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サタデーはなかなかのフィーバーぶりだったけれど、大会2度目の日曜日、総合本命たちは節度ある安息日を過ごした。ドメニカ(イタリア語で日曜日)に大暴れしたのは、ドメニコ・ポッツォヴィーボ(コルナゴ・CSFイノックス)だった。
2012年ジロ・デ・イタリアの最も南へとたどり着く今ステージでは、4選手がイニシアチヴを取った。ジュリアン・ベラール(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、ミゲル・ミンゲス(エウスカルテル・エウスカディ)、アンドレイ・アマドール(モヴィスター チーム)、そしてトマシュ・マルチンスキー(ヴァカンソレイユ・DCM)は、最大11分のタイム差をつけて逃げて行く。後方では総合首位ライダー・ヘシェダルを守るガーミン・バラクーダが、きっちりと目を光らせていた。なにしろアマドールは、総合でわずか1分16秒差でしかない。しかもそのアマドール本人は、ゴール前60km地点で強烈に加速して先頭集団からベラールを振り落とし、さらに5km後にはミンゲスを置き去りにして、野心的に突き進んでいた。リトアニア人とカナダ人の快挙に続いてに、彼だって母国コスタリカに初めて(?)のマリア・ローザをもたらしたい……と願ったのかもしれない。
ただし、前ステージで誕生日勝利を飾れなかったホアキン・ロドリゲス(カチューシャ チーム)とロシアの仲間たちがゴール前40kmで強烈に牽引を開始すると——アマドールの母親はロシア人で、つまりアマドールも半分はロシアの血が流れているのだが——、両軍の距離は見る見るうちに縮まって行った。また「今日は絶対にエスケープの逃げ切りを許したくないんだ。ビッグチームが責任を持って追走してくれるといいけど」とスタート前に語っていたポッツォヴィーボの、コルナゴ・CSFイノックスのアシストたちも、ときおり集団前方で加速に手を貸した。
プロトンのスピードがぐんと上がると、後方には小さなグルペットがいくつも生まれ……、ついにゴール前17km、総合候補がズラリ揃った集団は先頭を取り戻した。すると、すかさず主導権を握ったのはアスタナ プロチームだった。前日パオロ・ティラロンゴの区間優勝で勢いづくカザフ陣営は、前方に大量5選手を配置。特にこの春アムステル・ゴールドレースを制したエンリーコ・ガスパロットが、長時間に渡って引っ張った。ガスパロットが力尽きると、今度はリクイガス・キャノンデールが集団制御権を奪い取った。山岳巧者のシルヴェスタ・シュミットが、いつものように淡々と、しかし素晴らしく高速で、2級峠コッレ・モレッラの最も難しいゾーンへと突き進んで行く。
小さな青い影が、真っ直ぐに飛び出した。「冬の間に何度もこの山でトレーニングを積んだ。一番難しいゾーンは10%を超える。そこがアタックポイントだ」とこの山を徹底的に熟知していた、ポッツォヴィーボだ!
南イタリアのバジリカータ州で生まれ育ったポッツォヴィーボにとって、この日の最終盤は隣の州を通るため、いわば「準」地元ステージのような感覚だった。しかも大会直前のジロ・デル・トレンティーノ総合覇者の速攻に、すぐには誰も反応しなかった。その飛び出しの切れ味があまりにも鋭かったせいなのか(大多数のリーダーたちはこの意見に同意する)、それとも、165cm・53kgのピュアクライマーは総合争いにおける脅威ではないと判断されたせいなのか……。ようやく30秒ほどタイム差がついたところで、慌ててベナト・インサウスティ(モヴィスター チーム)が1人後を追ったが、もはや前を行く小さな体をつかまえることは不可能だった。
「ジロで初めての区間勝利だ。もう一生手に入らないんじゃないか、って思っていたほどだよ!最後の2kmは、永遠に終わらないかのように感じた……。でも今日こそが自分の日になると思っていた。だって地元に近いこのステージには、とりわけ思い入れが強かったから。でもこの先について大きなことを考えるのには、ボクはもしかしたら小さすぎるのかもしれない。1日1日、ただボクにできることを積み重ねて行くだけだよ」
ところでジロ・デル・トレンティーノの第3ステージ山頂フィニッシュを制した時にも、あの、一風変わったジェスチャーを見せていた。人差し指から薬指までを握り、突きたてた親指は頭に突き刺し、小指は天を向けるというゴールパフォーマンスは、実はイタリアセリエAパルマ所属のサッカー選手セバスティアン・ジョヴィンコにあやかったものである。「ボクら2人とも小さくて、そして負けん気が強いから」と、トレンティーノ時に大のジョヴィンファンだと告白済み。ちなみに今ステージ終了直後に、セリエA最終戦パルマ対ボローニャが行われ、パルマが1−0で勝利を飾った。しかもその1点は、身長164cmジョヴィンコのラストパスから生まれている!小さな2人が、同時に大きな幸せを味わった日曜日でもあった。
インサウスティはポッツォヴィーボから23秒後に、表彰台候補たちが漏れなく入ったメイン集団は27秒後にフィニッシュラインを越えた。アシストたちが精一杯働いたカチューシャやアスタナ、リクイガスの中で「勝ち組」がいるのだとしたら、リーダーのロドリゲスが区間3位に入ったカチューシャなのだろう。ロドリゲスはボーナスタイムを8秒手に入れて、総合順位は前日よりも1つ上げた(総合2位)。
ヘシェダルは苦しみながらも有力選手たちにしがみ付き——残念ながらチームメートにしてマリア・ビアンカのピーター・ステティーナは、ゴール前20kmでパンク後、追走で力を使い果たし、最後の山では崩れ落ちてしまったが——、なんとか9秒差でピンクジャージを守り抜いた。翌第9ステージはスプリンター向け区間のため、普通に考えれば、それほど苦もなく3回目のマリア・ローザ表彰式に臨む事ができるはずだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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