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【速報 ブエルタ・ア・エスパーニャ2024】逃げに乗ったカストリーリョ、ラスト10kmを独走逃げ切りプロ初勝利/第12ステージ
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ようやくお日様がプロトンの頭上に顔を出し、5月のイタリアにふさわしい青空が広がった。「誰もが太陽を待ち望んでいたよ。それに静かな1日だったね」と第7ステージの雨に塗れた路面で落車し、マリア・ローザを失ったヴィンチェンツォ・ニバリはゴール後に語った。普段は気難しい顔を見せがちなアレクサンドル・ヴィノクロフも「やっと落ち着いたステージになったね!さらに1日マリア・ローザを着ることができてパーフェクトだよ」と、ほっとした笑顔を見せた。なにしろスタートから8km地点で3選手の飛び出しを見送ったあとは、プロトン内に非常に穏やかな時間が訪れたのだ。
ティレニア海側からアドリア海側へと一気に横切るこの日、スタート直後の上り坂を利用してユベール・デュポンとチャールズ・ウェゲリュース、さらにダリオ・カタルドが長いエスケープへと旅立っていった。ウェゲリュースとカタルドの2選手は2007・2008年とリクイガスのチームメイトであり、2008年コッピ・バルタリ第1ステージのチームタイムトライアルを共に制した仲間だった。当然のように3人はしっかりと協力し合いながら逃げを続け、36km地点で早くも7分50秒差を記録する。その後はプロトンがタイム差調整を行ったため、ゆっくりととタイム差は縮まっていったが……、ほんとうにゆっくりとだったため、おそらく前後方共にのんびりと南イタリアの明るい太陽を満喫する十分な余裕があったに違いない。
しかし、さすがにリラックスした気分のままアドリア海岸を眺めることはできなかった。ステージも残り45kmを切ると、平和な時間は終わりを告げたのだ。タイム差がすでに1分まで縮まっていたところで、後方集団内で小さな落車が発生する。それをきっかけに前方3人は最後の悪あがきを始め、後方も負けじと再スピードアップ。リードが広がったり縮まったりの激しいチェイスが巻き起こり、追走速度は時速70kmまで跳ね上がった。最後尾の選手たちが容赦なく切り離されてしまったほど。そして残り16.5km、諦念した3人は静かにプロトンへと戻って行ったのだった。
大きくまとまった集団を前線でコントロールし続けたのは、前日の勝利で気をよくしているチームHTC・コロンビアだった。キング・オブ・スプリンターの証、赤ジャージ姿のタイラー・ファラー擁するガーミン・トランジションズも任務を黙々と果たす。またラスト14km地点でスプリンターリーダーの1人グレゴリー・ヘンダーソンが落車してしまったスカイ・プロフェッショナルサイクリングチームだが、強いチーム力でヘンダーソンを引き上げると、きっちりとプロトン前方でトレインを組み始めた。
ところが!一筋縄ではいかないのが2010年ジロ。なんとイヴァン・バッソを含むリクイガス2人が前方に上がってきたと思うと——前日も危険ゾーン回避のためにリクイガスが前方へ上がる場面が見られたが——、突然道幅が狭くなった。しかもうねりのあるカーブが連続して姿を現した。とたんにきっちり組み立てられた各チームのスプリントトレインは分解状態に。その混沌を利用して、残り1km地点でクイックステップのマッテーオ・トザットがアタックをしかけた。さらにその背後には、新城幸也が猛スピードでついた!……ただし残念ながらチームのスプリンター、ウィリアム・ボネの姿が見えないため、新城は途中で減速。それと時を同じくして、ゴール前300mでジュリアン・ディーンが猛烈な特攻に転じた。
「ディーンは素晴らしい加速を切ったね。あまりの速さだったから、彼は勝ちにいけるんじゃないか、勝たせてあげようか、と一瞬考えたよ」と、ディーンのチームメイト、ファラーはゴール直前の一瞬間の出来事について振り返った。ただし「ファビオ・サバティーニがすぐ背後に迫っていた」ため、やはりリーダー自らがスプリントを切ることに決め、そして瞬時の決断が間違っていなかったことを証明して見せた。マリア・ロッソ・パッショーネを身に着けて、第2ステージに続く今大会2度目のステージ優勝。ちなみに前日ファラーは公言している。第13ステージまでは確実にジロを走り、その後はポイント賞ジャージ争いの成り行き次第でレース続行かリタイアかを決める、と。昨年のファラーは3大ツール全てに出走したが、ジロは第15ステージ、ブエルタは第12ステージに「DNS(=スタートせず)」と記録されている。
また第5ステージの大逃げ3位に続き、ゴール前の驚異的なトップスピードを世界に見せ付けた新城幸也は34位でフィニッシュ。総合上位に変動はなく、優勝争いの本命たちは静かに1日を終えた。翌日は今大会最長262kmのステージ。普段よりも早い朝10時15分にプロトンはスタートを切る。
■タイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)
ステージ優勝
今日のチームは最強だった。世界最強のチームだよ!だからボクは簡単に仕事を終えることが出来た。チームには全幅の信頼を寄せていたんだ。最終1kmは危ないカーブや狭い道が多く、とんでもなくクレイジーだった。でもボクはいいポジションに付けられたし、ゴール前は微妙な登りでボク向きだったのさ。ディーンは信じられないような加速を見せたね。彼に勝たせてあげようか、ボクも一瞬考えた。でもサバティーニがすぐ背後に迫っていたから、チームのためにもボクが勝ちに行くことに決めたんだ。それに脚の調子も良かったしね。
春先からチームトレインの練習を積んできたけれど、ようやく結果に現れ始めている。自信もどんどん付いてきた。この大会には区間勝利を取るために来たんだ。近頃ほかの現役スプリンターと比較されることが多いけれど、正直に言うと、ボクは自分とチームのスプリントのことしか考えていない。でもチポッリーニに関しては別次元。彼はジロで42もの区間勝利を上げているからね!いつの日か、彼のレベルまでたどり着きたいと願っている。
■アレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ)
マリア・ローザ
開幕以降、初めて本当の意味で静かな1日となった。もちろん最終盤はスピードが上がったけれど。でも明日は厳しいステージになるだろう。距離も長いし、コース設定も難しい。クラシックレースのような感じだね。でもアタックを仕掛けなければならないのは、むしろ他の選手たちだ。我々チームはコントロールに務めていく。でも230kmを超えるレースでは、最終盤は全てが様相を変えてしまう。何が起こるか分からない。数秒取りに行く機会があったとしたら、もちろん取りにいくさ。
最も危険なライバルはエヴァンスだ。でも彼だけでなく、バッソ、スカルポーニ、ガルゼッリ、ニバリも非常に強い。ニバリはバッソのアシストのために今大会へ来たけれど、非常にモチベーションが高いし、なにより彼自身にも優勝する実力があると思うよ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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