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日本や欧州は記録的な大寒波に襲われているが、中東の砂漠には、いつものように強い風が吹き荒れている。
日本からツアー・オブ・カタールに参戦するブリヂストン・アンカーは、レース開幕2日前にペルシャ湾の小さな半島に乗り込み、さっそくトレーニングを行った。そして砂嵐の洗礼を受けた。練習に帯同したスタッフの計測によれば、常に真北から風速10mの強風が続いていたという。ちなみに風速10mとは、気象庁の定める風力階級表によれば「大枝が動き、電線が鳴る。傘の使用困難となる」強さだ。
「強風よりも、むしろ欧州の強豪たちのほうがもっと手ごわい」と日本からの挑戦者は語る。確かに、ツール・ド・フランス開催委員会ASOが運営する今大会は、参加選手の顔ぶれが豪華すぎるほど豪華である。今年もカヴェンディッシュ、ボーネン、ジルベール、ファラー、レンショー、フースホフト、カンチェッラーラ、サガン、マキュワン、デゲンコルブ、ポッツァート……と有名人が勢ぞろいする。しかも彼らの願いはほぼ同じ。2月末から始まるフランドル系セミクラシックを経て、4月上旬のツール・デ・フランドル&パリ〜ルーベを絶好調で迎えること。だから強風の吹きつける平坦なこのカタールで、本気の調整を仕掛けてくる。
つまりは超が付くほどの厳しいレースである。この難関を、2012年から再びヨーロッパを拠点にレース活動を行うブリヂストン・アンカーはどう戦うのか。文字通り「日欧混合チーム」になって初めてのレースに、どう挑むのか。
大会直前の2月3日(金)、ドーハのホテルにて、監督の久保信人氏に話を聞いた。
「やっぱり風は本当にすごい。これだけビュンビュンと吹かれると、体の小さい日本人にとっては簡単ではない。ただASOレースに招待してもらったことは、ものすごく光栄なこと。だから絶対に何かしなければならない。このチームを呼んでよかった、と思ってもらえるような走りをしければならない。その責任を感じている」
「ただ本来、ブリヂストン・アンカーはカタール向きのレースを想定して作られたチームではない。日本のスポンサーということで、ツアー・オブ・ジャパンや熊野、北海道、ジャパンカップで好成績を出せるメンバーを揃えたチームを作った。つまり登れる選手が多く、スピードマンやスプリンターで固めたチームではない。カタールは正直言って、難しいだろう。逆にオマーンではいいところを見せたい、頑張りたいという気持ちが強い」。
「強風の上に、レベルが非常に高いレースだけにもちろん心配はある。ただし一方で、トップとの実力差をしっかり見極める良い機会になる。この先もずっと戦いを続けていく上で、自分が現在どれくらいの位置につけているのかを理解するのは、よい意味でも悪い意味でも重要なこと。給料をもらって走るプロとして、自分の実力を正確に把握するのは意味あることだ」
「カタール経験者に話を聞くと、『前にいても後ろにいても苦しさは変わらない。それなら、なるべく頑張って前に行ったほうがいい』とみな揃って言う。だから決して簡単ではないだろうが、我々が今出来ることは、何とか前半の逃げに乗れるよう頑張ることだけ。この地で我々が戦術的な走りをすることは到底無理。1人でも2人でも、前半の逃げに送り込むということが最優先だと考えている」。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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