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サイクル ロードレース コラム 2011年9月2日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2011】第12ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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近年のグランツールは、スプリンターに優しくない。平坦ステージが10日間とか、スプリンターが1大会で区間9勝とか(2004年ジロでアレッサンドロ・ペタッキ、ランプレ・ISDが成し遂げたように)、そんなコース作りはどうも時代遅れになってしまったようだ。2011年ブエルタもここまで、嘘偽りのないピュアスプリンター向けコースなど存在してこなかった。第12ステージもまた、ロードブックには「平坦」と記されているにも関わらず、道は上下にうねっていた。

すでに多くのビッグスプリンターが大会から立ち去っていた。マーク・カヴェンディッシュ、マシューハーレー・ゴス(いずれもHTC・ハイロード)、タイラー・ファラー(ガーミン・サーヴェロ)、オスカル・フレイレ(ラボバンク)etc...のいないプロトンは、それでも、ゴールスプリントへとひた走った。いまだ数人の有力スプリンターがスペインに留まっており、それぞれのチームが集団前方で献身的な仕事をみせた。

中でも大いに存在感をアピールしたのは、マルセル・キッテルを率いるスキル・シマノ。すでに第7ステージでグランツール初勝利を手に入れている23歳は、しかも、この日限りでブエルタを後にすることに決めていた。なんとか有終の美を飾ろうと、チームメートたちは終日、プロトンを全力で牽引し続けた。日本の土井雪広も、長時間に渡ってエスケープ集団とのタイム差制御に力を尽くした。

ところが序盤から先行していたルイス・マテマルドネス(コフィディス ル クレディ アン リーニュ)、ルスラン・ピドゴルニー(ヴァカンソレイユDCM)、アダム・ハンセン(オメガファルマ・ロット)、ホセ・ロルダン(アンダルシア・カハグラナダ)を回収するほんの直前のことだ。ゴール前10km、つまり集団のスピードが恐ろしく上がっていた時間帯に……、キッテルが後方へと千切れてしまう! 4〜5人のアシストたちは慌ててリーダーを引き上げに向かい、一旦は無事に前線へと舞い戻った。ただし「疲れすぎていて、もはや前線に残っている力がなかったんだ」というキッテルは、これ以上は何もできなかった。

ゴール前6kmで逃げは完全に吸収され、直後のカウンターアタックもすぐさま潰された。いくつものミニトレインが前線で激しいつばぜり合いを繰り広げ、ダニエーレ・ベンナーティを背後に従えるファビアン・カンチェッラーラ(チーム レオパード・トレック)がついに主導権を奪い取った。そしてタイムトライアル世界王者の強烈な加速で、プロトンは長く細く引き伸ばされ……、ラスト1kmからの「想像以上に厳しい」上り坂+2ヵ所の急カーブで、一気に細かく切り刻まれた。ゴールスプリントに挑むことができたのは、わずか15人だけだった。

やはりフィニッシュラインまでは、微妙な上り坂が続いていた。カンチェッラーラの背後にいるベンナーティにとっては、得意な地形のはずだった。ペタッキやトム・ボーネン(クイックステップ)も、この手の上りゴールは苦手ではない。しかし過去グランツールでそれぞれポイント賞を獲得したこともあるベテランスプリンター(ペタッキ37歳、ベンナーティとボーネンはもうすぐ31歳になる)は、全員まとめて置き去りにされてしまった。もっとも、ちょうど1歳年上のジョン・デゲンコルブ(HTC・ハイロード)さえも、追随は許されなかったのだが。そう、今季上りゴールで最強を誇るフィリップ・ジルベール(オメガファルマ・ロット)に「上りゴールでボクを倒せるのは彼だけかもしれない」と言わしめた男、21歳の早熟なペテル・サガン(リクイガス・キャノンデール)が、全てを跳ね飛ばして力強い区間2勝目をもぎ取った。

残念だったのは、サガンの区間勝利の背後で、チームリーダーのヴィンチェンツォ・ニバリが区間16位……つまり先頭集団でゴールできなかったこと。幸いにもわずか4秒遅れで事なきを得たし、大多数の総合ライバル達、つまりマイヨ・ロホのブラドレー・ウイギンズや総合2位クリス・フルーム(共にチームスカイ)、ヤコブ・フグルサング(チーム レオパード・トレック)等々は5秒遅れだったのだから、取り立てて大騒ぎするほどの問題でもないだろう。

ただし日に日に不気味な存在感を増していくフレデリック・ケシアコフ(アスタナ)は、先頭集団でゴールし、ニバリを総合で1秒ながら追い抜いている(総合3位、9秒差)。また同じく先頭でゴールした総合6位バウケ・モレッマ(ラボバンク)は、実はステージ序盤の第1スプリントポイントでは、ボーナスタイムを奪いに行く積極性も見せていた。見事に1位通過を果たし、総合では首位から47秒差→36秒差へとタイムを詰めている。つまり総合首位ウイギンズから4位までの差はわずか10秒、6位までの差は36秒。マイヨ・ロホ争いはますます接戦の様相を呈してきた。


■ペテル・サガン(リクイガス・キャノンデール)
ステージ優勝

今日は本当に幸運に恵まれた。ラスト3kmでプロトン内がちょっとした混乱に陥って、ボクも後方へ下がってしまった。ラスト1kmから500mまでは、まるでいいポジションにいられなかった。自分でどうにか上がって行かなきゃならなかった。でも幸いなことに、ベンナーティのために加速したカンチェッラーラの背後に入り込むことができたんだ。ボクは正しい選択をしたと思っているよ。

スプリントを切った後、ゴール前100mでスピードバンプにぶつかった。そんなものがあるなんて気がつかなかった。ペダリングのリズムを失ってしまったし、チェーンが一段ずれてしまった。でもとにかく、そのまま強く押し進めたんだ。そしてここでも幸いなことに、先頭ポジションを守りきることができた。デゲンコルブが背後に入っていたなんて、まるで気がつかなかった。

2回の機会をモノにすることができて本当に嬉しい。これからはとにかくマドリードまでたどり着きたい。ほかにも勝利のチャンスがあれば、狙っていく。でも最大の目標は、ニバリの総合優勝。彼の優勝を信じているよ。

■ブラドレー・ウイギンズ(チームスカイ)
総合リーダー

簡単なステージではなかった。常にハイスピードで走る必要があったし、道は決してフラットではなかった。でもチームメートたちが全力を尽くしてくれたおかげて、ボクはプロトンの前から5、6番目の位置に常に留まることができた。レースリズムが一定しなかったから、苦しんだ選手も多かっただろうね。

ボクにとってはマイヨ・ロホで過ごした初めての日だった。2010年ジロですでにマリア・ローザを着たことがあるけれど、あの時はまるで状況が違ったんだ。当時はアムステルダムの個人タイムトライアルを制して、ジャージを獲得した。今回は山岳ステージで総合リーダーの座についた。だから当然だけれど、このブエルタを勝ちたいと願っているんだよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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