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サイクル ロードレース コラム 2010年8月30日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2010】第2ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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前日の夜更かしに負けず、摂氏40度近い酷暑にも負けず、参加198選手が今大会初めての一斉スタートを切った。ただし大会2日目のゴール地には、全員でたどり着くことすらできなかった。

大会離脱第一号は、大会初のエスケープ集団に属していたミカエル・ビュファーズ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)だった。開幕地セビーリャからわずか20kmほどの町で生まれたハビエル・ラミーレス(アンダルシア・カハスール)がスタート直後に打った渾身のアタックに、ジョニー・ウォーカー(フートオン・セルヴェット)とミカエル・ドラージュ(オメガファルマ・ロット)、そしてビュファーズが反応すると、あっという間に4人の逃げ集団が出来上がった。

ビュファーズの目的は、山岳ポイントだった。チームリーダーのダヴィ・モンクティエは3年連続の山岳賞獲りを目指しており、コフィディスのアシスト陣には「山岳ジャージを出来るだけチーム内でキープせよ」という指令が出されていた。ところが皮肉にも、峠への登坂途中でビュファーズは自転車から転がり落ちた。ポイントを手に入れるどころか、鎖骨を折り、大会から立ち去ってしまった。

例の山岳ポイントと、続く2回の中間スプリントポイントはいずれもドラージュが制した。おかげでドラージュは今年初お目見えの山岳「青玉」ジャージとボーナスタイム12秒を一挙に獲得する。さらに2度目のスプリントポイントではアタックさえも試みたが、さすがに他の2人が許さない。さらにスプリンター泣かせの執拗な上りを利用してマルコス・ガルシア(シャコベオ・ガリシア)が後方集団から飛び出すと、ゴール前42km地点で3人に合流。逃げ切り勝利へのわずかな可能性へ向けて、先頭4選手は長い下りも果敢に攻め続けた。

しかし背後では、赤・緑・白の3つのリーダージャージを有するチームHTC・コロンビアが厳しい集団コントロールを強いていた。一時は7分にまで開いた後続集団とのタイム差も、下り突入時には1分以内に縮まっていた。上りで少々苦しんだマイヨ・ロホのマーク・カベンディッシュも、チームメイトにしっかり保護されプロトン前方で坂道を下った。そして道が再びフラットになるほんの少し前、ゴールまで13kmを残した付近で逃げ選手たちは次々と吸収。あとは予測されていたシナリオ通りに、大会初めての集団ゴールスプリントへと向かってプロトン全体が突き進んで行く。

結末自体は、少々予想外だったのかもしれない。カベンディッシュの大会個人初勝利、もしくは大ベテランのアレッサンドロ・ペタッキ(ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)の大会通算20勝目、はたまたチーム全体で牽引を行ったリクイガス・ドイモのダニエーレ・ベンナーティのスランプ脱出勝利やタイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)のツールリベンジ勝利……こんなストーリーが自転車関係者の頭の中では描かれていたに違いない。しかし、ゴール前の混乱から上手く抜け出して、現役最速の赤いジャージを左からさしたのはヨーヘニ・ウタロービッチ(フランセーズ・デ・ジュー)だった!

ベラルーシ生まれの26歳は、5年前から活動の拠点としているフランスでは強豪スプリンターとして名を馳せている。過去2度ベラルーシ国内チャンピオンに輝いているし、春先の重要なレースのひとつ、地中海一周では2年連続で区間2勝を上げてきた。「これ以上成長する必要なんてないのさ。ボクは世界のビッグスプリンターたちと対等に戦う力をすでに持っている。今日の勝利が証明さ」とウタロービッチ本人が強気に語ったように、スプリンターとしての高い実力ならばすでに持っていた。しかし国際レベルではほぼ無名に近かった。世界選3勝の大スター、オスカル・フレイレ(ラボバンク)が「彼の名前さえ聞いたことがない」と告白したほど。確かに過去2回参加したグランツールでは何もしてこなかった。……いや、2009年ツールでは「ランタン・ルージュ」、つまり総合最下位の不名誉な称号を得るには得たのだが。つまりウタロービッチは今回グランツールの区間初勝利と同時に、国際的選手としての知名度を手に入れたのだ。

初挑戦のブエルタ初スプリントを2位で終えたカベンディッシュは、赤色の総合リーダージャージを守りきった。しかもボーナスタイムを12秒追加したため、前日までの「同タイム首位」ではなくダントツの総合首位へと格上げだ。

またステージ中盤の長い上りに苦しめられた20人近くの選手が集団ゴールを逃した。前日のトレーニング中に体を痛めたジュリアン・ディーン(ガーミン・トランジションズ)はこの日だけで16分19秒も失った。フートオン・セルヴェットのアルカイス・ドゥーランはさらに遅れを喫した。なんとかゴール地にたどり着いたが、非情にも制限時間アウトを言い渡された。脱落者は早くも2人となった。


■ヨーヘニ・ウタロービッチ(フランセーズ・デ・ジュー)
区間勝利

サプライズな勝利だと考える人がいてもおかしくない。でもボクにとってはなんの驚きでもないんだ。今シーズンはこれで5勝目。ツール・ド・ポローニュでの区間優勝のおかげで自信をつけた。だからブエルタ中に勝てると確信していたんだ。単に早くも目標達成、という感じだね。でも自分が勝ったと分かった瞬間は、やっぱり信じられなかった。本当に嬉しいし、チームのためにも満足している。

今日のステージでは、出来るだけ早い段階でカベンディッシュの後ろに入ろうと決めていた。カベンディッシュがステージ中に少し苦しんでいる姿を見て、ボクにもチャンスがあると確信していたからね。チームメイトたちから好ポジションに引き上げてもらったあと、彼の後ろに上手く入り込んだ。そして背後でじっと飛び出す時を待ったのさ。

■マーク・カベンディッシュ(チームHTC・コロンビア)
総合首位

コースは厳しく、非常にハードな1日だった。上って上ってまた上って、そこから下って下って、さらに下って……という風にね。でもボクは信じられないほどラッキーな男さ。周りにこんなに素晴らしいチームメイトたちがついていてくれるんだから。チームメイトたちが力を尽くしてくれたから、ボクはまったく余計な力を使う必要がなかった。でも暑さのせいでやられてしまった。すごく苦しんだ。マシューハーレー・ゴスと一緒にレースを走るのは初めてなんだ。普段のリードアウト役のマーク・レンショーとの連携とは勝手が違うけれど、今は互いを理解しあっているところ。今後もトライしていくさ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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