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スタート前からすでに、2日連続の大集団ゴールがほぼ確実視されていた。確かにステージ後半に3級峠が2つ登場するが、スプリンターたちが喘ぎ苦しむような起伏ではない。プロトンの敵はこの一帯——バスクとの境界線に近い——を吹き荒れる強風だけ。バスクチームのエウスカルテル・エウスカディは地元近くだからといって余計なパフォーマンスは見せず、スプリンターチームにコントロール権を握らせて、集団「2列目」で状況を静観。翌日からの山岳ステージに備えて、体力温存に努めた。
スプリンターチームの戦いは、なにもゴールだけに限られたものではなかった。むしろスタート直後から激闘は勃発する。わずか8.4km地点に設置された第1中間スプリントポイントへ向けて、歴々のスプリンターが全力疾走を始めてしまったのだ!結果は1位通過タイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)、2位ワウテル・ウェイラント(クイックステップ)、3位マーク・カベンディッシュ(チームHTC・コロンビア)と非常に豪華な顔ぶれ。ポイント賞2位のファラーは4pを手に入れることに成功した。
スプリント対決第1弾が終わると、少しだけエスケープ主役の時間がやってきた。25km地点でジャンパオロ・ケウラ(フートオン・セルヴェット)とマヌエーレ・モーリ(ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)が飛び出し、30km地点でアラン・デーヴィス(アスタナ)、オリヴィエ・カイセン(オメガファルマ・ロット)、ニキ・テルプストラ(チーム・ミルラム)が前方へ合流。5人になった逃げ集団は、プロトンからすぐさま8分もの大差を手に入れる。ただしガーミン・トランジションズが追走を開始し、チームHTC・コロンビアも協力を始め、さらにクイックステップも加速に手を貸すと、次第に先頭集団は追い詰められていく。正確には縮まっては補給で少し広がり、また縮まっては山で少し広がり……という具合にリードは縮まって行ったのだった。
ゴール前3.7kmでついにタイム差は0になった。この頃にはスプリンターチームたちの相次ぐ加速で、走行時速は70kmにまで上がっていた。恐ろしいトップスピードの中でも厳しいポジション争いが繰り広げられ、特にガーミン・トランジションズ、クイックステップ、そして最終盤にはチーム・カチューシャも先頭の座を競い合った。そして、この日最後の戦術的要所、ラスト500m地点の急カーブへと集団は突っ込んで行った。
前日の最終コーナーよりもさらに急なカーブ(約45度!)を先頭で抜け出したのは……、前日とまさしく同一人物のマシューハーレー・ゴス(チームHTC・コロンビア)だった!もちろん背後には、上体を小さく縮めて風の抵抗を最大限に防ぐ緑色のジャージが張り付いていた。「でも昨日とは違って、カーブはフィニッシュラインから遠かった。最終ストレートは長かったんだよ!」と語るカベンディッシュは、それでも前日同様に圧倒的なリードを保って2日連続の区間勝利を手に入れた。ライバルとの距離を確認するために後ろを振り向いたのも前日と同じ。しかしこの日は拳を天に突き上げる代わりに、フィニッシュラインでお茶目に自転車ごとジャンプしてみせた!
「ブエルタでは(ツールとは違い)全ステージでゴールポイントが全く同じ。つまりライバルスプリンターだけでなく、総合有力選手にも注意を払っていかなければならない」と前日気を引き締めていたポイント賞首位のカベンディッシュは、首尾よくゴール25p+中間1pを積み重ねた。ライバースプリンターのファラーとの差は21pに開き、総合有力選手のイゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)との差は36pに開いた。「でも明日から3日間はポイントが稼げないんだよ」とカベンディッシュ。そう、第14ステージから3日間は山頂フィニッシュ3連戦。アントンが再び大量にポイントを収集し、またしても緑ジャージを奪い取ってしまうかもしれない。ただし、ご存知の通りアントンの狙いはゴールポイントやポイント賞ジャージではない。マイヨ・ロホを守るための区間優勝(もしくは上位入賞)と、さらなるボーナスタイムである。
●マーク・カベンディッシュ(チームHTC・コロンビア)
区間優勝
またしてもチームが素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。最後のカーブではゴスが信じられないような走りを見せたね。クレイジーだったよ。チーム全員が働いてくれたおかげで得られた勝利だ。このチームを本当に誇りに思うよ。
最終カーブはゴールから距離が遠かった。ラスト500mからの最終ストレートはかなり長かったよ。だから昨日とは状況が少し違ったんだ。最後のカーブには誰が先頭で飛び込んでもおかしくなかったけれど、ゴスとボクがコーナーに真っ先に飛び込むことが出来た。ゴスは内側から特攻を仕掛けたんだ。そしてコーナーから先頭で飛び出したんだけど、ボクはゴスの後についていくのに苦労したほどだ。すでに限界ギリギリだった。本当に彼は速いし、爆発力があるね!レンショーとの協力体制のときと比べると、ギリギリまでスプリントを切れない。普段は250mで飛び出せるんだけど、今回は170mまで我慢しなければならなかったんだ。とにかく、ゴスは昨日と同じく素晴らしい仕事をしてくれた。
フィニッシュラインでのジャンプした理由は、スポンサーへのお礼代わり。バイクやマテリアルを提供してくれているスポンサーのおかげで、ボクは気持ちよく走ることが出来る。ボクらのスポーツに力を貸してくれる人々に、お返しをしたかったんだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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