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サイクル ロードレース コラム 2011年9月1日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2011】第11ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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4年連続4度目のブエルタ区間勝利を手にしたダヴィ・モンクティエ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)は、4本の指を誇らしげに突き上げた。そして初秋のスペインで、今年もまた、走ることの喜びを思い出した。36歳大ベテランは、3年連続で、引退撤回を静かに宣言したのだった。

決めるときは決める男である。2004年ツール・ド・フランスで初めてステージ優勝を手にして以来、狙ったロングエスケープはほぼ結果に結び付けてきた。2009年第8ステージだけは、山岳ポイント収集の大逃げを打つも、目的まであと数キロのとこで飲み込まれてしまったが……(数日後の第13ステージに、リベンジの大逃げ勝利を決めている)。また今大会はステージ最終盤に数回アタックを仕掛けるという、普段とは少々違う動きを見せたことも。ただしフランスの巨星ローラン・フィニョンがこの世から旅立ってちょうど1年目のこの日、フレンチクライマーは「お得意」の大逃げに打って出た。

「今日は逃げ切りが決まるはずだ」とモンクティエは予想していたそうだが、多くの選手が同様に考えていたに違いない。スタート直後からたくさんの飛び出しが相次ぎ、大量19選手がエスケープに乗った。4年連続で山岳賞を狙うモンクティエにとって、唯一の誤算は逃げ集団にマッテーオ・モンタグーティ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)が滑り込んだこと。前半の10日間でこつこつポイントを集めてきたイタリア人には、チームから「最終峠はモンクティエにはついていけないから、とにかく3つ目までの峠を全て先頭通過しろ」との指令が出ていた。3つ目だけはモンクティエに先を行かれてしまったが、それでもモンタグーティは10ptを獲得。ゴール後にはモンクティエをわずか1pt差でかわして、まんまと青玉ジャージを手に入れた!

後方プロトンでは、チームスカイがきっちりと集団コントロールを請け負った。マイヨ・ロホのクリス・フルームと総合3位ブラドレー・ウイギンズを擁する英国チームは、ただし急速な追走をしかけることもなかった。休養日明けで最初から飛ばしたくなかったのか、それとも総合ライバルにボーナスタイムのチャンスを与えたくなかっただけなのか……。ゴール前30kmで先頭集団は7分半のリードを保っており、モンクティエの読み通り、逃げ切りがほぼ確実となった。

「誰もがボクの様子をうかがっていた」とモンクティエは感じたという。「モンクティエが飛び出したら、ボクにはついていけないと分かっていた。だから彼より先にアタックを仕掛けて、チャンスをつかみにいったんだ」と振り返るのは、ゴール前27.5km、前方で真っ先に加速を仕掛けたヨーナスオーオン・ヨルゲンセン(サクソバンク・サンガード)。さらにはアドリアン・パロマレス(アンダルシア・カハグラナダ)や、ベニャット・インサウスティ(モヴィスターチーム)、セルジオミグエルモレイラ・パウリーニョ(チーム・レディオシャック)等々が様々な攻防を試みた。しかし誰1人として、モンクティエの強い意志を曲げることなどできなかった。ゴール前12.5km、勾配が厳しく横風の強い山道で、モンクティエは勝利へのアタックを決めた。

メインプロトンが動き始めたのは、ゴール前10kmに近づいてから。淡々と、しかし速いリズムを刻むスカイの隊列を打ち崩そうと、チーム・カチューシャが猛攻を繰り出した。まずはウラディミール・カルペツが加速し、続いてダニエル・モレーノが飛び出す。さらには第9ステージの山での失速&第10ステージのタイムトライアルの遅れを自ら取り戻そうと、リーダーのホアキン・ロドリゲスがアタックをしかけたことも。しかしカチューシャの攻撃は、ことごとくフルームの加速に潰された。マイヨ・ロホが自ら、3日前の山頂フィニッシュと同じように、驚異的かつ献身的な仕事をやってのけたのだ。

ラスト3kmでフルームがついに力尽きると、代わってウイギンズが恐るべき山岳ルーラーの脚を発揮した。切れ味鋭い加速を見せたダニエル・マーティン(ガーミン・サーヴェロ)やバウケ・モレッマ(ラボバンク)も、確実に追い詰めて飲み込んだ。ただラスト1.5kmで、ついにロドリゲスのアタックを許してしまうのだが……。「ロドリゲスのアタックには、あえて反応しなかった。それほどタイム差がつかないと分かっていたからね」とヴィンチェンツォ・ニバリ(リクイガス・キャノンデール)が語ったように、誰も慌てて追いかけたりはしなかった。そしてニバリの考え通り、ロドリゲスは主なライバル達からわずかに7秒——先の2日で失った3〜4分に比べたら些細な数だ——を取り戻しただけだった。

トラックで世界の頂点を何度となく極めたウイギンズが、肌寒い山頂で、真紅のジャージを身にまとった。「アシスト」フルームから7秒差で引き継いだマイヨ・ロホはまた、2010年ジロでマリア・ローザを1日着用して以来となる、人生2度目のグランツール総合リーダージャージでもある。7月のツールでは、落車骨折のせいで黄色いジャージを着る野望を断たれたが、人生初のスペイン一周で思いもかけない栄光を得た。

ただしウイギンズは手放しで喜んでもいられない。この先には3つの山頂フィニッシュが待ち構えている。ディフェンディングチャンピオンのニバリとの差はわずか11秒、総合4位フレデリック・ケシアコフ(アスタナ)との差は14秒と極めて少ない。さらに総合争いは1分以内に6人、2分以内に10人がひしめくというかつてないほどの接戦だ!……もしも2分56秒差のロドリゲスが未だ総合争いを諦めていないのだとしたら、つまり3分以内の14人全員が、マドリード表彰台候補と言えるだろう。


■ダヴィ・モンクティエ(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)
ステージ優勝

ブエルタでの勝利は、いつだって同じくらい嬉しい。このレースは本当にボク向きで、4度目のステージ優勝を楽しんでいるよ。2008年以来、毎年1つずつ勝ってきたから、まずステージ1勝が目標だった。開幕前から今ステージは狙いをつけていたし、レース展開を考えても、やはり今日が最適の日だと考えた。今大会ここまでは逃げ切りがわずかしか成功していなかったけれど、今日はチームスカイがエスケープ逃げ切りを許すだろうと思っていた。6〜7分タイム差が開いたときに、逃げ切れるぞ、と確信した。

ただ前方集団は人数が多かったから、ボクが勝てるかどうかは確かではなかった。でもほかの選手がみな、ボクの様子を見ながら走っているのを感じたんだ。だから2度、3度、大きく加速した。インサウスティだけは何度もついてきたけど、勾配のキツイ、横風ゾーンが来るのを待って、もう1度揺さぶった。そして上手く行ったんだ。

もちろん山岳ジャージを狙う。4年連続でジャージを着れたら本当にステキだよね。まだ山頂フィニッシュが3回残っているから、難しいだろうということは理解している。ダニエル・マーティンやホアキン・ロドリゲスといったヒルクライマーが、山岳賞を手にする可能性が残っているからね。ボクはまた第13ステージにポイント収集に向かうつもりだ。

■ブラドレー・ウイギンズ(チームスカイ)
総合リーダー

総合首位に立てたなんて、ステキな気分だよ。ここ数日は非常にいい走りができている。山岳でもタイムトライアルでも、ボクは非常に強かった。ケガからの復帰直後だったから、開幕前は、自分がどれだけできるか正直分からなかった。しかも開幕チームタイムトライアルでの失敗を考えると、今のポジションにつけるなんて予想もしていなかったよ。実は開幕前にはトップ6入りを願っていて、表彰台なんて夢のまた夢だった。でも今や、確実な目標となった。どんどん調子が上がっている。毎日100%を尽くしていく。

今日はチーム全体が前線で走った。フルームもボクのためにファンタスティックな走りを見せてくれた。彼がマイヨ・ロホを1日でも着ることができて、本当に報われたよね。ボクが今日やったような先頭での走りに、太刀打ちできる選手はそれほど多くはないはずだ。ロドリゲスかニバリくらいのものだろう。脚には自身があるし、全てが上手く行っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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