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サイクル ロードレース コラム 2010年9月20日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2010】第21ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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記念すべき「75周年大会」は、いつもより少しだけ荘厳な最終日を迎えた。大会の最後を彩る恒例の市街地サーキットは、昨年までのシベレス広場を中心とした南北往復ではなく、広場を支点ににマドリードの町中を東西南北駆けめぐるコースに生まれ変わった。通常ステージで使われる小さな表彰台は脇に押しやられ、広場中央に大きな特別表彰台が設置された。そしてスペイン特有の抜けるような青空と、スペイン国旗をはためかせる初秋の風の中、高らかにイタリア国歌が響き渡った。2010年ブエルタ・ア・エスパーニャを制し、新色ジャージ「ラ・ロハ」を身にまとう正当な権利を手に入れたのは、25歳の若きヴィンチェンツォ・ニバリ(リクイガス・ドイモ)だった。

2週間後に南半球で行われる世界選手権と2011シーズンの話題があちこちで飛び交うスタート地から、ゴールのマドリード中心地まではわずか20kmあまり。ステージ全体も85kmと極めて短かく、乾杯や写真撮影タイムをたっぷりと楽しめるツール・ド・フランス最終日のようにはいかなかった。それでもスタートラインで表彰台を分け合う選手たちはシャンパンで軽く乾杯し、マドリードまでの道すがらではプロトン全体がのんびりと最後のサイクリングを楽しんだ。3週間前にセビーリャを走り出した198人は、3424.9kmの旅程を終えたときには156人に減っていた。大会を去った42人の中でも、最大の損失はイゴール・アントン(エウスカルテル・エウスカディ)だろう。序盤から山で絶対的な強さを発揮し、赤ジャージを着用しながらも、第14ステージの落車で右ひじを骨折。志半ばでレースを立ち去っている。

アントンは抜けてしまったが、残された者たちは最終日前夜まで激しい総合優勝争いを繰り広げた。そして第20ステージの最終峠ボラ・デル・ムンドでニバリが総合優勝の座を確実なものとした。また同じ日にはダヴィ・モンクティエ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)が、3年連続の山岳賞ジャージを決定。一方で「キング・オブ・スプリンター」マイヨ・ベルデの持ち主は、マドリード最終ステージの終わりを待たなければならなかった。

周回コース突入直前に、今ブエルタ最後のエスケープ集団が出来上がった。飛び出しのきっかけを作ったのは逃げ常連のドミニック・ローエルス(チーム・ミルラム)。やはり3週間を通して何度も逃げに挑戦したオリヴィエ・カイセン(オメガファルマ・ロット)、今大会初エスケープのメンバーだったハビエル・ラミーレス(アンダルシア・カハスール)、さらにユルゲン・ヴァンホーレン(オメガファルマ・ロット)とゴンサロ・ラブニャル(シャコベオ・ガリシア)を加えた5名が、マドリードの町中を先頭で走ることを許された。……ただし、ごくごく短い期間だけだったのだが。なにしろ序盤こそ後方ではマイヨ・ロホ擁するリクイガス・ドイモが静かにトレインを走らせていたが、周回を重ねていくうちにスプリンターチームたちが猛烈な追い上げを始めたのだ。上下緑色のジャージを着たマーク・カベンディッシュを率いるチームHTC・コロンビアと、12ポイント差で逆転ポイント賞を狙うタイラー・ファラーのガーミン・トランジションズの2チームが、ひときわ意欲的にコントロールに努めた。3つのUターンが含まれるテクニカルな新コースにも関わらず極度にスピードは上がって行き、結局、ラスト1周回を残して5人の賭けは終了。やっぱり、グランツール最終日は集団スプリントがふさわしい。

ラスト500m、今大会すでに3度お目にかかっている勝ちパターンを作り上げたのは、チームHTC・コロンビアのマシューハーレー・ゴスとカベンディッシュ。第12・13・18ステージを圧倒的な強さでもぎ取ってきたコンビが、4度目の勝利に向かって突進してきた。ちなみにツール最終ステージの栄光なら、カベンディッシュはすでに2年連続で手にしている。ならばブエルタ最終ステージの栄光だって……。ところが、シベレスの女神像——大地に恵みをもたらす女神——が見守る中で、歓喜の勝利をつかんだのはファラーだった!今春のジロでも区間2勝を上げ、ブエルタでも第5ステージに続く2勝目。しかも絶好調のカベンディッシュを倒したことで、満足感に加えて、自己の能力にさらなる確信を抱くことが出来たとのこと。2週間後の世界選に向けて大いに自信を強めている。

また残念ながら区間では2位に終わったが、カベンディッシュは待望のポイント賞首位を決めた。ジャージは皮肉にもツールと同じ緑色。そう、ツールではここ2年、大量勝利をあげながらもマイヨ・ヴェールに手が届かないという苦悩を味わってきた。だからこそ失敗から教訓を上手く引き出し、スペインでは中間ポイントも積極的に取りに行った。2位ファラーとの最終的な差は7ポイント。確かに中間で手にしたポイントは5pのみではあるものの、例えば第10ステージの第1中間ポイントではファラーとの一騎打ちを制し4pをもぎ取っている(ファラー2p)。ここでもしもスプリントしていなかったら、最終結果は変わっていたのかもしれない。

勇猛果敢に戦いを挑み続けたエセキエル・モスケーラ(シャコベオ・ガリシア)、オールラウンダーとして急速に頭角を現したペーター・ヴェリトス(チームHTC・コロンビア)は、ニバリの隣で人生初のグランツール表彰式に臨んだ。残念ながら「個人」トップ3入りを逃してしまったが、ファンを大いに沸かせたホアキン・ロドリゲス(チーム・カチューシャ)は、3週間共に戦ってきたチームメイトたちとチーム総合首位受賞を大いに喜び合った。


●タイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)
区間勝利

ブエルタで区間2勝上げられたなんて、希望していた以上の成績だ。最高だね。ジロではすでに区間2勝していたし、ブエルタでも同様に好成績を繰り返すことができた。チーム全体が素晴らしい仕事をしてくれたよ。開幕初日スタート前にジュリアン・ディーンが落車でひどい怪我をしてしまったとき、きっとアシスト不足に苦しめられるに違いないと恐れていたんだ。でも実際はまったく違った。チームはファンタスティックな仕事を続けてくれた。最終日のマドリードステージで勝利を上げることができて本当に幸せだね。この3週間を通してボクは体調も良く、非常に力強い走りができた。だから世界選手権に向けて気持ちを集中していきたい。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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