でも予想よりは疲れていないんだ。調子はいいよ。だから13人の逃げが最後まで行けそうだと理解したときには、補給をしっかりと行った。ステージ最終盤に、確実に全力を発揮できるようにね。世界選手権にはタイムトライアル部門に出場する。ロード部門に関してはまだ分からない。でも今のボクは調子がいい。ヘーシンクのアシストをしっかり務められると確信している。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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