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サイクル ロードレース コラム 2012年5月7日

ジロ・デ・イタリア2012 第2ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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あらゆるチームや選手が、特に総合狙いの選手たちが、まるで平坦なこのステージを恐れていた。「初日は満足な結果が出せた。デンマークステージでは、これからの2日間にリスクが潜んでいる。とにかく何事もなく、イタリア本土へ帰らなければならない」とイヴァン・バッソを擁するリクイガス・キャノンデールの広報担当は語った。表彰台候補ジョン・ガドレが少々がっかりする結果に終わったアージェードゥゼール・ラ・モンディアルのラヴニュ監督も、「この2日間が今後の方向性を大きく変えてしまう可能性がある。今後の総合争いをどう進めていくべきか考える前に、まずはデンマークステージをクリアだ」と気を引き締める。

予想された危険要因は海からの強風。グランツール開幕直後特有の、集団内に漂うピリピリした緊張感。落車やトラブルを避けようと必死のプロトン198人全員による、極度のポジション獲り合戦。そしてステージ前半の海岸道路では、スプリント勝利を目指すスカイやマリア・ローザ擁するBMCに混ざって、リクイガスやアスタナが前方で隊列を組む姿が目撃された。

「特に今日はいつもならあり得ないほどに、スプリンターチームと総合狙いのチームが前方ポジションを激しく奪い合った。テレビで見ている限りでは、単に集団がコンパクトにまとまっているように感じたかもしれない、でも実際は、一瞬たりとも気が抜けない状況が続いていたんだ。1日中ストレスを感じていた」。スプリンターチームを代表する意見として、マーク・カヴェンディッシュはこんな風に語った。

スタート直後には、2012年大会の記念すべき初アタックが決まっていた。ミゲール・ルビアノ、アルフレード・バッローニ、オリヴィエ・カイセンの3人がエスケープに乗り、最大13分半ほどのタイム差をつけた。もちろんエスケープトリオの理想はステージ優勝に違いなかったが、むしろ「現実的」な目標は大会最初の山岳賞ジャージ。全長1km、平均勾配4.5%という小さな上りで3選手は思い切りダッシュを仕掛け、バッローニが見事にマリア・アッズーラを手に入れた。

海沿いを緊張して走っていたステージ前半よりも、3選手の吸収へと大急ぎで向かった後半戦のほうが、実際は落車に彩られていた。小さな落車が数回起こり、アスファルトの上で顔をゆがめる選手の姿が目に付くようになって来た。ゴール前40kmで3選手の逃げは終わりを告げ、吸収と同時にラルスイティング・バク——第2ステージのステージ&ゴールの舞台となったヘアニングからわずか40kmほど東の町で生まれ育った生粋の地元っ子——が飛び出したが、残り20kmほどで勇敢な試みは終わりを告げた。そしてラスト8kmには、ピンク色のジャージが地面に投げ出された。前日の個人タイムトライアルを制し、総合首位に立つテイラー・フィニーだ!

「集団の前方10番目くらいにつけていた。でも目の前の選手が急ブレーキをかけたせいで、バランスを崩してしまった。ボクだけが地面に投げ出された」しかもはずみでチェーンが脱落。「完全にパニックになっていた」というフィニーはチェーンをうまくかけ直すことができず、かなりの時間をロスしてしまう。

「秒差のことばかりを考えた。だってジャージを失う可能性だってあったんだから。もう1度プロローグを走っているようなつもりで、全力でペダルをこいだ。本当に怖かった。でも(アレッサンドロ)バッランと(マルセル)ウィスがまるでオートバイのように力強く牽引してくれて、ボクを集団へと連れ戻してくれた。おかげで数日間は、マリア・ローザを守り続けることができそうだ。今日はスタート後20kmはリラックスしていたんだけれど、その後は最後まで緊張のし通しだった。明日はもうすこしマリア・ローザ気分を満喫できるかな」

こうして無事にプロトン合流を果たしたフィニーは、区間首位と同じタイムでフィニッシュラインを越えた。……いや、実際には「タイム救済ルール(ゴール前3km以内の落車・メカトラで遅れた場合は、アクシデント発生時に属していた集団と同じゴールタイムが与えられる)」が適応された形になる。なにしろ実際に先頭集団でゴールできたのは、わずか7人。ゴール前500m地点の90度カーブで、テオ・ボスを発生源とする大集団落車のせいだった。

問題のカーブへと真っ先に飛び込んでいったのは、オリカ グリーンエッジのジャージ。リーダーのマシュー・ゴスを好位置で発射するために、別府史之を含むチームメート数選手が隊列を組んだおかげだ。ゴール直後に「すごく体調が良いと、自分自身で確認できました。いい仕事もできた」と別府自身も語ったように、見事な高速列車を走らせた。

ただし、残念ながら、ゴスは最終直線でカヴェンディッシュに追い抜かれた。実は2010年ブエルタでは全く同じようなゴール前のカーブで2回、「アシスト役」だったゴスが先頭で入り、「リーダー」だったカヴェンディッシュを勝たせたことがある。当時のカヴは優勝記者会見で「ゴスは最終コーナーにトップで突っ込んで、ボクを強烈に引っ張って行ってくれた。ボクを前に送り出してくれた。ボクは本当に何もする必要がなかった。ゴスが全てお膳立てしてくれたんだ」とパートナーを大絶賛したものだ。もちろん今季から2人は別の道を歩み始め、この日は最終発射台役をジェレイント・トーマスが完璧に務めた。

「嬉しいね。今季これで5勝目だ。このジャージを着て、新しいチームで、この成績は悪くないよ。ボクは今まで、グランツールの最初のスプリントステージを制したことは、なかったんじゃないかな?だから本当にステキな気分だし、これは良い兆候。この先も勝ち続けていきたい」

実際は2009年ツール・ド・フランスの第2ステージ——新城幸也が5位に入った区間だ——で、同じように個人TT翌日の初めてのチャンスをモノにした経験はある。確かに、なかなか勝てずに泣いたり、怒ったり、そんな姿のほうがお馴染みだ。そしてこの日、珍しく大会2日目にして満面の笑みを見せたカヴェンディッシュは、真っ赤なポイント賞ジャージも手に入れた。

翌日は、いよいよデンマークで過ごす最後の日を迎える。イタリア出発のために少々足早にゴールを迎える第3ステージは、1年前に天に召されたWWことワウテル・ウェイラントへと捧げられる。スタート前には1分間の黙祷+ウェイラントの好きだった曲「Sex on Fire」が捧げられる。また悲しい偶然ではあるが、第3ステージ開催都市ホルセンスの市長が、第2ステージの真っ最中に心臓発作で息を引き取った。ばら色のレースを記念して行われた市民サイクリング参加中の出来事だった。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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