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サイクル ロードレース コラム 2010年5月13日

【ジロ・デ・イタリア2010】第4ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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開幕の地オランダを後にしたジロ一行は、北風と寒さから逃れて、少しだけ暖かいイタリア本土へとたどり着いた。ただしアムステルダムではそれほど邪魔にはならなかった雨雲が、4日目のチームタイムトライアルで思い切り悪戯をしかけてきた。各チームの出走した時間帯によって、意地悪な雨が、全力疾走する選手たちの行く手に立ちはだかってきたのだ。たとえば休養日前日の第3ステージに落車分断によりタイムとマリア・ローザを失ったカデル・エヴァンス属するBMCレーシングは、全22チーム中4番目の出走順だった。スタートを切った15時05分、スタート地サビリアーノには大粒の雨が降っていた。塗れた路面と遮られる視界のせいで、思うようなスタートダッシュは切れなかったはずだ。しかもBMCは第2ステージにマルティン・コーラーが途中棄権したせいでそもそも8人しか出走選手がいなかったのにも関わらず、悪天候の中、コース序盤で2人が早くも脱落。6人で厳しい高速の戦いを強いられることになった。

20分後にBboxブイグ テレコムがスタート台から走り出していった時には、すでに雨は上がっていた。雨に打たれたBMCとエヴァンスは最終的に6人のままゴールへとたどり着くことができたが、残念ながらチームとしては12番目の成績に甘んじた。そして開幕前からジロ一行内に漂っていた「BMCには果たしてエヴァンスのジロ総合優勝をアシストする能力があるのか」という疑問が、再び表面へ浮上してきた。大会前は「前所属チームよりも居心地がいい」「ボクのグランツール優勝のために全てを尽くすと約束してくれている」と朗らかに答えていたエヴァンスだったが、第3ステージ終了後はレース最終盤にサポートを受けられなかったことで「苛立ち」を表明していた。そしてチームタイムトライアルの失敗。チームメイトの8人中5人がグランツール初参加という「経験不足」が、この先、さらに世界チャンピオンの足枷となりはしないか。エヴァンスは総合首位からの遅れを、前日までの43秒から1分59秒差へと開いてしまった。

雨にたたられたのはこの日の優勝候補、スカイ・プロフェッショナルサイクリングチームとガーミン・トランジションズも同じだった。彼らの場合は中間計測ポイント前後で雷鳴付きの大雨に襲われた。またスカイはスタート直後にパンクで1人失い、ガーミンは第3ステージにリーダー格クリスティアン・ヴァンデヴェルデが落車リタイアしていた。スカイのブラドレー・ウイギンズは初日TT勝利の再現を、前日まで総合1秒差だったガーミンのデーヴィット・ミラーは逆転マリア・ローザを狙ったが、結局、両者の夢はかなわなかった。それぞれチーム2位と8位に甘んじている。

そんな中、16時20分にリクイガス・ドイモがスタートを切ったころは、幸運にも雨脚は少し弱くなっていた。しかもリクイガスはチーム全員が上手く連帯しあって走り続け、つまり脱落者が非常に少なく、フィニッシュライン直前までスピードを落とすことなく強力なリレーを続けることが可能だった。最終的には7人一緒にゴールし、36分37秒というトップタイムを叩き出した。ゴール前で5番目(=チーム代表タイム計測)の選手が千切れ、マリア・ローザ姿のアレクサンドル・ヴィノクロフが怒鳴りながら減速を余儀なくされたアスタナとは状況がまるで異なる。そのアスタナはリクイガスよりも38秒遅れでゴールし、オランダステージでの分断に巻き込まれなかったリクイガスの3人、リーダーのイヴァン・バッソとバレリオ・アニョーリ、そしてヴィンチェンツォ・ニバリは総合でヴィノクロフを追い越した。……追い越しただけでなく、ニバリは生まれて初めてのマリア・ローザさえも手に入れてしまった!

大会4日目にして4人目のマリア・ローザ誕生。しかもウイギンズ、エヴァンス、ヴィノクロフというプロトン屈指の強豪が引き継いできたリーダージャージは、イタリア上陸と共にイタリア人の手に渡った。ちなみにフランコ・ペッリツォッティのバイオロジカルパスポート問題で、大会開幕前の月曜日に急きょチームから招集をかけられた25歳は、地元シチリア島のメッシーナでバカンスを満喫中だったという。メッシーナのバカンスと言えば……やはり海?なにやら2008年ジロ数日前までビーチバカンスを楽しんでいて、やはり急きょ呼び出された上に、総合優勝をかっさらってしまったアルベルト・コンタドールの境遇と似ているような気はしないだろうか。もちろん気の早いイタリアメディアは、2つの状況の奇妙な一致に興奮し始めているようだ。こんな雰囲気の中、わずか13秒差で総合2位につけたバッソは「ニバリは忠実なチームメイトだよ」と、あくまでも自らがチームリーダーであるとのアピールを忘れない。

また2日間分断にはまったカルロス・サストレ擁するサーヴェロ・テストチームは、アスタナと同タイムで終了。「今日のチームはいい仕事をしてくれた。彼らは本当にファンタスティックだった」とサストレは満足気なコメントを残している。新城幸也はゴール直前でチームメイトから置き去りにされ、チームからは23秒遅れ、区間首位からは2分42秒遅れでゴールラインを越えている。


■ヴィンチェンツォ・ニバリ
マリア・ローザ

チーム全体が素晴らしい走りを見せてくれた。本当に全員が力強い走りをした。ボクだって何度も前線で牽引したさ。他のチームと同じくボクたちも雨に降られたけれど、パニックにならずにチームがしっかりまとまりつづけた。それが違いを生んだんだと思う。これはチームの勝利であり、チームがマリア・ローザを獲得したんだ。単にボクだけのジャージではない。チーム全体にお礼をいいたいよ。選手だけでなく、スタッフやボクを支えてくれた全ての人に。

マリア・ローザは子供のころからの夢だった。パンターニが大好きで、ジロでのパンターニの活躍を見ながら大きくなった。イタリア人にとってジロは最も大切なレースであり、マリア・ローザは全イタリア選手のあこがれだ。ボクにとっては全ての出発点でだった。だから今日はボクにとって本当に特別な日になったね。

ジロはボクのシーズンプログラムには入っていなかった。だからと言って簡単にマリア・ローザを手放したりはしないさ。最後の1滴まで力を振り絞って戦うつもりだ。一方でバッソはジロのために特別な強化トレーニングを積んできた。彼は優勝に意欲を燃やしているし、調子も非常に良い。だからボクがジャージを着ているからといって、チームの戦術は変わらないだろう。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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