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サイクル ロードレース コラム 2009年9月21日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第21ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2009年ブエルタ・ア・エスパーニャ最終日は、穏かな雰囲気で幕を開けた。4色のジャージに身をまとった選手たち——黄金色の総合首位アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)、緑色のポイント賞首位アンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)、ボルドー色の山岳賞首位ダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)、そしてバルベルデの代わりに白いジャージ姿の複合賞2位サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)——や、表彰台の3選手バルベルデ、サンチェス、カデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)がスタートラインで記念写真。栄光を手に入れた選手たちだけでなく、勝利を追い求めて夢かなわなかった選手たちも、139人全員が3週間の長い旅の終わりを喜び合った。ゆっくりと走り出したプロトンは選手同士でおしゃべりしたり、いわゆる伝統にのっとってスパークリングワインでお祝いしたり。

9月最後の太陽を楽しむようにのんびりとペダルを回す集団の中から、マドリード入場間近、1人の選手が飛び出した。そのまま周回コースに先頭で突入した選手の名はビンヘン・フェルナンデス(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)。この36歳大ベテランは今シーズンを最後に14年間のプロ生活に別れを告げる。選手として出場する最後のブエルタで、沿道に鳴り響くチアホーンの応援を独り占めしながら、1周目を先頭で走り切った。

2回目のゴールライン通過と同時にフェルナンデスが集団へ戻ると、それを合図に6選手が今ブエルタ最後のアタックに打って出た。ヘスス・ロセンド(アンダルシア・カハスール)、マヌエル・バスケス(コンテントポリス・アンポ)、レミ・ディグレゴリオ(フランセーズデジュー)、ミカエル・ドラージュ(サイレンス・ロット)、ドミニック・ローエルス(チーム ミルラム)、ダビ・ガルシア(シャコベオ・ガリシア)の6人は、残念ながらパリ・シャンゼリゼ大通よりは華やかではないけれど……、緑と歴史的建造物に彩られた周回コースを高速で逃げていく。さらに最終周回に突入すると、ドラージュが残る力を振り絞ってアタックをしかけた。

ところで、この第21ステージの朝を決して穏かな気持ちで迎えられなかった選手だって、実は存在したのだ。今年はツール、ブエルタ共に1勝も出来ずにいたダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)は、2007年に制した思い出のマドリードステージに最後の勝負を賭けていた。なんとリクイガスのチームメイトと共に、午前中にトレイン練習を行ったほどだという。また第6ステージにすでに勝利をもぎ取っているボルト・ボジッチ(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)も、スタート直前に「今日はチームのためにも勝ちに行かなきゃならない日なんだ」と緊張感をみなぎらせていた。

つまりリクイガスとヴァカンソレイル、さらにポイント賞首位グライペル擁するチーム コロンビア・HTCが、それぞれにトレインを形成して猛烈に6人を追い上げる。そしてラスト3km地点で、全ての逃げが吸収された。あとは最終日おなじみ集団スプリントゴールへと、大きくうねりながら突き進んでいく。

最終ストレートで最初に仕掛けたのはベンナーティだった。しかし今大会すでに3度も勝利をさらってきたグライペルに、またしても高速で抜き去されてしまった。ベンナーティの背後にギリギリまで隠れていたボジッチも慌てて反応したが、最後の一押しが足りず。「キング・オブ・スプリンター」ジャージを身にまとうグライペルは、ライバルたちの切実な思いを圧倒的な実力で斬り捨てて、今大会4度目のスプリント勝利を手に入れた。

総合表彰台の3選手は全て同タイム(首位グライペルから10秒遅れ)で静かにゴールラインを越えた。その瞬間、3290.6kmにもわたる長く熾烈な戦いは終わり、29歳のバルベルデが念願のグランツール総合優勝を手にした。2006年ブエルタは下りでまさかの逆転を許し、2008年ツールでは雨具を取りに下がっている隙に分断の犠牲に合ってマイヨ・ジョーヌを失い、しかもイタリアでのレースが禁止されたせいで2009年ツールは出場さえ叶わず……、様々な失敗と苦労を乗り越えてついに勝ち取った黄金ジャージだ。バルベルデにとっては生まれて初めての、そしてブエルタにとっては史上最後のマイヨ・オロが、西日に当たってキラキラと輝く。

2010年のブエルタはレース開始75周年を祝う。記念すべき大会の目玉は、セルビアでの「ナイト」タイムトライアル8kmと、もちろん新色のリーダージャージ「ラ・ロハ(La Roja=赤)」である。


●アンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)
ステージ優勝

グリーンジャージを守り続けるのはとてつもなく難しかった。だって今年のブエルタは山岳が本当に多かったからね。でも集団スプリントへと向かう段階で、ボクはチームメイト全員の協力を仰ぐことが出来た。それにボクには今大会屈指の牽引役がついていたからね。特にマルセル・シーベルクとグレゴリー・ヘンダーソンには感謝している。ブエルタに乗り込んだときは区間1勝できたらいいなと思っていたんだけれど、終わってみれば区間4勝。しかもチーム全体では5勝だ。おまけにボクはポイント賞で首位に立った。大いなる驚きだよ。

ゴール前2kmの段階では、かなり後方のポジションにつけていたんだ。でもヘンダーソンが素晴らしい仕事を成し遂げてくれて、ボクを前方まで引き上げてくれたんだ。ラストは微妙な登り坂だったから、いつもよりもほんの少しだけ長めに待って、最後の加速を切った。チームのみんながボクを助けてくれた。ボクは単純に、先頭でゴールラインを越えさえすればいい、そんな幸運なヤツなのさ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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