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「今日から本格的な暑さがフランス全土を襲います。水分補給に注意してください!」という声が、テレビやラジオから何度となく流れてくる。前日までも十分に暑かったが、太陽の日差しと道路からはねかえる熱は一段と強さを増した。しかも選手は刺すような直射日光の下、木陰の少ない麦畑やひまわり畑の間をひたすら走り続けたのだ。果たして何本のウォーターボトルが消費されたのだろう!?「最初は数えていたんだけど、あまりにも多いから途中でやめちゃった!」とマイヨ・ジョーヌのファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)は笑いながら証言している。
前日から「伝統的な」ツール1週目の雰囲気を取り戻したプロトンは、8km地点でユルヘン・ヴァンデワーレ(クイックステップ)、ホセイバン・グティエレス(ケースデパーニュ)、そしてジュリアン・エルファレス(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)の飛び出しを見送った。第4カテゴリーの小さな峠がステージ前半に2つ登場するだけのフラットコースでは、その2つ目の峠の直前でこの日最大のタイム差がついた。つまり28km地点でついていた7分55秒差は、この先約150kmかけてじわじわと縮まっていくのだった。
ところで第2ステージ終了後から山岳ジャージを着ているジェローム・ピノー(クイックステップ)は、今日も心安らかな1日を過ごすことができた。むしろ逃げに乗ったチームメイトのヴァンデワーレが2峠とも1位通過し、他選手にポイントをできるだけ取らせないという「ナイスアシスト」。さて、翌第6ステージには4級カテゴリーが4つ待ち受けるため、最大で山岳12ポイントを取得可能だ。つまり13ポイント保持しているピノーだが、すでに1ポイント以上つけている選手(計18選手)が逃げた場合に限って、赤玉ジャージの座が脅かされるかもしれない。おそらくレース序盤から、クイックステップがアタックをうまくコントロールしていくはずだ。
もちろん、今第5ステージの注目は山岳争いではなく、スプリント争い。特に昨大会6勝とものすごいセンセーションを巻き起こしながら、今大会では未だ勝てずにいたマーク・カヴェンディッシュと彼を支えるチームHTC・コロンビアの走りに大いに視線が集まった。去年6勝のプレッシャー、今季序盤から未だ上がりきらない調子、アシストトレインのメンバーチェンジ、メディアの取材攻勢……。勝てない理由は様々に囁かれた。それでも「今までどおりに彼を全力で支えていく」(監督アルダグ)、「今週絶対に勝つ。勝たせる。」(最終アシストのマーク・レンショー)とチームはカヴェンディッシュを信じ、スプリントのための準備にいつも以上に力を入れた。特にコンスタンティン・シウトソウが非常に長期間に渡ってプロトン前方で強力な牽引を続けた。
ゴール前6kmでヴァンデワーレとエルファレス、そして残り4kmでグティエレスが吸収されると、いよいよスプリントへ向けてチームHTC・コロンビアの仕事は最終段階へと突入した。アレッサンドロ・ペタッキの3勝目を目論むランプレ・ファルネーゼヴィーニやタイラー・ファラーをツール初勝利へと導きたいガーミン・トランジションズも前方への位置取りを試みるが、コロンビアトレインは毅然と前へ進み続けた。そして前日の200mよりも少し長い、ゴール前250m。最終ワゴンの背後から、リーダーが全ての仕事を完成させるために飛び出した。
前日は自転車を地面に投げつけたカヴェンディッシュだったが、この日は頬を喜びの涙でぬらしていた。「ひどくプレッシャーを感じていたんだ。本当に辛かった」と24歳の青年は正直に告白する。「彼はバッドボーイなんかじゃなくて、とってもいい子ね」と大会を訪れていたフランススポーツ省の女性大臣ロズリーヌ・バシュロも、悪童の仮面の下に隠された繊細さにすっかり心打たれてしまったようである。
さて、1勝の壁をようやく越えたカヴェンディッシュの次なる目標は、やはりマイヨ・ヴェール獲りとなるのだろうか? ポイント賞首位のトル・フースホフト(サーベロテストチーム)には2倍以上のポイント差をつけられているし(フースホフト102、カヴェンディッシュ50)、この先スプリント機会はもはや3〜5回しか残っていない。「ポイント賞というのは長期間にわたってコツコツつづけていかなくてはならない仕事。一方でステージ優勝は一瞬が大切な仕事だ。でもステージ優勝のほうが断然難しいと思うし、その難しい仕事をまず1つやり遂げたんだ。私は満足しているよ。ポイント賞の行方は、状況次第で見ていこう」と、チームマネージャーのボブ・ステイプルトン氏は語っている。ちなみにすでにステージ優勝を果たしたフースホフトが、コツコツポイント稼ぎも得意なのはご存知の通り。
●マーク・カヴェンディッシュ(チームHTC・コロンビア)
区間勝利
最初からチームの出来はよかったんだ。プロローグではトニー・マルティンがあとわずかのところでカンチェッラーラに敗れた。第1ステージではペタッキが上手だったけれど、でもチーム自体は素晴らしい仕事をしてくれた。昨日だって同じだ。ボクが彼らのあとについていけなかっただけなんだ。そして今日、再びチームはファンタスティックな仕事をしてくれた。要求されている以上の、信じられないような動きだった。あとはボクが締めくくるだけでよかったんだ。チームに本当に感謝しているよ。
今日の勝利はスペシャルだね。特別な理由が2つあるんだ。ポジティヴな面とネガティヴな面だ。ポジティヴな面は、ボクは自分が大好きなスポーツをしていること。だから1回でも勝つと、もっと勝ちたくなる。そして天にも昇る気分になってしまう。そして周りの人からも期待されるようになる。ネガティヴな面は、周りの人々は天から引きずり落とそうとすることだ。ボクにとって今回のことは非常に良い教訓となった。ボクは空から突然落ちてしまったんだ。上れば上るほど、墜落が厳しくなるのさ。
●ファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)
マイヨ・ジョーヌ
いつでジャージキープのための仕事を終えるのか、ということは特別決めてはいない。終わりの日なんかないよ。とにかく1日1日見ていくだけ。昨日と今日はコントロールがより簡単だったね。ただし明日は長いステージだし、あさっては最初の山岳ステージを迎える。休養日までは守りたいと願っているけど、たとえそれが叶わなくともそれほど重大なことではない。
こんな風に暑い日は、とにかくたくさん水を飲むことが大切なんだ。水は冷えすぎていてもダメ。ミネラルウォーター、糖分入り飲料、塩分入り飲料と全てを飲まなきゃならない。選手はレース中に塩分をたくさん失うから、とくに塩分は大切。また暑いときこそしっかり食べなきゃならない。体力を消耗せず、この先のツールをしっかり続けていくためには食べるのも仕事。こういった小さなことが非常に大切なんだ。あとはレース中にエネルギーを使いすぎず、とにかく飲む、飲む、飲む。それだけさ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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