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サイクル ロードレース コラム 2011年12月22日

2011サイクルシーズンを振り返る vol.2 〜クラシック編〜

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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【新カニバル、ジルベール!】

『UCIワールドツアーランキング年間1位』『年間最優秀選手賞ヴェロドール』『ベルギーの年間最優秀スポーツ選手賞』etc… 素晴らしいシーズンを実現させたフィリップ・ジルベールが、年末に手に入れた華やかなタイトルだ。

2008年の『パリ〜トゥール』でクラシック初優勝を果たして以来、同レース2連覇、『ジロ・デル・ピエモンテ』の2回優勝(2009・2010年)、『ジロ・ディ・ロンバルディア』も2回優勝(2009・2010年)と、ジルベールは秋クラシックで比類なき強さを発揮してきた。しかし2010年春に『アムステル・ゴールドレース』を勝ち取ったジルベールは、2011年春、アルデンヌクラシックの絶対的王者へと駆け上がった。『アムステル・ゴールドレース』『ラ・フレーシュ・ワロンヌ』、そして生まれ故郷で開催され、1892年に創設された自転車界最古のクラシック、『リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ』。同一年でこの3レースを同時に制したのは、2004年ダヴィデ・レベッリンが成し遂げて以来となる史上2人目の快挙である。

さらに『ツール・ド・フランス』の第1ステージで念願のツール初区間勝利を挙げ、人生初のマイヨ・ジョーヌも手に入れた。『ベルギー国内選手権』ではロードと個人タイムトライアルの両部門で圧倒。夏には『クラシカ・サンセバスチャン』を手に入れ、自らのクラシックコレクションをまたひとつ増やしている。『ZLMツアー』と『ベルギー1周』では総合優勝も果たした。同じベルギー出身の往年の大チャンピオン、エディ・メルクスはあまりにも勝ちすぎるせいで現役時代には「カニバル(人食い)」とあだ名されていたものだが、2011年のジルベールは多くのメディアからこぞって「新」カニバルと称されたのだった。

【カンチェッラーラ失速、人間界へ】

「ボクも人間なんだ、と今シーズン証明された」と、ファビアン・カンチェッラーラはシーズン末に人間宣言を発した。電動モーター入り自転車を使用しているのでは……など、とんでもない噂が流れたほど驚異的な走りで、2010年には『ツール・デ・フランドル』と『パリ〜ルーベ』の制覇を成し遂げた。2008年『五輪個人タイムトライアル』金メダル、『世界選手権』個人TTでの前人未到の4勝(2006・2007・2009・2010年)と、独走種目に関しては文字通り無敵を誇ってきた。しかし2011年のカンチェッラーラは、人間界に引き戻された。

『E3プライス・フラーンデレン』優勝を引っさげて北クラシック週間を迎えたカンチェッラーラは、決して調子は悪くなかったはずだ。しかしあらゆる有力ライバルが「大本命」への張り付き作戦を敢行。カンチェッラーラは最後までまるで身動きがとれぬままだった。ちなみにスパルタクスの怒りを買った有力ライバルたちもまた、誰一人として表彰台のてっぺんに上ることは叶わなかった。「絶対に奴らを勝たせない」と決意したカンチェッラーラの、せめてもの反逆だったようだ。

一方の個人TTに関しては、カンチェッラーラは1人の若き脅威の前に屈した。数年前から力を伸ばしていたトニー・マルティンに、直接対決となった『ツール・ド・フランス』の個人TTも、『ブエルタ・ア・エスパーニャ』の個人TTも、さらには『世界選手権』個人TTタイトルをも奪い取られてしまった。

【カヴ世界王者へ、その他クラシックなど】

近年にないほど平坦なコースで繰り広げられた2011年『世界選手権』コペンハーゲン大会は、マーク・カヴェンディッシュの手に落ちた。英国籍チームスカイの所属選手を中心に作り上げられたイギリス代表の、入念な準備と献身的な仕事が実を結んだのだった。長年の夢だった『ツール・ド・フランス』のマイヨ・ヴェールも手に入れて、地元ロンドン五輪イヤーの2012年、カヴェンディッシュはアルカンシェルを纏ってスカイで走る。

しかし「現役最強」スプリンターを脅かしそうな、新人スプリンターが次々と頭角を現した1年でもあった。2011年1月末に開催された『ツール・ド・ランカウイ』では、当時21歳のネオプロ、アンドレア・グアルディーニが区間5勝で衝撃を巻き起こす。同じくネオプロにしてやはりランカウイ区間1勝を上げた当時22歳のマルセル・キッテルは、その後『ダンケルク』4日間区間4勝、ワールドツアーの『ツール・ド・ポローニュ』で区間4勝、そして初のグランツール挑戦となった『ブエルタ・ア・エスパーニャ』で早くも1勝を手に入れた。そして2012年はキッテルのチームメートとなるジョン・デゲンコルブ22歳も、『クリテリウム・デュ・ドーフィネ』で区間2勝を挙げて将来性の高さを見せつけた。

『ミラノ〜サンレモ』では、マシュー・ゴスがオーストラリア人として史上初めての勝者となった。カンチェッラーラとライバル達の喧騒を逃れて、『ツール・デ・フランドル』は大穴ニック・ナイエンスが、『パリ〜ルーベ』では忠実なアシスト役ヨハン・ヴァンスーメレンが栄光をさらった。ちなみに『ヘント〜ウェヴェルヘム』はトム・ボーネンが勝ち取り、4月のクラシック(旧ワールドカップ系)の全てがベルギー勢に支配された。ベルギーからは『パリ〜トゥール』覇者グレッグ・ヴァンアーヴェルマートも輩出。また『ファッテンフォル・サイクラシックス』はノルウェーのエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが、『ジロ・ディ・ロンバルディア』はスイスのオリヴィエ・ザウグが制した。クラシック大国のイタリアは、3シーズン連続で1人の勝者も送り込むことができなかった。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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