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蒸し暑い真夏の夜の悪夢を、チームスカイは、見事に振り払うことに成功したようだ。前日のチームタイムトライアルではまさかの区間20位に沈み、チームは早くも42秒を失った。ただしこの日のステージ途中には、ドイツ・ハンブルグから、エドヴァルド・ボアッソンのファッテンフォル・サイクラシックス勝利の朗報が届いていた。はるか遠方のチームメートの士気に呼応するように、灼熱のスペインでもまた、黒い集団は歓喜の雄叫びを上げたのだ。
今大会初めて参加198選手が一斉にスタートラインから走り出し、すぐに大会初めてのエスケープ集団ができあがった。前方へと飛び出したヘスス・ロセンド(アンダルシア・カハグラナダ)、スティーヴ・ウアナール(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、アダム・ハンセン(オメガファルマ・ロット)、ポール・マルテンス(ラボバンク)の、狙いはおそらく同じ。2011年ブエルタ最初の山岳ポイントを先頭通過して、大会最初の山岳賞ジャージを手に入れること!
赤玉ならぬ……青玉の戦いは、わずか28.6km走っただけであっさり決着がついた。この日唯一の山岳ポイントへ向かって4選手がほぼスプリント状態で飛び込み、マルテンスが嬉しい先頭通過。たった3pt獲得しただけでキング・オブ・マウンテンの座をつかみとった。
ここで最も悔しがったのがロセンドだ。2008年大会ではやはり2日目(初日はやはりTTT)の大逃げで山岳賞ジャージを5日間着用したが、今年はあえなく2位通過……。ところがロセンドは、3大ツールで唯一「純白ジャージ=新人賞」ではないブエルタの、少々風変わりなルールを上手く利用してみせた。続く2回の中間スプリントポイントでいずれも首位通過を果たすと、山岳賞2位+ポイント賞8位+総合129位=139ポイントでまんまとホワイト「複合賞」ジャージを勝ち取ったのだ!ちなみに複合賞とは山岳・ポイント・総合の各順位の総計が最も小さい選手に与えられる賞であり、山岳とポイントの両賞にランクインしていることが受賞の絶対条件である。つまり第2ステージ終了後に受賞条件を満たしていた選手は、山岳を先頭で通過した3人(マルテンス、ロセンド、ハンセン)のみだった。
またハンセンは残り33kmで加速し、逃げ切り勝利に向かって単独でトライした。ただしマイヨ・ロホ擁するチーム レオパード・トレックや複数のスプリンターチームがすでに猛加速を始めており、ゴール前18kmで努力は打ち切られることになる。それでもゴール後には、今ブエルタから初めて導入された敢闘賞「赤ゼッケン」を授与された。最大6分差をつけて逃げ続けた先頭集団の中で、ウアナールだけが手ぶらで帰ることになった。
近年のグランツールで圧倒的なスプリントコントロールを実行してきたHTC・ハイロードが、この日も——チームにとっては最後のグランツールで——プロトン前方で制御に取り組んだ。しかし、3日前から体調不良に苦しむマシューハーレー・ゴスが、ステージ途中に大会リタイア第1号となってしまう。またマーク・カヴェンディッシュは明らかに不調で、しかもラスト1kmに待ち構える急坂が「現役最速」スプリンターの足かせになるのは明らかだった。つまりは少々トーンダウン気味のHTC隊列に対して、スキル・シマノトレインが奮闘を見せた。
「ボクらチームはいわゆる『新人』なので、追走などの主導権では、でしゃばらずにビッグチームに委ねます。最終トレインを作るのは、体の大きいルーラー4人。ボク個人はその前段階の仕事を引き受けます。スプリントリーダーを風から守り、補給を助け、ポジション取りを行って。かなり地味な仕事なので、あまりテレビに映らないかもしれないけれど……」と開幕前に土井雪広は控え目に語っていたが、蓋を開けてみれば、スキル・シマノも土井本人もしっかり存在感をアピール。今季ダンケルク4日間とポーランド一周でそれぞれ区間4勝ずつを上げ、一気に知名度を上げたマルセル・キッテルを、最終的に区間3位へと導いた。もちろんチームの狙いはキッテルの区間勝利だった。ただしゴール直前の短い、しかし5%の上りで、プロトン前方の統制は完全に乱れてしまった。
混乱状態からするりと抜け出したのはビセンテ・レイネス(オメガファルマ・ロット)だった。しかしレイネスはすぐには気がつかなかったようだが、彼の背後には、クリストファー・サットン(チームスカイ)がぴたりと張り付いていた。U23時代にトラック競技でスプリントの脚を鍛えたサットンは、後方を完全に置き去りにしたことを確認すると、まるで最終発射台の後ろから飛び出すように……レイネスの脇を駆け抜けた。あとは待ちに待った初めてのグランツール区間勝利を、喜び勇んで、両腕を振り回しながら、実感するだけでよかった。
区間6位に入ったダニエーレ・ベンナーティ(チーム レオパード・トレック)が、チームメートのヤコブ・フグルサングから総合リーダージャージを引き継いだ。両者は同タイムで並んでいるが、2日間の区間順位合計(ベンナーティ5+6、フグルサン1+19)が少ないベンナーティに軍配が上がった。
■クリストファー・サットン(チームスカイ)
ステージ優勝
チームが信じられないような仕事をしてくれたね。ステージ中はチームメートが後ろに下がってボトルや補給食を取りに行き、ボクが十分な補給を行えるように注意してくれた。最終盤はチーム全員がボクを前方へと引き上げてくれた。ラスト20kmはウイギンズとアルヴェセンが牽引してくれたし、ラスト2kmのロータリー出口ではロヴクヴィストが前方へと連れて行ってくれた。
最後の1kmに入ってからは、ボクは好位置を見つけるために少しジグザグに走ったんだ。そこでレイネスが抜け出すのを見て、「つくなら彼の後ろだ」と察知して滑り込んだ。そして後ろを振り返ったとき、差が開いているのが見えたんだ。「よし、勝てるぞ」と確信した。
グランツール区間勝利で、夢が叶ったよ。まだ信じられないけれどね。だってグランツール初勝利を手に入れるまでに、ずいぶん長く待たされたんだから。本当にいつか手にはいるんだろうか……と疑い始めていたほどだったよ。ガーミン所属時代に、2008年ジロのチームタイムトライアルを勝っているけれど、個人の勝利を待ち望んでいたんだ。
■ダニエーレ・ベンナーティ(チーム レオパード・トレック)
総合リーダー
総合首位に立って嬉しいよ。でも初めての経験ではなく、総合リーダージャージを着るのはこれで5度目なんだ。もちろんステージを制することができなかったのはがっかりしている。区間勝利こそが今日の最大の目標だったからね。でもケガのせいで苦しいシーズンをおくって来たボクにとっては、今日の6位というのは悪くない成績なんだ。
最終盤はボーネンの後ろについていた。でも彼が加速をやめてしまって、いきなり向かい風の中に立たされてしまった。でもゴール前300mからスプリントを切る気分でもなかった。リスクを冒すことだってできたはずだけど、慎重に行くことにしたんだ。がっかりはしていない。明日もまたボクには勝利のチャンスがある。レッドジャージ姿で勝利を取ることができたら、きっと最高だろうな。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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